軍事ジャーナル(8月28日号)

 19日に中国戦闘機が南シナ海で米軍対潜哨戒機に異常接近を試みた。米政府は危険な挑発行動だとして中国政府に厳重に抗議した。6月11日には東シナ海で中国戦闘機が自衛隊機に異常接近するという事件があった。
 つまり中国空軍による挑発が続いているということだが、日本機への挑発から2か月以上たって米軍機への二番煎じのような挑発は、むしろ中国の弱気を象徴していよう。

 実は先月、私のところにマスコミ関係者がやってきて、「8月15日の終戦記念日前後に、中国戦闘機が尖閣周辺で空自機を撃墜する・・・なんて事になりやしませんかね?」と取材とも相談とも判然としない話を持って来た。
 要するにマスコミ関係者もお盆前後には夏季休暇に入るが、そういう時に限って寝耳に水のような事件が起きるので、事前リサーチという訳だ。酒の入った上だから私も冗談めかして「いやー、そんな事件が起きたら、8月1日出版の私の監修の「イラスト図解 戦闘機」はベストセラーになるので、是非、中国にお願いしたいぐらいですがね、正直いってあり得ないでしょうね」

 なぜあり得ないか?理由はこの本にも書いたが、要するに中国空軍はまだ基盤が脆弱で、挑発行動はできても戦闘などとてもできる段階ではないのである。だから私も15日前後には中国戦闘機による挑発行動ぐらいはあるだろうと予想はしていた。
 だが、15日をまるで避けたかのような19日に、尖閣から遠く離れた南シナ海で、自衛隊機ならぬ米軍機への異常接近には、正直拍子抜けした。これではまるで「日本を刺激することは致しません」と言っているようなものである。習近平主席は福田元総理にそんな約束でもしたのであろうか?

 現在の中国軍のトップは空軍出身の許其亮である。陸海空3軍の長の地位を空軍に奪われたことへの陸軍の嫉妬と反感は凄まじいものがあったであろうが、その陸軍の長老が次々に習近平政権により、逮捕されつつある。
 反日に凝り固まった頑迷固陋の陸軍が粛清されれば、習近平政権が日中友好利権の復活を模索するのは当然の順序だ。中国のおける反日派粛清に呼応するかのように自民党内では親中派による安倍降しが始まっている。
 中国空軍のさりげない挑発の中に、日中利権復活の兆しが読み取れるのである。

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