託される夢 | Talking with Angels 天使像と石棺仏と古典文献: 写真家、作家 岩谷薫

託される夢

『Talking with Angels』西洋墓地の天使像 : 岩谷薫-09_03_15_記事  この頃、カラーの随分ハッキリとした外国人の夢を頻繁に見ます。次の作品集をなんとかしようと思っているからでしょう…昨晩は、旅人の夢と、ギャングの夢。もちろん舞台は19世紀頃です。
 旅人の夢は、蒸気機関車が通う駅の待合室で、白いドレスの10代前半の少女と仲良くおしゃべりしているシーン。その少女は、結局、不幸な亡くなり方をしてしまうのだけれど… 旅人は予知能力のように、その少女の未来を知っているのですが、勿論彼女には伝えません…。
 ギャングの夢は、ものすごく冷淡に淡々と抗争相手を銃で撃ち殺すのだけれど、本人も殺すべき確固とした信念をもって仕事をしているにもかかわらず、氷の心に、ほんの一抹、悪人を殺める心の痛みを感じている人でした。
 さらに最近見た夢は、貧乏で襟飾りも買えない牧師さんの夢でした。襟飾りは代用の黒い布で牧師さんの手作りで、悩み多き人生でした。

 なんだ不幸そうな夢ばかり。と思われるかも知れませんが、今、少々がんばり時だからかも知れません。キレイな夢も見るんですよ。ある時などは海辺の貴族の館で接待され、主人に「よろしくおねがいしますよ。」と言われた事もあります。窓から見える輝く青い海が美しかったこと…。またある日は、村祭りに呼ばれて老若男女みんなで楽しく食卓を囲んだ事もあります。同席した7歳くらいの男の子と女の子の大きな目の笑顔が印象的でした…。あるいは、もう帰りたくないと思わせるほど美しい海の光景を見せてもらったり…。

 おそらくこれらの登場人物は、私が目に見えず知らず知らず墓地で出会った人々だと思うようにしています。何か私にメッセージを送っているのかも知れません。あるいは単にいろんな魂の記憶の断片だけなのかも知れません。恐怖はまったく感じません。映画のシーンのようなものです。
 ロンドンの写真集制作中は、複葉機でよくロンドン上空を飛んでいました。またウソのようなキレイな墓地の中を気持ちよく歩いている事もありました。イタリアの写真集制作中は、スタリエーノ墓地の中に神曲に登場するケンタウロスが降り立っていました。後に知りましたが、その墓地はダンテ研究でも有名なジュゼッペ・マッツィーニが眠っている場所だったのです。この夢により私は神曲に想を得たものです。そういう不思議は実際にあります。
 ただ、今回の国の夢の登場人物は、それぞれ個性がバラバラで多いです。多くの魂がそれぞれで心配しているのかも知れません。
写真はトリノ、モニュメンターレ墓地で見付けた、みごとなモザイク。