kashi-heigoの随筆風ブログ-柿の木


 昨年は、まだ都会にいたから、田舎にやってきて、柿をもぐころは、10月も半ばを過ぎていて、柿はだいぶ熟していた。渋柿は、色みすぎると実が崩れて、しまりがない。今年は、しっかりタイミングを見計らってと思っていた。春にここに移り住んで、柿の成長を眺め慈しんできたはずだった。ところが梅雨のころにアメリカシロヒトリにやられた。薬剤散布も頭にあったが、都会に住む孫がアトピー皮膚炎で苦しんでいることもあって、躊躇して一日延ばしにしていた。被害が甚大で、昨年の一割にも満たない。
   アメシロが 俺(おら)の愉しみ 奪えしや 薬剤散布 躊躇ううちに

kashi-heigoの随筆風ブログ-吊るし柿


 それでも、百個足らずが助かった。まだ実が硬いくらいのほうが好い。早めにもいで、皮をむき、吊るし柿にする。一週間も吊るせば、中がとろけて、糖度が凝縮する。正しくは、湯通しをして、皮をむいて軒下に4週間ほど干す。粉が吹いて、正月用の完全な干し柿になる。我が家のやり方は、数日間、陽に当てて干したら、冷凍庫に入れておくのである。ビタミン豊富な甘いおやつになる。亡母は、山ほど吊るし柿を作っていた。それを「食べてみろ、食べてみろ」とうるさかった。60代になって初めて、天然自然の恵みに興味が出てきて、亡母と同じことをしている。都会に住まう子供たちや孫たちに「美味しいから、食べてみろ」と。なぜ生きているとき、嘘でも「これは、甘くて旨いっちゃ!」と言ってやらなかったのだろうか。今になって渋柿を見るたび、親不幸を悔いる。
   渋柿は 亡母(はは)の幸せ 想い出す 吊るしをやるか さわして孫に


kashi-heigoの随筆風ブログ-干し柿

 干し柿作りの楽しみを、あの憎っくきアメリカシロヒトリに奪われてしまった。昔はこんな酷い荒らされ方はなかった。調べてみると、この害虫は、名の示す通りアメリカ軍の軍需物資と共に持ち込まれたものだ。戦後またたく間に全国に広まったようだ。天敵は何かというとなんと、スズメとスズメバチ。そういえば、いずれも最近お目にかからない。スズメなど朝からさえずってうるさかったものだが、今、鳴き声が村里にはない。スズメは、日本ならどこにでも生息する小さく地味な色のなき鳥である。種や昆虫を餌にし、もっともポピュラーな野鳥だが、村里に見当たらないのである。いや、たとえいたとしても数が少ない。スズメバチにしても捕獲する昆虫が激減したからなのだろうか。餌となる昆虫の減少は、アメシロの跋扈を許した、農薬の大量使用に他ならない。ここでも自然の生態系が壊れたのかもしれない。
   天敵の スズメもハチも 他所に去り 柿の葉好きな アメシロ天下
   人間の 我が世とばかり おごれしが 誰が壊した 生態系を