氷の吐息 | 虹色金魚熱中症

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虹色金魚の管理人カラムが詩とお話をおいています。

拙いコトバたちですが読んでいただければ幸いです。

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グルッポ 『 作家志望さまのお部屋  』 の企画でつくったものです。


お題から起草される物語を1スレ(1000文字以内)でまとめるといった趣向。

注意 今回のお題は 『 冷たい風 』
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氷の吐息

 

 

 夏はいうまでもなく、雪降る冬でも彼女はアイスティーばかりを頼んだ。氷があれば、少し尖った八重歯で豪快に噛み砕く。
 

 「見てるこっちが寒いんだけど」 
 

 言ったそばから彼女は鼻で笑った。 「見なきゃいいじゃない」 言葉なんてなくても、皮肉を含んで上がった口端で分かる。
 彼女は意地悪だ。僕の気持ちを簡単に読み解いているくせに、そんなことを平気で言う。それでも、彼女から離れられない僕は、ちょっとマゾなのかもしれない。

 
 今日も今日とて、大きな氷を両頬にハムスターみたいに蓄えながら、無言の僕を上目遣いに見上げた。がりがりと音を立てて氷を飲み込む。瞳は僕から離れない。

 
 「今日は寒いわ」
 「ああ、そう」
 

 トールサイズのアイスティーを両手で包むように持ちながら、よくもまぁそんなことが言えるものだ。そっけない返事に彼女は頬を膨らます。むくれた彼女は残ったアイスティーを仰け反りながら飲み干した。
 

 「げふっ」
 「オイオイ、女ならなぁ……」
 

 小言をひとつ、と口を開いた僕の胸元を掴んだ彼女は、ぐっと背伸びをした。彼女に引っ張られながら、繋がった唇が冷たいのだか、熱いのだか、分からなくなった。
 離れた彼女は悪だくみ中の猫のようにニィっと笑って、そっと息を吐く。熱をもった僕の頬に冷たい風がひやりと触れた。

 
 

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