李登輝 さんに御会いしたこと | Talking with Angels 天使像と石棺仏と古典文献: 写真家、作家 岩谷薫

李登輝 さんに御会いしたこと

この頃、長い話題ばかりで恐縮ですが、せっかく李登輝さんの名が出たので、ちょうど去年の今頃、李登輝さんと出会った感動を、なくなった私のHPからの抜粋でご覧ください。私の写真は西洋のものを撮っていますが、東洋ももちろん好きなんです。 文中、巨人という表現はもちろん李登輝さんのことです。
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巨人という言葉は私の中では敬称です。「知の巨人」「行動の巨人」です。この間の台湾ロケの要人撮影でこの巨人を撮らせていただきました。実名は何か問題になるといやなので書きません。(察しのいい方はスグ解るハズです、偉人です)その人のインタビュー中を撮影するわけですが、要人ですから当然、政治のお話をするのかと思いきや、政治の話は一切せず、宗教と哲学の話に終始されました。その巨人が仰るには「日本人はもっと自分達の思想に自信をもたねばならん!」と熱く語りはじめました。そこで引き合いに出されるのが「禅」や「武士道」です。そして禅を外国人にも分かりやすいように解説した鈴木大拙の功績はスバラシイという話になり、痛く感動しました。鈴木大拙といえば、以前のコラムにも書きましたが何故か今年の私の思想家マイブームで、もっと世に知られていい思想家だと常々思っていた矢先でした。今日、この場のために私は見えない伏線の上に立って、今まで鈴木大拙の本ばかり読んでいたのかと気が付くと、びっくりしました。偶然の仕事で私が台湾に来た理由はこれだと解りました。巨人はさらに語ります。「人は死ぬ。そこから宗教や哲学が生まれるのだ。もっと死に注目しなければならない。」「キリスト教とか仏教とか垣根を超えたもの」「信じることが大切なんです」これらは、私が墓場の天使で表現しようとしていることそのものなので、体に電流が走りそうでした。その他、読んでいる本もとても共通するものがあり思想のチャートを見る思いでうれしかったです。07_8_3_記事
撮影が終わり、私が巨人に「私も鈴木大拙、大好きなんですよ~」と思わず声をかけてしまうと、実際、長身である巨人の白い手がまるで、空から降りてくるように握手を求められました。その手を両手で受け止めた私は「もっと勉強しますゥ~」と口走っていました!笑。御年、八十云歳。彼の意志の0.01%も継ぐことはできないかもしれませんが、確かに何か受けとった気がしました。いや~スゴイ人に御会いできました。今まで撮影した人の中で、一番スゴイ人かもしれません。「知行合一」という感じでした。宗教、哲学に対してものすごい知識量です。政治の話よりもその奥の精神に重きを置くお気持ちが痛い程解りました。  写真はロンドンのエボニーパークセメタリー。