なぜウクライナを巡って欧米とロシアが対立するのか | 朝倉新哉の研究室

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今日は、ウクライナ情勢についてです。

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NATO ロシアと緊急協議へ

ウクライナ情勢の緊張の高まりを受けて、
NATO=北大西洋条約機構は
ロシアの対応を改めて非難するとともに、
ロシアとの間で5日、緊急の会合を開いて
ウクライナ情勢について協議することを明らかにしました。

NATOはウクライナと国境を接する
加盟国のポーランドの要請を受けて4日、
ベルギーのブリュッセルにあるNATO本部で、
今週に入って2回目となる加盟国の大使らによる緊急の会合を開きました。
会合のあと、NATOのラスムセン事務総長は声明を発表し、
「国際社会による繰り返しの求めにもかかわらず、
 ロシアはウクライナの主権の侵害を続けている」
として、部隊の撤収に応じず、
本格的な軍事介入の構えも崩さないロシアを改めて非難しました。
そのうえで、NATOが
ロシアとの間で信頼醸成を目的に設置している理事会を5日に緊急に開き、
ロシア政府の高官とウクライナ情勢について協議することを明らかにしました。
NATOとしては、
ロシアへの非難を強めながらも、
政治的な対話による解決以外に道はないとしており、
対話を通じてウクライナを巡る緊張の緩和を目指す方針です。
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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140305/k10015720351000.htmlから引用。

冷戦時代なら、
「これをきっかけに、第3次世界大戦勃発か」
と大騒ぎになったでしょう。
(現状でも十分緊迫はしていますが)

ウクライナを巡って、
なぜNATOとロシア、あるいは、アメリカとロシアが対立するのでしょうか。

それは、地政学が主な原因です。

近代地政学の祖と言われる
サー・ハルフォード・マッキンダーという人物がいます。
この人が提唱したのが、「ハートランドの理論」です。

地図1

http://blogs.yahoo.co.jp/eraser1eraser/62658762.htmlより転載

ピンク色の部分が、ハートランドで、
ここを支配した国は、必ず周辺に勢力を伸ばし、
放っておくとユーラシア大陸全体を支配してしまう、
とマッキンダーは主張しました。
見ておわかりだと思いますが、
ハートランドは、ロシアの領土と大体重なっています。

それに対して、
アメリカの地政学者ニコラス・スパイクマンは、
リムランドという概念を考えだし、
リムランドをアメリカの勢力圏下に置くことで、
ハートランドの膨張を、抑えようと考えました。

地図2

http://blogs.yahoo.co.jp/eraser1eraser/62658762.htmlより転載

このリムランドは、
第1次安倍内閣で、麻生太郎外務大臣(当時)が打ち出した
”自由と繁栄の弧”にそっくりです。
  ↓  地図3























http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/e1233808d1ae58a1cf15828c5d190e8aより転載

もっとも、リムランドのほうが先に登場しているので、
(スパイクマンの著書『平和の地政学』が出版されたのは1944年)
自由と繁栄の弧が、リムランドの焼き直しだと言ったほうが適切ですが。

ウクライナの位置はこちらです。

地図4

http://matome.naver.jp/odai/2139304319575075101/2139305639783898003より転載

地図2と地図3で、
ウクライナは、リムランドにも、自由と繁栄の弧にも、含まれています。

一方、ロシアという国は、常に領土拡大を続けてきた国です。

地図5 













ウィキペディアより転載

ウクライナは、ソ連の一部でした。
ロシアとしては、過去の栄光を取り戻したい、と思っているのか、
ウクライナを勢力圏下に戻したいようです。

一方、ヨーロッパにとって、ロシアの勢力拡大は、
かつてのロシア帝国、ソ連の悪夢を思い起こさせます。

地図6

ウィキペディアより転載(クリックして拡大してご覧ください)

地図6で、黒、薄い紫、青、赤、オレンジ、緑、黄緑で色分けされた国は、
全て、自国をなんらかの形で、社会主義国だ、と宣言したことがある国です。
社会主義(共産主義)は、世界中に勢力を伸ばしていたことがわかります。
地図4では独立国になっている
ウクライナ、ベラルーシ、エストニア、ラトビア、リトアニアは、
ソ連領でしたし、
ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバ、
スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、ブルガリア、
マケドニア、アルバニア
は、社会主義国でした。
アルバニア以外は、ソ連の影響下に置かれ、ソ連の”衛星国”と呼ばれていました。
共産主義の膨張とハートランドの膨張はイコールだったのです。

マッキンダーはイギリス人で、
ハートランドの理論を考えたのは、イギリスを防衛する必要からでした。

アメリカは、アメリカを守るために、
ハートランドの膨張を抑えたいと考え、
スパイクマンが、リムランドの理論を考えました。
そして、ハートランドへ侵入する経路を確保するのが、
アメリカの軍事戦略のようです。

地図7

http://burke-conservatism.blog.so-net.ne.jp/2010-05-12-1より転載

ウクライナは、地図7で、まさに、ハートランドへの侵入経路の上に存在しています。

結果、ヨーロッパ(NATO)とアメリカが協力して、
ロシア(旧ソ連=ハートランド勢力)の勢力拡大を抑えるべく、協力体制が敷かれ、
その最前線となっているのが、ウクライナというわけです。

地図8


















http://burke-conservatism.blog.so-net.ne.jp/2010-05-12-1より転載

地図8の黒い点線の矢印が通っている国で、
トルコ以外は、ソ連領だったか、ソ連の勢力圏下に置かれていたのです。
ソ連は、そこから、さらに勢力圏を広げようとしていました。
しかし、ソ連は崩壊し、欧米側(アメリカ、NATO)が勢力を盛り返し、
ロシア(旧ソ連=ハートランド勢力)を押し戻して、
現在の状態になっているというわけです。

アメリカ、NATOとしては、
ウクライナがハートランドへの侵入経路にあたっているため、
ウクライナを勢力圏に取り込みたいわけです。
ロシアとしては、かつてはソ連領だったし、
これ以上、アメリカ、NATOに食い込まれては、
死活問題ですから、ウクライナに対する影響力を、(できるだけ大きい状態で)
確保しておきたいわけです。

ウクライナ情勢の基本的な図式は、
ハートランド勢力(現在はロシア、かつてはソ連と社会主義諸国)と
リムランド勢力(アメリカ、NATO諸国)の
せめぎあいです。

この図式は、世界史の基本構造でもあります。
世界の歴史は、
内陸勢力
(古代のスキタイ、匈奴、中世のモンゴル帝国のような遊牧民国家、
 ロシア帝国、ソ連、現在のロシア)と、
周辺地域のせめぎあいなのです。
この基本構造が、わかってしまえば、世界の歴史は簡単に理解できます。
(学校で教えている世界史に、直接役立つかどうかは、わかりませんが、
 本当の意味での世界の歴史を、理解するには非常に有益です)

中国は、ハートランドには、含まれていませんが、
唐が日本に侵攻する可能性があったこと、
元が日本に侵攻したこと、
朝鮮半島に何度も侵攻したこと、
現在の中国が、膨張を繰り返してきたこと、
を考えれば、
シナは、東アジアにとってのハートランドだ、と言えるのではないでしょうか。

地図1,2と地図3の違いを、よーく考えてみてください。
地図1,2では、中国はハートランドには含まれず、リムランドに含まれています。
しかし、地図3では、中国は”自由と繁栄の弧”に含まれていません。
アメリカにとっては、リムランドの一部なので、
仲良くしたいのかもしれませんが、
日本にとっては、中国はハートランドと同様なのです。
地図7が、アメリカの本音なら(つまり中国と友好関係を保ってロシアの膨張を抑える)、
アメリカは、中国と戦争をする気はないでしょう。
となれば、日本は、尖閣(および沖縄)を守るためには、
独力で中国と対峙しなければなりません。
まあ、今回は、ウクライナの話なので、これくらいにしておきます。

以上のように、地政学の知識があると、世界情勢を理解しやすくなるのです。

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