発達障害部門 第6位
さて、僕が最初に関わらせていただいた当事者さん達は、本で読んだのとはまるで違って、ある程度のコミュニケーション能力もお持ちだし、配慮が無く無遠慮どころか、周囲に非常に気を使い、言葉かけも丁寧で、謙虚で生真面目な印象の方々でした。(詳しくはこちらの記事 )しかし、発達障害にはそんな方ばかりではなく、特に重い二次障害を抱える方々の大変な状況は、すごいものがありました。今日はそんなお話です。
【二次障害の重さで、随分ちがう成人当事者さんの様相】
後でわかったことですが、この時僕が会っていた当事者さん達は、ある程度、二次障害も克服しており、また、対人能力や社会スキルも多少身につけている方々でした。しかし、こうした人達だけを見て、成人発達障害を語るのは誤りだったのです。
こうした人達とは対極にあるような方々とも、その後、接するようになりました。
彼等は、重い二次障害に苦しみ、強い自己否定を抱えており、
社会にも自分にも、そして時には家族にも対しても、
否定的な感情で一杯の人達でした。
発達障害の特性であるこだわりはキツく現れており、ゼロ百思考も極端です。
また、周囲の全てを否定的にみる視点が染み付いており、
失敗を恐れる余り、新しい環境に飛び込んだり、
自分本来の良さを取り戻す為の機会に、挑戦することすら恐れてしまうのです。
こうした人達の多くは、家に引きこもっています。学生時代から不登校であった方も居ますし、学生時代は何とか学校に通っていたものの、就職でつまづき、今はニートをしているという人も居らっしゃいました。
【統合失調症との誤診のケースも決して少なくない】
もっとひどいケースでは、被害妄想やありもしない思考にとらわれてしまい、統合失調症と診断されて、長期入院や薬の大量投与で、元々の人柄とは全く違っているのではないかと思うような人達も居ます。こういった方々とは、直接お会いしたことは無く、親御さんから聞かせていた様子を書いているのですが、ここまで問題がこじれてしまうと、プラスマイナス・ゼロの状態に戻すだけでも、大変な時間と家族・支援者の協力が必要だと感じます。
そこには、この障害の持つ恐ろしいキバがむき出しになっており、
その人達本来の真面目で誠実な人格は、深い底に閉ざされており、
障害特性の悪い面が、如実に表出している様子なのです。
【決して甘くない、この障害の現実】
こうして考えてみると、
この障害のキバはやはり甘いものではありません。
昨日の記事に書いた比較的障害を克服されつつある方々であっても、
その半数はアルバイトも出来ない無職の状態なのです。
ましてや、今日記事にした方々は、仕事どころか、
外出さえままならない方たちなのです。
ただ、ぼくはこうした多くの方々に直接触れてみて、
それでもやはり、この障害は克服できると実感しています。
ただ、問題もあります。
昨日記事にしたような人達は、
確かに対人能力もある程度持っていますし、
コミュニケーションもある程度は出来る人達です。
問題というのは、こうした社会的な彼等は、
彼らが相当頑張って、特性をカバーするために神経をすり減らし、
へとへとに疲れるまで気を使って、やり遂げている姿であるということです。
こうしたことは、長く続けられるはずも無く、
現実、彼等の多くは、睡眠障害やうつ病を抱えることが多いようなのです。
彼らが無理をして社会適応をしている限り、
ぼくは、中々安定就労は難しいと考えます。
実は、発達障害は、就職できないのが問題なのではなく、
仕事を続けられないことが、一番の問題なのです。
このことについての詳細は、また別の機会に語りますが、
本にあるような人達ではなかったにしても、
彼等はそのままで社会適応して、
安定就労が出来るわけではありません。
僕は思います。
この人達が持っている、元来のやわらかな人柄を、
そのままに外に出せるような方策が見付かれば、
彼らに過剰適応は必要なくなるのだと。
また、本人の努力と、社会の理解の両輪で、
発達障害を持つ人達が、社会で働いて、
納税者としてやっていけるようにならないと、
この問題はいつまでも解決しないということです。
今日は、状況と問題の提示ということろで、
おわりとなりますが、この課題について、
今後もっと考えていくべきことが沢山あるように感じます。
このブログを通しても、皆さんのコメントやツイートで刺激を受けながら、
この課題については、もっと考えていきたいと思っています。
そこには、当事者さんと定型発達の、
両者の努力と歩み寄りが必要なのだと、ぼくは感じています。
P.S.最後にひとつ書き添えておきますが、僕が知る限り、
重い二次障害を抱えてしまい、
引きこもりの状態になった当事者さんでも、
そこから回復して来た人を何人も見てきました。
一時は、精神的混乱が、相当重い状態にあり、
ご家族共々大変ご苦労されていましたが、
それでも、そこから抜け出してくる方もいるのです。
カギは、人としてあたたかく迎えられる体験でした。
自分の存在を認めてもらえる経験でした。
このあたりについては、また別の機会で書いて行きたいと思います。
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