著者: 湯本 香樹実
タイトル: 夏の庭―The Friends

例えば誰も死ぬことのなかったあの頃の世界へ戻ったとしたら世界は変わって見えるのだろうか。
人が死ぬということを本当の意味で理解することのなかったあの頃。
ふとしたことで人の死を感じる瞬間が訪れた時、私は何を思うのだろうか。
何も理解していない時の私は、やはり見てみたいと感じるのだろう。
「夏の庭」の少年達のように。
彼らの初めて近くに感じた死は友人の祖母の死だった。
そこから興味を持ち、一人の老人の死を見届けるために観察が始まる。
そして交流に繋がっていく過程はとても自然で、健やかで、そして輝いていた。
いずれ訪れる結末を考えればそれはあまりにも切ないものだった。
人が逝くということは、その人の表情、くせ、言葉、そして語り合う時間、全てが喪われるということだ。知らない時は全てが無くなってしまう、そう思っていた。
そんなことはない。喪われるものは大きい。しかし残るものは計り知れないのだ。
逝ってしまった人を偲ぶ心を無垢な魂が学ぶ姿は切なくて悲しく美しいものだった。


人に紹介していただいて読んだ本でした。泣ける本でした。

素敵な本をありがとうございました。