ファントム・ペイン | 風紋

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鋼の錬金術師ファンの雑文ブログ



  リンとランファンに愛が偏っています

「エドワード案内しロ、若のところヘ!」
「行かせられるわけねーだろ、今のおメーの状態で。」
エドはランファンの腕を必死で押さえつけていた。


「振り払えねえだろ」
乱れた髪の間からの突き刺すような視線を受けながら力を加える。
「こうすれば」
つかんだ腕を斜めになぎ倒すようにするとランファンの上体が傾き
バランスを失った。
「な、こんなんで何ができるっていうんだよ。そのまんま寝とけ。」
「・・・くそッ!何でこれくらいのことデ・・・」
「ったりめーだ。左腕で身体が支えられなきゃ、これくらいわけがない。」


―――てのひらに残るランファンの手首の感触。驚くほど熱かった。
すげえ熱があるんだろうに、何でそこまでするんだよ・・・。


「腕が、まだあるような気がするんだろ。」
うなだれて顔をそむけていたランファンの肩がぴくりと反応する。
「おっかしいよな。なくしたはずの腕が痛いんだぜ。もうないのによ。」

「・・・そうカ。」
静かに体を起こしたランファンの顔にはかすかに涙の跡が残っていたが、
その声音は落ち着きを取り戻していた。
「そうダ、エドワードはこの痛みを知っているんだナ。」
「ファントム・ペイン。幻肢痛って奴だ。脳がまだ腕を覚えていて
ないはずの痛みまで届けてくるっつう、迷惑な現象だよ。」
「ファントム・ペイン・・・。」
「痛みがある間はなるべくリンのことは頭から追い出して休めよ。」
「痛みがある限り、絶対忘れないかラ。
自分の失態と賢者の石の為に体を投げ出した若の覚悟ヲ。
私ハ、失くした腕の指先で若の魂をつかまえているんだト。」


「あのバカ皇子の魂なら、捕まえておかないとふらふらして
また行き倒れてそうだもんな。」
「!! 若の悪口を言うナ!」
ランファンの拳が顔の前で受けたエドの掌でバシッと鳴った。
「ははっ、やっぱりそうこなくっちゃな。」
「若を侮辱する奴を叩きのめすのは当然ダ!」
「よし、続きはおメーが腕つけてからだ。
今日のところは俺の1ポイント先取ってことにしといてやる。」
「この野郎、余裕かましやがっテ。
利子つけてとり返ス。絶対潰してやるからナ!」
「そんだけ吠えられるんなら勝負の日は近いな。じゃ俺行くよ。」


「エドワード」
「なんだ?」
「ありがとウ」
「・・・な、何だよ急に。俺は別に・・・」
「言葉を教えてくれた礼ダ。わけのわからない痛みの名前を知っテ
この痛みとたたかう意味がわかっタ。」
「・・・そうか。じゃな。」


―――ちくしょう、何なんだよあの女。
無茶ばかりして、何でもかんでも若、若で、憎まれ口ばかりきくくせに
いきなり「ありがとウ」なんて。
調子狂うじゃねーかよ。



「エドラン祭り」に投稿しました。

タイトルだけはずっと前から頭にあったのですが、絵チャのあとで

芦屋さまの絵板で描かれてた絵とつなげられることに気づき

なんとか仕上げました。



今日から実家に帰省。

これから出発。なんとか間に合った感じです。

あと、オフ会参加します!少し遅れてしか行けないけど。

皆様にお会いできるの、楽しみだ~!