現在は廃番となっているMontblanc 146のボルドー軸です。
製造年は1992-2000年頃で、この146は「ヘミングウェイペン芯」と呼ばれるペン芯形状から、おそらくは1992-1993年頃の初期型と思われます。
入手先はヤフオクで、2010年に25000円くらいで購入した覚えがあります。

私は職業柄、赤インクを多用するのですが、この146ボルドーは細字ですので、モンブランのボルドー(現在はバーガンディレッド)インクを入れて原稿の校正用に使っていました。
しかし、キャップを外すと首軸がインクで汚れる現象がしばしば発生するため、最近は手から遠ざかっていました。
この現象、当初はキャップの密閉度とペン芯能力が釣り合っていないことで、キャップをを外す際の気圧差でペン芯のインクが引っ張られているのかと思っていたのですが、よく観察すると、インクは首軸とニブユニットの接合部(部分)から漏れているようです。

1980年代以降の146のニブユニットは、ソケットと首軸の間にシリコン製のシーリング材を塗布されて首軸にねじ込まれていますので、おそらくはこのシーリング材が劣化してインクが漏れたものと思われます。

そこで、146首軸分解用の専用カニ目工具を用い、ニブユニットを首軸から外します。
この専用工具は、ebayにてドイツと中国のセラーが数種類をそれぞれ安価に販売しています。
私が使用した工具はドイツのセラーのものですが、146のニブユニットは、1994年頃を境にカニ目を引っかける凹部の位置が変わるため、この前後で対応する工具の種類も変わります。
ニブユニットを持つ全モデルに対応した工具も、少々高価ですがアメリカの修理人が販売しています。

今は実施されていないモンブランの無料ペンクリニックにて、
小野マイスターに146系の20146「ラムセスⅡ世」をメンテナンスしていただいた際の記憶によれば、ニブユニットのシーリング材はピンク色で、外した際には固形の膜状に剥がれるはずです。
しかし、146ボルドーの首軸からは、透明のシーリング材が細かいクズ状となってポロポロと剥がれ落ちてきました。
以前のオーナーによって、この部分がメンテナンスされていたようです。
モンブランオリジナルのピンク色のシーリング材は入手困難で(ドイツのセラーが、ebayにて類似のピンク色のシーリング材を販売していますが、手元にありません)、日本の修理人はバスコークN透明で代用することが多いようです。
しかし、バスコークN透明も私の手元にないうえ、「万年筆に使って本当に安全なのか?再分解できるのか?」と少々不安にもなったため、防水時計のシーリングに使われるシリコングリスで代用。
私は、セイコー製のシリコングリスをヴィンテージのオノト式やピストン吸入式万年筆の弁、首軸ネジ等に多用しており、これまで問題が発生したことはありません。

ニブユニットにシリコングリスをたっぷり塗って

以前のシーリング材を除去した首軸にねじ込み、溢れたシリコングリスをティッシュで拭います。

これにて完成。
とりあえずインクを吸入しても漏れないようです。
多分成功?
どのくらいシーリングが持つかは年単位で観察ですね。