真の王の存在を否定した男は死んだ。
王や神にすがろうとする人間の弱さに憤り、夜叉の如く斬り捨て続けて。
その身は人であっただろうに、ホムンクルスとして死んだ。
そのくせ、人間の妻への絶対的な信頼を口にしながら。
矛盾の嵐のなかを剣をふりかざし突き進んで生き、死んでいったこの男を
私は肯定する気はない。
若は、若こそが真の王であるのだから。
心は既に決まっている。
あの存在が若かグリードかなどと悩むことは不要だ。
若の姿で粗野で偉そうな口をきくあの存在は癪に障るが、
若とグリードが不可分ならば、私のとるべき道はひとつ。
今度こそ側を離れずお仕えするだけだ。
常にお側にあってその身を守り続ける。
たとえそれが多数の魂を内包した、弾丸の雨を受けても傷つかぬような
常人ならざる身であっても。
それゆえ死ぬことのない、同じ時を過ごすには私の持つ命では短すぎる
絶対的な孤独を約束されたものであるからこそ。
寄り添いきれぬことはわかっていても、いつまでも傍に。
そして、出来得ることならば
この不可思議な事象を起こした何ものかへと祈ろう。
やがて私の命が尽きる時には
もう動くことのない肉体を離れた私の魂が
若のなかの賢者の石へと宿れるように、と。
あとがき:ガンガン4月号のあの展開を読んで書いたものです。
きっとランファンはこういう腹の括り方をするだろうと思って
書きました。
悲壮だけど前向きな決意で進んでいく子だと思います。
その先にきっとしあわせがありますように。