我が闘病記。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

ジャージ


 今年2度目の緊急入院となった11月28日、『心不全』の場合は必ず救急車を呼ぶ事となる。三井記念病院の救急外来に電話を入れ、「数日前から体重が4キロ増加し、起坐呼吸でないと苦しい」旨を看護師に伝える。

 「救急車を呼んで下さいね…」予想通りの返答で、119へ…。数分後『ピーポーピーポー』が聞こえ始め、3人の救急隊員が椅子型ストレッチャーと心電計を持って私の部屋へとやって来た。『期外収縮』と『心房細動』そして『ST低下』等の不整脈がある事を隊員たちに伝える。

 もうすっかり乗り慣れてしまった救急車が、夜の闇に白く浮かび上がって私を待っていた。出来る限りの不安を取り除こうと、救急隊員の優しい声が私の身体を包み混んで行く。「人はどうしてこうも優しくなれるのだろう…」蒲田の自宅アパートが火災に遭った時も、消防隊員の胸を打つほどの優しい言葉に涙が流れたほどである。

 救急外来では、その日の当直医2人(研修医1人)が心電図や心エコー、レントゲンなどで心臓の状態を調べ、血液検査の結果を待って入院の有無を決めるが、私の場合は入院必至である。但し今回は今までよりも症状が比較的軽かった為かCCUへは入らず、循環器病棟での治療となった。

 様態が落ち着いた12月9日、一般病棟の18階へ移動。最上階の19階はVIP患者専用の個室病棟で、1日8万円となっている。高層階からの眺めは絶景で、富士山、ディズニーランド、スカイツリー等が望める。

 私は今回の入院で自分が重病人である事を今更ながら再認識する事となった。20代そこそこの若い看護師が言った。「かんべさんは自分が重病である事を自覚してないみたいですね?」「うーん、そうかも知れない…病歴が余りにも長いと病気の感覚が麻痺しちゃうんだよね」「サムスカを15mgも服用している患者さん初めて見ましたよ…」。

 今回の入院で初めて投薬されたのが『サムスカ』であった。これは利尿薬として最もポピュラーな『ラシックス』と比べて若干作用が異なっている。体内の余分な水分やナトリウムを体外へ排泄し、浮腫を解消する訳であるが、カリウムなども一緒に排泄されてしまう為、使い過ぎると『低カリウム血症』を招くと言うリスクを伴うラシックスに対し、単純に水分のみを排泄してくれるのが『サムスカ』である。

 更に腎臓への負担もラシックスに比べると遥かに優しいと言う利点もあるが、効き過ぎると脱水症状を招く為、外来で管理出来る量は7.5mgまでと言う厄介な部分もある。

 いずれにせよ、入院を重ねる毎に回復力が弱まっている事を思い知る結果となった。1日塩分6g、タンパク質40g、1600キロカロリーと言う『腎不全食』を自宅で再現し持続させる難しさを痛感し、心が折れると言うより『心が捻じ曲がってしまった』ような敗北感をこの入院生活中に味わう事となった。

 それでも私は多くの優しい人たちの善意に包まれ、そして生かして貰っている訳で、それに対し私は出来うる限り最大限の努力をして、皆さんの気持ちに応えて行かなくてならないと思っている。更に闘病は果てしなく続くけれども、こんな私とこれからもどうか宜しくお付き合い頂ければ幸いです。