ネオ窮乏化論 | みんななかよく

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 中間層は体制の安定装置


現在の格差社会を、社会民主主義的、修正主義的に取繕う方法は、全て無効であろう。


第一に上部構造-社会意識を含めた現在の体制の強固さである。それは全ての階層をビルトインして磐石の体制を誇っているかにみえる。現代の社会構造では経営と資本が分離し、企業は上級労働者層から選抜された経営者によって運営・管理されている。

経営主体としての企業(私企業のみならず、地方公共団体など各種の団体を含む)は、その正規雇用メンバーによって管理され、労働組合も若干の利害調整を除いては、その正規メンバーシップを補強する手段に過ぎない。


第二に、現在の体制はそのスタビライザー(安定装置)として中間層を生み出し、その階層の小市民的エゴイズムは、社会変革をもたらすより、弱者を犠牲とする永続的な安定を志向する。


格差社会が極めて現在的な問題になったのは、不安定雇用者層(プレカリアート)の窮乏化、固定化であって、階級分化一般ではない。全く所得がフラットな社会構造はありえず、階級構造は従来から存在した。その矛盾が深化しなかったのは、多少の階級間流動性であり、経済成長による所得分配であった。

現在は両者とも実現されうる条件にはない。高度成長期の再現の不可能性は自明だ。階級間流動性も上級階層による恣意的な選抜以外の機会はない。下層階層を固定化することで得られる社会の安定が志向される以上、「出世物語」は宗教以上の阿片に過ぎない。


そして格差社会があらわになってきたときと符節を合わせ、「自己責任」という言葉が流通した。プレカリアートはその貧困の責任を個人の資質・能力・努力に負わされる。しかし、バブル経済を出現させ、やがて破綻させた支配層(政治家、官僚、経営者、学者等)の能力と責任は問われることがなく、バブル利益を期待した大衆投資家や社会全体の責任 利益もまた追及されることなく、膨大な不安定雇用層が生み出された。

廃業により、リストラにより、成長して労働年齢になっても正規雇用がないことにより。


この状況下で、更なるリストラが進み、医療費など公的負担が増大し、ゼロ金利が続くことによって中間層が没落することは必然であり、またプレカリアート層の目標でもある。

農民、中小自営、勤労者層とプレカリアートとの戦線を結成した社会運動により、社民的福祉政策を実現することは、安定した雇用層その他の没落を遅め、歴史の針を逆に回す行為である。

さらに、福祉、その他の社会施策によって得られる社会の安定は、正規雇用を増大させないと考えられる。


(雇用を確保するには、厳重な雇用管理による外国人労働力の排除、投資機会の拡大が必須である。その選択肢には公共投資や軍備拡張が含まれる。前者はマネタリストの流れを汲む保守派に、後者は革新派に忌み嫌われるが、公的で直接的な政策選択としては、最も簡明である。)


 窮乏化こそ連帯の契機


安定した雇用層や中小自営が没落することは、貧富の差を二極化させるが、これは今まで語ってきた現在の体制の安定化装置の破壊を意味する。

簡明のために以下のモデルを考えてみよう。


富裕層10%-国富の所有50%、 中間層50%-国富の所有40%、不安定層40%-国富の所有10%


これが中間層の没落により


富裕層10%-国富の所有70%、 中間層10%-国富の所有10%、不安定層80%-国富の所有20%


と変化したとする。富めるものはより富み、貧しいものが増える。中間層の数は激減するというモデルだ。

その時に起こる政治的変化は、80%の不安定層(貧困層)を中心とした、せざるを得ない政策と社会のあり方だ。


最も重要なことは、そのとき初めて自己の階級の利害によって貧困層(プレカリアート層)が政治的パワーを発揮し、新たな社会を形成する能動的な主体となることだ。


これまでの中間層(安定した雇用層等)は、戦後の経済大国化の中でパイの分配を受けて形成されてきたに過ぎない。ゆえに―労働組合などに顕著であるが―社会意識においても社会制度においても、つねに所与の条件の中の物取り闘争に終始し、自己保身を図って貧困層を切り捨ててきた。

この構造を保存したままの、雇用層(労働者階層)の大同団結などはありえない。それは歴史によっては実現不能が既に証明されたプロセスだ。


中間層の窮乏化による階層二極分化こそが、労働者層、中小自営、農漁民など、非富裕層の大同団結をもたらすのであり、そのプロセスを経てこそ、公平で平等な社会が実現されるのだ。


全ての社会変革を志向する変革者は待機せよ!


プレカリアートは安定雇用層を狙い打て


人間は本質的平等という自尊心以外失うものの無いプレカリアートは団結せよ!


                               

                    

              グルーチョ、チコ、ハルポ マルクス なーんちゃって


【参考文献】

 これ  

 あれ