光あるところには必ず影が存在するもの。
それはとりたてて言うほどのことはないごく自然なことで、
だからこそかけがえもなく大事なこと。
私が影であることは何よりの誇り。
輝ける皇子である若と分かちがたく共にあるということなのだから。
若という我々ヤオ族の未来を照らす光を曇らせることがないよう
常に側に仕えられるなら、
蔭にひそみ闇に身をおくことなど何ほどのものだろう。
いつも手元に携えているクナイ。
鍛えられた鉄はあえて鈍色にくすませてある。
それは輝く光を守る者である私そのものだ。
若の愛刀がそのいわれを隠すべく鞘をはずしたまま布で巻いて
提げられていてさえ、見る目を持った者には刃の冷たく清かな光に
その持ち主のただならぬ素性を知らせてしまうように。
だから、私は今日も砥いだクナイの刃に煤を塗る。
闇にひそみ我らを害する者、阻む者を排除すべく
構えた刃がわずかな月の光にさえきらめくことがないように。
あとがき
拍手ssの入れ替えをしたので、旧作をこちらにもってきました。
もうひとつのほうは、時期を待ってupします。
クナイの刃に煤を塗るのは、いろいろ調べたときに見つけました。
ランファンの清冽さが伝わればいいなと思います。