発達障害の成人当事者さんとかかわると、比較的年齢よりも若く見える方が多いことは、以前記事にしました。また、中には青年期になっても、中々自己確立が出来ず、自分の生き方ですら手探りという方も少なからず居ます。なぜこうした事が起こるのかと考えた時に、二つの特性がもたらす矛盾がそこにあるように感じました。今日はそんな記事です。
【経験の積み重ねで成長していく発達障害】
発達障害を持っていると、「予測」が苦手であるというのを、以前記事(詳しくはこちら )にしました。体験したことのないものを、想定することに苦手があるという話です。
この傾向は、ひとから聞いた話や、本で読んだだけの知識を取り入れ難いということにも繋がるようです。一度でも経験したことのあることなら、そうでもないようなのですが、経験したこともないことの場合、自分の身につけることが容易でないようなのです。
それだけ、発達障害の当事者さんにとって、
「経験すること」が重要であるといえるのでしょう。
発達障害の成長には、
「経験」が欠かせないといようなのです。
【こだわりから、習慣的行動を好む習性】
また一方で、発達障害があると、こだわりから習慣的行動を好む特性もあります。程度には個人差もあるようですが、定型発達なら飽きてしまうような繰り返しも、当事者さんにとっては、精神安定に重要な要素として習慣化するようなのです。多くの親御さんや当事者さんのお話を聞きましたが、実際、本当に日々同じ繰り返しを、それこそ好んで続けられるようなのです。
さて、この二つの特性に大きな矛盾に、ぼくは気づきました。
新たな経験を積むことが、
発達障害の成長発達には欠かせないのに、
習慣性行動を好むことから、
新しいことをやりたがらないという特性です。
この二つの特性は、発達障害当事者の成長にとって、
矛盾する存在となります。
習慣性を好むといっても、単に日常生活のことだけではありません。
こうした傾向が、特にその状態が顕著になるのは、
二次障害から、予期不安やパニック障害などを併発しているケースです。
一度やった失敗体験が深く刻まれて、
社会とのかかわりを拒絶してしまうケースです。
要は、精神的な不安定さが、こだわり行動を強化するわけです。
電車の中で笑われた経験から、電車に乗れなくなってしまったり、
特定のレストランでの失敗体験から、二度と入れなくなるなど、
失敗体験を極度に恐れる状態に陥ると、
そうした場所へ近づくことすら出来なくなってしまうようなのです。
この状態が嵩じてくると、外に出るのを嫌がったり、
初対面の人には会いたがらないなど、
社会に対して扉を閉ざしてしまうようなのです。
当事者さんの状態がここまで来てしまうと、
新しい経験に挑戦することは難しく、
結果、当事者さんの成長発達は著しく遅れ、
自己確立はいつまで経ってもできません。
【精神安定が、こだわり行動を軽くする】
こうした矛盾を解消する秘訣として、
ひとつ考えられるとしたら、
当事者さんの精神的安定状態をいかに作るかではないかと考えます。
前述の様な予期不安やパニック障害も、
ご本人の気持ちの緊張が解決し、
精神状態が安定してくるところで改善することでしょう。
そして、発達障害元来の習慣的こだわりについても、
相乗効果でゆるんでくるのだと考えるのです。
「気持ちの問題だから、無理にでも経験を積ませる」
というのは、逆効果でしかないでしょう。
これは障害特性の問題なので、
単に気持ちの切り替えで解決することではないからです。
時間をかけて、精神安定を取り戻すことで、
やがて新たな体験に挑戦していく意欲を、
取り戻すことが大切ではないかと思うのです。
つまり、こういうことでしょうか。
「精神安定を保つ」→「習慣的こだわりを軽減」→「新しい経験を増やす」
発達障害の成長促進に、二つの矛盾した特性があるということ。
そこに気づいて対処すると、
二次障害を起こしている当事者さんにも、
無理のない成長発達が出来るように思うのです。
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