◆LOGIC SYSTEM "LOGIC" (1981)
Produced by Hideki Matsutake

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【SIDE-A】
1.INTRO
2.UNIT
3.DOMINO DANCE
4.天変地異
5.XY?
【SIDE-B】
6.TALK BACK
7.CLASH(CHINJYU OF SUN)
8.PERSON TO PERSON
9.LOGIC

松武秀樹氏は「YMOの第4のメンバー」とも言われるほど、
YMOのサウンド・メイキングには重要な存在だった。

YMOのステージでも見られる、あの巨大なシンセサイザーを操り、
要求された音を瞬時に作り出すのは、松武氏無しには
成しえなかっただろう。

また、当初使われていたシークエンサー「MC-8」は結構難解な物
だったらしく、この機材を扱うのにも彼は欠かせない存在だった
と思われる。

参考までに、当時のYMOのレコーディングを撮影した映像がある
ので興味のある方はご覧いただきたい。

◆YMO - Recording


前置きが長くなってしまったが、今回取り上げるアルバムは
その「シンセ・マエストロ」松武氏が1981年に製作した、初の
リーダー・アルバム「LOGIC」。

マニピュレーターのアルバムとなると、なにやらシンセサイザーの
小難しい使い方が満載されたものを想像してしまうかもしれないが、
このアルバムに収められているのは紛れもない「テクノポップ」。

そして、シンセを知り尽くしているからこそなせる業であろう、
膨大な機材群から作り出される深い音は、今も新鮮さを失って
いない。

◆アナログ盤ジャケット
$テクノポップ秘宝館

曲は基本的にRyo Kawasaki(たぶん、ジャズ・ギタリストの川崎僚氏
だと思われる)という人物が作っていて
、大村憲司氏がギターで
ゲスト参加している。

※訂正:作編曲者の記述が間違えていました。
正確には「Ryo Kawakami(川上 了)」という方のようです。
ブログ「TECHNOLOGY POPS π3.14」の管理人reryoさんから
教えていただきました。ありがとうございました。


川崎氏の事はあまり詳しくは知らないが、彼が作り出すメロディーは
松武氏の作り出すサウンドとの相性がよく、それもこのアルバムの
クオリティーを上げる要因になっていると思う。

◆インナースリーブ
$テクノポップ秘宝館

また、当時のシンセサイザーの主流はアナログシンセだったので、
今のデジタルシンセに比べると、チープなサウンドに聴こえるかも
しれない。しかし、基本波形から試行錯誤して作らなければなら
なかったアナログ・シンセの音は、デジタル・シンセでは作り出せ
ない要素もあり、今聴いても魅力的だ。

1981年といえば、質の高いアルバムが沢山リリースされたが、
暗く重厚なサウンドのアルバムが多かった。本作もその影響を
受けている曲もあるが、明るいイメージの曲も収録されている。
そういった点でも、みんなが大好きな「テクノポップ」が詰まった
アルバムともいえる。

◆LOGIC SYSTEM / DOMINO DANCE


YMOの関連アルバムとして聴いても興味深い部分が沢山あるが、
そうでなくても、シンセサイザー・ミュージックの名作として
時代を超越した魅力を今もなお、放ち続けている。
読者登録をさせていただいているクリボーさんのブログで、
YMOのなつかしい映像を取り上げていたので、影響されて
YouTubeでYMOが昔出演したテレビの映像を色々検索してみた。

自分はYMOファンとしては新しいほうだと思うので、
見たことない映像が沢山あった。

その中で特に興味引かれたものを、今回は二つ取り上げてみたい
と思う。

一つ目はかつてフジテレビで放送されていた番組
「スター千一夜」に3人が出演時の映像。何と、司会が
坂本九氏である。

世界に進出できた数少ない2組が共演しているという点でも
かなり貴重なのではないかと思う。

◆YMO スター千一夜(1/2)


◆YMO スター千一夜(2/2)


収録時期は第二回目のワールド・ツアー凱旋公演であった、
武道館コンサートの告知をしているから1980年の終わり頃だろうか。

3人が結構リラックスしているのが印象的である。
Part2でやけに演歌にこだわっているのが面白い。

「スター千一夜」は1回15分くらいで月~金のオビで放送されて
いたような記憶がある。なので二つに分かれているのかもしれない。

もう一つの映像は武道館にプールを作っちゃった伝説のコンサート
「写楽祭」を取材したニュース映像。

◆YMO - 写楽祭 [1980/4/23]


「写楽祭」は雑誌「写楽」の企画コンサートでスネークマンショーと
一緒にやったものだったはず。先のプールの件や犬をステージに
上げたりと、かなりむちゃくちゃな事をやったらしい。

極めつけはYMOの3人がアコースティック・ギターを抱えて表れ、
フォークスタイルで歌ったことだろう。

いつものYMOが見れないで不満を言う観客に教授が
「うるせーぞコノヤロー!」と言ったのは、後にライブ・ベストCD
「ONE MORE YMO」にも収録されている。

いや~、実に時代を感じさせる映像だ。
客のコメントとかアナウンサーの喋り方とか。

「イエロー・マジック饅頭」はテレビで見た記憶がある。
演奏部分の音が消されているが、著作権の問題でもあったのだろうか。

それにしても皆さん、ホントに貴重な映像をよく保存してくれていた
ものだ。また、面白い物が見つかったら取り上げてみたいと思う。

◆KRAFTWERK "THE MAN MACHINE"(1978)
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【SIDE-A】
1.THE ROBOTS
2.SPACELAB
3.METROPOLIS
【SIDE-B】
4.THE MODEL
5.NEON LIGHTS
6.THE MAN MACHINE

これこそが「テクノロジーを使ったポップス」という
パブリック・イメージを作ったアルバムであり、
テクノポップの金字塔といっても過言ではないだろう。

収録曲、全6曲の内、今でも4曲がステージでも演奏されている
クラフトワークの代表作である。

ちなみに「テクノポップ」という言葉が最初に使われたのは、
雑誌編集者で音楽ライターの阿木譲氏がこのアルバムを紹介する
際に使ったのが始めだとされている。

◆アナログ盤ジャケット
$テクノポップ秘宝館

この頃よく論議されていた、「シンセサイザーミュージック=
冷たい音楽」というのはA-1の「THE ROBOTS」をはじめとした
このアルバムの楽曲からイメージされた可能性が強い。

自分のような当時子供だった人の中には、YMOの影響でこの
アルバムを聴いた人も多いと思うが、YMOのように生ドラムを使用
したり、音数の多い音楽を聴いてからこのアルバムを聴くと、
音数の少なさとエレクトリック・パーカッションのチープさに
拍子抜けしてしまうかもしれない。

しかし、一つの音に対するこだわりは尋常ではなく、まさに
「一音入魂」と言いたいほどである。そして、それだけ音を
作りこんでいるからこそ、時代を超越して多くの人に感動を与える事
が出来るのではないのだろうか。

◆アナログ盤ジャケット裏
$テクノポップ秘宝館

先のA-1「THE ROBOTS」はステージで演奏される際、メンバーの
立ち位置にメンバーをモデルにしたロボットが登場するのが定番に
なっている。これが異常に盛り上がったりする。

B-1の「THE MODEL」はクラフトワークの楽曲の中でも、特に広く
世間に知られている曲ではないだろうか。日本ではヒカシューが
カヴァーしたことでも有名である。

B-2「NEON LIGHTS」は個人的にもこのアルバムの中の
フェイバリットでもある曲で、美しいメロディーが印象的である。
全部がコンピューター制御でないからこそのグルーブ感があるのも
この曲の面白い所。

そしてこのアルバムのタイトル曲B-3「THE MAN MACHINE」
は、テクノロジーが支配する時代が始まったことの宣誓のようでも
あり、そうなる事で人間性を失わないように、という警笛にも聴こえる。

◆KRAFTWERK / THE ROBOTS


◆KRAFTWERK / THE ROBOTS (LIVE)


クラフトワークの音楽はこの頃から基本的に変わっていない。
これを「マンネリ」とバカにする者もいるだろうが、ここまで
たどり着くには様々な試行錯誤が繰り返されてきたであろう事は
物作りに携わったことのある人なら、想像できるだろう。

まさに「鋼のコンセプト」。逆に言えば、ころころスタイルを変える
事でしか表現できないのは、「自分」というものを築きあげる事が
出来ない弱さの表れでもある、という事をこのアルバムを聴いている
と実感する。