私と徳島のつながりは和歌山とのつながりと同じく今ではとても大切な宝になっています。
久しぶりに徳島訪問をしました。というのは今が阿波晩茶の発酵シーズンだからです。
徳島と私のつながりはというと、
東京のイベントに徳島の方が参加してくださっていて、その方が徳島のテーブルコーディネート教室
ON THE TABLE の生徒さんでもいらっしゃったことが、まずその始まりでした。カカオやチョコレートの楽しさを伝えてくださったことで、では徳島でもイベントを!とONTHETABLE主催の
島内陽子先生 が招待してくださり、それからというもの、たびたびカカオのワークショップなどを開催させていただき、温かいお人柄から、さまざまな徳島の魅力的な文化・食を教えていただき、そのたびにたくさんの方との出会い、ご縁をいただいています。
その中でも特に興味を持ったのが阿波晩茶でした。初めて先生のサロンでいただいた阿波晩茶を飲んだときの印象は、まるで「お出汁」のような旨味!そして独特な乳酸発酵をさせたお茶で、限られた地域、上勝町や、相生町でのみ生産されている乳酸発酵の発酵茶で、ずっと興味をもっていました。
3年前になると思いますが、インターナショナルチョコレートアワードのアメリカパートナーでもあるマリセルプレジィラさんの来日に合わせて、彼女の出版記念で徳島ツアーを企画しました。その時に徳島県上勝町の阿波晩茶生産者の高木さんと出会いました。
毎年7月ごろに茶を収穫し、8月に発酵などの工程を経て9月ごろ新茶として極少量が出るお茶。普段の私は7月はペルーなどカカオ産地訪問をしていることが多く、いつもその生産現場を見ることはかなわず、今年、やっとうかがうことができました。
アレンジしていただいた岡田理絵さんにも感謝です。
降水量が多いことで知られる上勝町、1日に1000ミリもの雨が降ることもあるそうです。
山の奥深い場所で、小さな棚田が連なっていてます。
合間には、スダチやゆこう、柚子の畑もあります。段々畑のその段差の部分、そんな狭い急な斜面の場所に小さな茶の木が植わっています。収穫するためにその場所にいくのも大変な生え方をしています。
茶の木は在来種といって、栽培種として品種登録制度で登録されるより以前からその地に生えていた古い茶の木が多く葉は小さいものが多いです。茶の収穫はすべて手作業で行われています。
生産者の高木さん。黄金色のタオルが軒先に干されているのと、彼の指先が黄色く染まっているのを見て「お茶で染まっているのですか?」と聞くとそうだということ。
その仕事、その仕事が現れる手が好きなので思わず手の写真(笑)なぜこのような布があるかというと阿波晩茶は、お漬物のようにお茶を茹でた後、発酵させるために樽の中に入れて重をして
発酵させます。この発酵は嫌気性発酵といって空気に触れないで行われる発酵のため、一番表面の空気に触れる部分は口茶といって、廃棄してしまいます。その廃棄する量をなるべく少なくするために、布で茶葉を覆うのですが、そのゆで汁にお茶の色が染み出し、その色がこのような綺麗な黄色になるようです。この布も売れますよ!と言って笑っていましたが、徳島を代表する藍染めの藍色とこの茶の黄色の色のコントラストは想像しただけでもすごくきれいです。
こんな感じでゆでられたお茶の葉が詰め込まれた樽の上には重しとして石が沢山乗っています。
重さを聞くとだいたい200kgくらいの重しだそう。
カカオの発酵と似ているところは、その上にバナナの葉を敷いているそうです。香りも発酵している時特有の香りがあります。
この後、天日に干して乾燥して、選別をしてできあがります。しかし、ここは、雨の多い地域。
葉を乾燥させるにはだいたい2日くらいかかるそうですが、その間雨が降らないようにと願ってテルテル坊主がたくさんいました。巨大なテルテル坊主、、面白いですね。久しぶりにてるてる坊主を見ました。
庭先の茶の木に実がなっていました。
中に種が入っています。こうしてみるとやっぱり椿科なんだなぁ~と思います。
カカオの発酵はだいたい3日~7日くらいですが、阿波番茶の発酵は約20日だそうです。
作業工程としては、茶葉の収穫⇒茹でる⇒揉捻⇒漬け込み(煮汁だけでの自然発酵)
で、空気中にいる酵母などでの自然発酵という意味では、カカオともよく似ています。
(カカオの発酵でも特に麹菌などなにも添加せず自然発酵です)
また面白いことにこの阿波晩茶、独特な気候風土が生む味わいといってもいいようで上勝町と相生町の阿波晩茶は製造工程はおおまかには同じですが味わいが異なります。また一度他のエリアで生育したお茶の葉をここにもってきて作っても同じ味にはならなかったそう。このごく限られた地域で育った茶葉で、かつ、このエリアの空気中にいる菌類でなければ生み出せない味なのだそうです。カカオやコーヒーも大きく同じ産地であっても生産者によって味わいが違います。私たちには見えない菌類の働きはその土地にいる菌のおかげ。それを実感するようなお話です。
実は高木さんは阿波晩茶の生産者の中ではかなり若手さんになるそうで、上勝町の全人口が約1500人、平均年齢は75歳だそうで、これからこの平均年齢は上がる一方でしょうし、人口は減少していくと思います。そんな中現在いらっしゃる阿波晩茶農家さんはわずか80軒ほどだそうで、そのほとんどが高齢な方であるということは晩茶農家さんも後継者を育てなければ減ってしまうのではないかと危惧してしまいます。なんとか魅力を伝えて後継者が増えていけばいいと思います。
阿波晩茶の歴史も伺いましたがはっきりしたことはわからず、諸説あるようです。
平安末期から約800年くらいの歴史があると言われています。中国からのお茶の伝来と重なります。
一つは弘法大師が伝えたという説。
もう一つは平清盛が体を壊し高熱が出たときに妙薬はないかと従者が中国に渡りこの発酵茶の製法を見てこれならいけると思いその製法を持ち帰ったと。しかしその時にはすでに時遅しで平清盛は亡くなっていて平家は追われ落人たちは山岳地帯へと逃げていきましたので、このエリアや、高地など四国の山間部に発酵茶の製法が残っているのではないかというお話でした。
タイやラオスにはよく似た発酵茶がありますが、もし徐々に伝来したなら、その伝来のルートに同じ製法のお茶があるはずですが、点在して、ぽんっと飛んで徳島にあるというのは、やはり誰かがその地から製法を持ちかえったといえます。
(※阿波晩茶の他に、高地の碁石茶、愛媛の石鎚黒茶が四国にある発酵茶で、他には富山県のバタバタ茶などがあります。)
訪問した8月にはすべての茶摘みは終わっていて、最後のお茶の発酵をしているところだったので、第一弾の発酵や乾燥を終えて、選別を待つ荒茶が段ボールにスタンバイしていました。
荒茶のまま新茶をいただいて帰りました。
乾燥を経たあとのお茶は、発酵樽を嗅いだ香りとはまたかわって、やはり旨味をたっぷり含んだ優しい香りです。
沸騰したお湯の火を止めてから、お茶の葉を「ひとつかみ」入れて蒸らすのが阿波番茶の淹れ方です。あまりけちけちしないでどさっと茶葉を入れるほうがもちろん美味しい。
高木さんにお話しを聞いたあと最後に言われた言葉が印象的でした。
「阿波晩茶は、人間が触っていない葉は1枚もないんです。全部手作業ですから。」
お茶の1枚も無駄にしたくないと思えるお話でした。
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