こんばんは。

「Kappo 仙台闊歩」編集長の川元です。


先週628日(金)、いわゆる「緊デジ」について、

東京新聞が一面&三面で

「復興予算の流用ではないか」という指摘をしました。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062890070805.html


同様の指摘は昨年12月の河北新報でもなされており、

「緊デジ」については、

昨年3月の仙台での説明会に参加して以来、

「なんか違うんじゃないの」と思って、注視してきましたが、

結局こんな顛末で終わってしまいました…。


やっぱり!としか言いようがないんですが、

ツイッターを見て、また腹がたってきたので、

ブログに書くことにしました。


久々の更新なのに、怒りモードですいません。


みなさん「緊デジ」と言っても、

よくわからないと思うので解説しておきます。


「緊デジ」は、経済産業省の「コンテンツ緊急電子化事業」のことで、

「電子書籍市場の拡大及びそれに伴う被災地域の知へのアクセス向上に向けて、書籍の電子化作業に要する製作費用を国が補助する制度」のことです。


復興財源を使う、総額20億円の事業で、

1年間で約6万タイトルを電子書籍化する目的でスタートしました。


事業の目的として、

①東日本大震災の影響により被災地域では、出版関連事業者の生産活動が大幅に減退し、被災地域の書店等が失われたことにより地域住民の知へのアクセスが困難になっている。


②被災地域において、中小出版社の東北関連書籍をはじめとする書籍等の電子化作業の一部を実施し、またその費用の一部負担をすることで、黎明期にある電子書籍市場等を活性化する。


③それとともに、東北関連情報の発信、被災地域における知へのアクセスの向上、被災地域における新規事業の創出や雇用を促進し、被災地域の持続的な復興・振興ならびに我が国全体の経済回復を図ることを目的とする。


上記は、説明会当日にいただいた資料からの丸写しです。



素晴らしい事業だと思ったのですが、

うちは参加しませんでした。



なぜなら参加できる出版社の条件が、

「出版社で作る業界団体に属していること」

「日本出版取次協会などに所属する流通業者と取引がある」

などという、まるっきりの東京目線。



多種多様な出版・流通形態がある中で、

この条件は地方の版元には初めから参加するなと言っているようなものでしょう。



東北で活動している知り合いの出版社もほとんど参加しなかったようです(あえて参加しなかった社もあるでしょうけど)。


条件がweb上で公開されてから問い合わせると、

「有識者で構成される審査委員会で決定した内容なので…」

という木で鼻をくくったような対応。



一方、仙台での説明会の冒頭では、

「皆さんのために予算を獲得してきました~」

と、経産省の役人がのたまう。



このギャップ。

一体なんだったんでしょうね。



で、事業が終わって、

制作されたリストが公開されたので見てみたのですが、

電子化された全制作タイトル数は 64,833 (pdfでなんと488枚!)。



東北関係の本っていったい何冊あるんだろうと思って

数えてみると、思った以上に少ない。

(けっしてヒマなのではありません)



例えば、


「仙台方言辞典」

「天を衝く : 秀吉に喧嘩を売った男九戸政実」

「震災死 : 生き証人たちの真実の告白」

「海鳴り 藤沢周平」

「ケセン語訳新約聖書」

「東北ビジネス最前線3~復興する東北の有用性が日本の力に~」

「特別報道写真集 平成の三陸大津波 2011.3.11 東日本大震災 岩手の記録」

「悲から生をつむぐ 「河北新報」編集委員の震災記録300」

などなどが散見されますが、

多く見積もっても全体の2~3%ぐらい。

(ざっとタイトルを読んだだけなので、正確には数えてません)



もちろん著者が東北出身であったり、

舞台が東北になっている可能性もあるので、

タイトルだけでは判断できません。



一方で、

官能小説・外伝」

「囚愛遊戯~姉はどうして僕を虜にするの?~」

「道重さゆみ写真集」なども電子化されている。



宗教、哲学、社会学、歴史、医学、語学などのジャンルの専門書や

売れ筋の新書ジャンルも電子化されているが、

一番目につくのは、コミックス。

「ゴルゴ13」全巻とか、「神の雫」とか…。


コミックスでもいいんだけど、

今回の「緊デジ」の目的ってそういうことだったの?

(結果を見れば、そういうことだったんでしょうね)



なお、

仙台オヤジ編集者が震災関連本として選んだ50選の中からは、

災害がほんとうに襲った時:阪神淡路大震災50日間の記録」

だけが電子化されていました。



結局、被災地の復興にこじつけ、黒船アマゾンに対抗するために、

「復興のため」という名目で、電子化しようとしたのは明白で、

被災三県で頑張っている地方出版社の本は

初めから眼中になかったわけです。




電子書籍については時代の要請ですし、

実際弊社の本もアップルで電子化していますので、

基本賛成なのですが、

復興予算で、この「緊デジ」事業をする必要があったのか。



地元の印刷会社でもこの事業を請け負ったという話も聞かないし、

まったくもって解せない。



まあ、東北の出版業界がなめられているということでしょう。


言ってくれれば、

震災を記録した市民出版の団体や、

より地域に密着した出版社の出版物を紹介できたのに。



復興予算を使いながら、

大手&中央の本がほとんどである事実が残念でなりません。



久々に腹の立つできごとでした!