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劇団鹿殺しジャージ公演

汗組『愛卍情』 作:丸尾丸一郎

涙組『あくびと風の威力』 作:角ひろみ

@阿佐ヶ谷ひつじ座


震災後、初めての観劇でした。

地震があってあれから、実は私は劇場に行けなくなってしまっていたのです。

それは、耐震が怖いからとか照明が落ちるかもとかじゃなくて。


演劇が何をできるかを知るのが、怖かったんだと思います。

演劇が何もできないと感じてしまうかもしれない、その可能性が怖かったんだと思います。


しかし鹿殺しからDMで『あくびと風の威力』を演ると届いて。

あぁ、この劇団は本当にハンパない覚悟でやってるんだな、と感じました。
それで、この公演だけは観に行こう。

それまでは、怖いと思うなら心を休めておこうと思って劇場には行きませんでした。


そして私が"生まれ変わる"今日。

やっぱりあれから初めて観たのが鹿殺しで正解だったと本当に心から思いました。


<以降ネタバレ含む?感想>


本当に、鹿殺しで、よかった。

中途半端に"お芝居"をやる劇団だったら

もしかしたら私は失望して演劇を信じられなくなってたかもしれないし

逆にいくら真摯な演劇でも、大ホールでは、大事なものが届ききらなかったかもしれない。


劇団鹿殺しが、あの本多でやるような劇団鹿殺しが

ちいさな阿佐ヶ谷のひつじ座で、照明も吊らないで

身体だけで汗とか汗とかよくわかんないものダラダラ流しながら

目一杯生きて誰一人手を抜かず身体中で叫んでいる。

それが、一番私の心に届きました。


『愛卍情』

ずっと私はこの一ヶ月、どうやったら嘘をつかないか、を考えてきました。

なんだろうな、偽善とかそういうの含め、真摯ってなんだろうって。

答えは「汗」だな、と、観て思いました。汗と熱量だけは嘘をつかない。

円山チカさんの怪演とオレノさんの健気さと門人さんの咆哮が本当に、もう、もう。

いいとこいいとこ笑いをさらってく橘さんも大好き。

何度も出てきた側転による波の表現や、担がれるさっちんなど

身体を使った演出が、さすがだなぁと舌を巻きつつやっぱりメチャメチャ好き。

あとレスリングを生で観に行きたくなった。スポーツ、生で見たことほとんどないんだよなぁ。

個人的に近ちゃんがモンゴル人だったのがメッチャメチャ面白かったですw


『あくびと風の威力』

なんかもう、ホン知ってるから序盤から大号泣で本当にごめんなさい。

結局観終わって浮かんだのはベタベタで聞き飽きた、もはや陳腐ですらある言葉。

「あなたがなんとなく生きた今日は、昨日死んだ人の生きたかった明日」

「いつでも明日が来るなんて限らない」

そんな一見するときれいごとのような訴えを嫌味なく嘘なく胸に突き刺す。

だけども観終わったあとの気持ちは、晴れやかに前を向けるようなもの。


小学校六年生の女の子たち本当にかわゆい。なつかしい。

私は以前某所のオーディションでこのホンを読んだことがあるのだけれども

こんなにおバカにできずに、しんみり読んじゃってたと思う。

あのときの私にはやっぱりまだ早かったんだな。落ちてよかった。変な話だけどw

六人のキャストさん全員が本当にそれぞれいい味出してました。

そして自分も六年生の頃を思い出して、ちょっと懐かしくなったり。

黙っておにぎりせんべい食べるだけのシーンがあんなに笑えるなんて…!


やっぱり一番グッときた演出は、実際にペットボトルの水を垂らしての

「なおはこっち側」というくだり。視覚効果ヤベェェェェ!

あとラストの輪廻のダンス(←勝手に命名)ですね。

うにさんがコケてみんながツッコミ入れてキャッキャ楽しく、ってのが

本当に嬉しそうで楽しそうでなんかもう泣けて仕方なかったです。


ホンだけ知ってたから、演劇として観終わった後に

どんな感情が自分に残るかすごい興味深かったのですが

結局「10年後の自分のためにいまをしっかり生きよう」なんていう

ずいぶん陳腐なものになってしまいましたw


でもね、ビックリするくらい力が出た。演劇ってすごいね。

劇団鹿殺しジャージ公演、日曜日24日まで。一公演1,300円とかなりお値ごろ。必見!