大体、寄席でやる演目は決まってくるものだ。
単純に時間が決まっているわけだし、15分の中で出来るネタって非常に少ない。
例えば師匠の松鯉は、15分の寄席では
「扇の的」「玉子の強請」「谷風情相撲」「太田道灌「「殿中松の廊下」「奉書試合」「屏風の蘇生」「雪江茶入れ」「出世の春駒」「雁風呂」お正月は「門松の由来」
ぐらいで回していて、これが20分ある池袋や広小路では
「丸利の強請」「天野屋利兵衛」「河内山~玄関先の場~」「肉付きの面」
などが加わる。
私は15分の寄席では
「山田真龍軒」「谷風情相撲」「狼退治」「海賊退治」 時々「雷電初土俵」「鹿島の棒祭り」
20分の寄席では
「違袖の音吉」「熱湯風呂」「桃井源太左衛門」が加わる。
こんな所だろう。
師匠は70歳の講談師ゆえ、見せ方も重厚な演目で講談独自の色合いが強い。寄席での位置も深いゆえだろう。
私は20代で若い講釈師が求められる演目の選び方。どっちかというと、明るく楽しく元気良く的なネタ選びだ。出番も前座さんの後なので、役割的にもそうだろう。
重厚なのを二つ目にやられてもきついという。
師匠と「谷風情相撲」が同じだけど、師匠は人情を主軸に据えた本来の演出。私はスピード感と笑いを重要視しているやり方で、くすぐりも大幅に変えた。
同じネタでも寄席へのアプローチが違うという事か。
この前アドバイスされたのは5日の内3日は得意ネタをやり、あとの2日は自分のやりたいネタをやると、良い配分と言われた。
前座の4年間で、どの師匠がどういうネタをどういうタイミングでやるかを見てきた。古典派と言われるある師匠は、お客様が多い時は必ず自作をやる。その後「代わり目」に入ったりする。これは小笑兄さんが見抜いた。言われてみるとその通りにやってる。
みんな寄席では、ある程度決まったネタをやる。勿論、定期的に変える人もいるが基本固まっている。
人によっては、最近ネタ下ろししたのを固めてする人や、毎回三つで回して必ずウケる人もいる。勿論三つで回している人も、膨大なネタ数の持ち主であったりして、寄席でネタをかける哲学が各々あるのだろう。まくらもしかり。
寄席でのネタに関して、現場で聞いた色々な人の意見集
「面白い人は何をかけたって面白い。」
「ネタ選びより、同じネタでも今日の演出を考えた方がいい」
「昼のサラ口から博打の噺をやるなよ」
「寄席は顔見世だから、得意なのしかやるべきでない」
「この馬鹿は一年中『皿屋敷』か」
「この位置でこのネタやるかね普通」
「ネタ下ろし感がないよ」
「同じものばかりは自分も飽きるから、変えないと駄目」
「新作はとんでもなくお客様が引く時があるなぁ」
などがある。
小言も入っていたけど、人それぞれなのだろう。
ただ、何となく「芝居の喧嘩」や「扇の的」などは寄席ネタとしていいね。
愛山先生にも教えて頂けると有難い。
「将棋のご意見」や「本田出雲守の討死」とかはつかえそうだ。少なくとも広小路亭の20分では。
芸術協会が13年で真打ち説があるとするなら、私は残りあと8年くらいか。
連続物は当然として、こういう寄席ネタも3倍以上は増やさないと。やる事はいっぱいあるなぁ。全くやってないけど。