私の扱った案件が判例時報2199号26頁に掲載されました | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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 登場人物はA・Y・Xの3名。事案概容は1~7です。

1、平成14年初めころ、YはA(所在が分からず訴訟当事者にできなかった)からトンデモ投資話を勧誘された(話のトンデモなさ加減は実際に判時の解説にあたってみてください。XもYも、Aのその話をすっかり信じていたのです)。
2、YはAの言葉を信じて、自己資金で平成14年11月頃から継続してA口座に送金し始めた(Yの自己資金からの送金総額は3000万円を超える)。
3、平成15年夏ころから、Yの自己資金のみではAの指示する金額を送金しつづけることが難しくなった。
4、そこでYはXにいい投資話があると、Aから聞いた話と同じトンデモ投資話を説明して、自分(Y)に送金すれば何倍にもなって返金されると誘った。
5、XはYの説明を信じた。Xからの送金方法は、Y名義のY口座に送金し、YがA口座に送金するというやり方であった。
6、XからY口座への送金総額は平成15年7月から平成22年12月までの間に3000万円以上にのぼる。
7、Y口座からは、これまで180万円がX口座に返金された。
 Xは返金未了の2900万円余りの返金(主位的)又は損害賠償(予備的)を求めて提訴した。


 Xは7の一部返金の事実があるのだし、Yからの勧誘文句は「お金を貸してくれれば倍返しする」と言われたからこそ、継続的にお金を送金してきたと、XY間の資金移動は金銭消費貸借(=送金額と同額の返金義務アリ)と主張してきた。

 他方、YはあくまでY口座を介して送金するというAへの投資仲介にとどまり、7の一部返金も生活苦のXをおもんばかって恩恵的に送金してあげたにすぎず、XY間の資金移動は投資の仲介(=YはXに返金する合意をしていない)と反論しました。
 一審控訴審ともXY間の資金移動は金銭消費貸借ではないと認定しました。

 しかし、一審控訴審ともに、トンデモ投資話に他人を巻き込めば他人に損失が生じることはYにも容易に認識できるのだから、YはXを投資勧誘することを避けるべき注意義務を課せられており、にもかかわらずXをトンデモ投資話に巻き込んだYには不法行為責任が成立すると認定し、Yに1700万円余りの支払を命じました(ただしトンデモ投資話を軽率に信じたXにも相殺されるべき過失が40%あると認定されました)。

 抽象的にいえば【資金の移動が金銭消費貸借なのか投資の仲介にとどまるのか判断した一事例】【トンデモ投資話に勧誘する際の勧誘者に求められる注意義務と不法行為の成立、そして、被勧誘者の過失相殺を認定した一事例】というタイトルになるのでしょうが、判時のタイトルが次の[]のとおりいけてない表現でしたので、今回、ブログ記事に検索しやすくまとめ直した次第です。
 次の[]で事案をさっと推測できる人はいるのかな。
 それにしても腹立たしいのは、うまうま6000万円以上を懐に入れて、いまなおのうのうと生きているだろうA(怒怒怒)。

[甲が乙の故意または過失による虚偽の説明を受け、乙に金銭を交付すれば多額の利益を得られると誤信し、乙の口座を介する方法によって丙に対する投資をしようと考え、乙に対し送金したものであるときは、甲は乙に対し乙の不法行為を理由としてそれによって被った損害の賠償を求めることができるとされた事例]
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