逃亡の果てに芽生えた愛の形。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


プールサイドの人魚姫-平田

 もし、自分の愛する人物が犯罪者だったとしたら、あなたならどのような行動を取るだろうか。選択肢は大きく分けて4つある。

 1.自首するよう促す 2.一緒に逃げる(援助) 3.諦めて別れる 4.心中する これらのどれを選んだとしても間違いではない。

 『愛』にはこれと言った形があるものではなく、それらの全ての行動が必然的に『愛する』事へと結び付いているのである。

 地下鉄サリンなど一連のオウム裁判は、16年という長い時を経て189人が起訴、その内13人に死刑が宣告され事実上幕を閉じたが、事件の核心部分では依然として謎の部分も多く、その動機に至っては解明されぬままであった。

 時の流れは急流の川の如く事件そのものを風化させ、わたしたちの記憶の片隅にも留めようとはしない。置き去りにされた被害者たちの憂いと悲しみだけが時を止め、一歩も動く事はなかったかに見えた。

年明け早々に連日トップニュースで伝えられたのは、平田信(まこと)容疑者の顔顔顔…。日本中の誰もが一度は眼にしたであろう、平田容疑者指名手配のポスターも色褪せて長い年月を物語っていた。

彼の出頭により、記憶の奥深くに眠っていたあの忌まわしい事件が長い時を手繰り寄せ動き始めたのである。

 元オウム真理教幹部、平田信容疑者は目黒公証役場事務長であった仮谷清志さん監禁致死事件で、警察庁から特別手配されていた重要人物である。

 彼が逮捕された事により、一旦幕を閉じたオウム関連の捜査に再び注目が集まり、新たな事実などが判明すれば事件の全容解明に大きく前進する事もあり得るだろう。

 約17年に及ぶその逃亡生活には多くの謎があり、誰もがその一部始終に興味を抱いている。平田一人の力でそれほど長く逃げ切れる訳もなく、当然の事ながら平田の影に逃亡を手助けした人物の姿が少なからず見え隠れしていたが、先日1月10日、平田の後を追う様に大崎警察署に姿を現したのは、元教団看護師の斎藤明美(さいとうあけみ)であった。

 本名を隠し、吉川祥子(よしかわしょうこ)と言う偽名を使い続け、己自身を偽って半ば世捨て人にも似た生活を平田自身の為に捧げていたのであろう。

 「尊敬から芽生えた愛」によって斎藤自身もその呪縛に苦しんでいたに違いない。それにしても偽名で健康保険証などの公的証書が簡単に作成出来てしまうというこの国の杜撰な管理には呆れてしまったが、平田容疑者逮捕についても出頭が相手にされず警察官から門前払いを受けるなど、警察署を3件回るという「たらい回し」には開いた口が塞がらない。

 台湾人留学生殺害で指名手配されていた張容疑者の自殺についても、手錠の意味を殆ど理解していない署員の行動には疑問が残る。

 手錠は犯人逮捕に欠かせないアイテムであるが、犯人の逃走を防ぐ為だけではなく、容疑者の安全確保も含まれているのである。

 広島の刑務所では中国人受刑者が脱走し、いまだに手掛かりもなく捕まっていない…。立て続けに続く警察関係者の不祥事に前途多難な2012年が見え隠れしているのだが…。