ジフテリア予防接種禍事件の既視感(3) | 空庵つれづれ

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この事件、書けば書くほど腹が立ってくるのだが、、、今日は最終回。

厚生省が自らの失態については知らんぷりをして、製造メーカーだけに罪をおっ被せ、

メーカー(大阪日赤医薬学研究所)を刑事告発したという話は先に書いたが、

この際、実際には、メーカー側の人物3人(所長・副所長・製造主任)だけでなく、

検査官Yも一緒に告発されている。

しかし、この検査官、所属は一応大阪府の職員(技官)であるものの、厚生省からの出向技官

であるから、実際には厚生省側の人間、つまり身内である。

誰が考えてもわかるように、

身内を告発したのは、一種のポーズであって、ハナから罪を問う気などないのだ。

事実、Y検査官の(タテマエ上の?)所属先である大阪府職員50人くらいが署名・捺印

した「嘆願書」などが出て(きちんと裁判記録に残っている)、このY氏は一審も二審も

無罪。そもそも彼を審議した形跡すらないという。。。


検査が「手抜き」であったことを隠して、有毒のワクチンが検査にひっかからなかった

のは、「不幸な偶然」だと強弁した厚生省。

前のブログで、この製造メーカー自体の技術力に問題があったことを書いたが、

その証拠は公判記録にしっかり残っている

よーく読んでいただきたい。

この製造メーカーは合計41ロットのジフテリアワクチンを製造したのだが、

そのうち、検査に合格したのはたった22ロット

つまり、41ロット中(半数近い)19ロットに不合格が出るような
技術力のメーカーの製品で、たまたま合格が出た(それも

「手抜き」検査で)ものだけを実際の接種に使った、

ということなのだ!!


(このことをまったく厚生省は公表していない!!)


しかも、京都で被害を出したロット1013号を検査した日付に近いところでは、

ほとんど軒並み「不合格」となっている中で、たまたまサンプルが無毒であった

ものだけが検査に「合格」しているのである。

(島根で、1013号の並びである1012号、1014号のロットから被害が出ている
が、上記のことを考えれば、この危険が予想できなければ推理力は小学生以下
である)

まったくもって、言い訳の一つも立たないような厚生省の犯罪だが、

こうやって、製造メーカーだけに罪を着せただけでなく、

「裁判になったら負けるから、早い目に補償金でカタを
つけろ」という法務省訴訟部

長官からの入れ知恵(長官が厚生次官に宛てた文書が実際に残っている)に沿って、
死亡者には10万円、後遺症の
重い者には5万円の補償金で、「和解」に持ち込んだ。


厚生省がこの事件を「どのように納めたか」については、もう一つの話がある。

実は、京都での被害に関しては、
京都府衛生部発刊の『京都ジフテリア豫防接種禍記録』(1950年)

という事件の公的記録文書が残されている。

これは厚生省の指示によって、作成された記録である。

エーッ!?、と驚かれる人も多いのではないだろうか。

自分たちの失態の結果の公的記録など、わざわざ作成して残すハズがない! 
と。

はっきりしたことはまだわかっていないが、どうもこれはGHQの指示によるもの
らしい。

起案書では、大阪(製造メーカーのあったところ)や島根でも記録作成を指示する
となっていたようだが、京都だけにとどめたというのは、(田井中氏らの推測によ

ると)、大阪を問題にすると、検査が手抜きであったことを隠せないし、島根を

問題にすると、危機管理の不手際ということで、これまた厚生省の責任を隠せない

から、京都の記録を作成するだけで責任を果たしたことにした、
ということのようだ。。。


実は、前回のコメントのところに少し書いたのだが、

この事件については、かの731部隊関係者の影がちらほらしている!!


まず、この京都の報告書の発行者になっているOという人物。

彼は事件当時、京都府衛生部での地位は「係長」(こうした公的文書の「発行者」

として名を掲げるには、あまりにも地位が低すぎる・・・)。
実はこのO氏、戦争中は731部隊の傘下にあった南方軍防疫給水部(満州第

9402部隊)に所属し、シンガポールで炭疽菌の研究をしていた人物なのである。

Oは、この記録を作成後すぐに、731部隊長石井四郎の「番頭」と言われた

かの内藤良一の興した日本ブラッドバンク(後に薬害エイズ事件を起こすミドリ

十字の前身)の京都プラントの所長に就任している!

Oはまるで、この記録を編纂するためにだけ、厚生省(おそらくバックにGHQ)から

派遣されたかに見える、と田井中氏は言っている。


これでもか、という事実がもう一つ。

有毒ワクチンを製造した大阪日赤医薬学研究所の設立に深く関わったSという人物

は、元731部隊の軍医少佐であり、当研究所でジフテリアワクチンを作る必要が

生じた時、731部隊で自分の部下であったK(厚生省が製造メーカーを訴えた裁判で

唯一実刑に処された人物)を製造主任として呼び寄せたという!

この事件がいかに日本の「闇」の部分に深く根ざしているか
を示唆しているようだ。

とにかく、おそろしい。。。