オーガストウォーズ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

オーガストウォーズ(ネタバレ)

オーガストウォーズ

三角絞めでつかまえて-オーガストウォーズ

原題:Avgust. Vosmogo
2012/ロシア 上映時間132分
監督・撮影・脚本:ジャニック・フェイジエフ
撮影:セルゲイ・トロフィモフ
音響:ボブ・ビーマー
編集:デニス・ヴァークラー
出演:スヴェトラーナ・イワノーワ、マクシム・マトヴェーエフ、エゴール・ベロエフ、アルチョム・ファディエフ
パンフレット:★★★★(500円/コラムが2本とも素晴らしくて、特に石井健夫さんが熱い!)
(あらすじ)
2008年8月8日。5歳のチョーマ(アルチョム・ファディエフ)は、別居中の父親に会うため単身モスクワから南オセチアを訪れていた。久々の対面もつかの間、突然侵攻してきたグルジア軍の攻撃により父親は亡くなってしまう。一方、母のクセーニア(スヴェトラーナ・イワノーワ)は、チョーマが戦闘の最中に一人取り残されたことを知り、南オセチアへと向かう。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




80点


本来なら違う映画の感想をアップする予定だったんですけど、今週末で都内の上映が終わってしまうので、急遽更新しておきますね。月号は忘れたんですが、昨年に発売された映画秘宝の中で「オーガスト・エイス」として紹介された記事を読んだ時に「面白そうだな~」と思いつつも、その存在ごとすっかり忘れてまして。で、先々月に発売された「映画秘宝2013年09月号」の中で、ギレルモ・デル・トロ監督の「パシフィック・リム」の記事と併せて「ロシア産ロボット映画だー!ヘ(゚∀゚*)ノ」ってムードで紹介されていた→あらためて興味を抱いたので、映画の詳細は入れないまま、渋谷TOEIで観てきました。号泣しましたYO!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!


渋谷TOEI割引サービスが少ない映画館。前売り券を買っておけば… (`Δ´;) ヌウ
三角絞めでつかまえて-渋谷TOEI

記事の切り抜きも貼ってありましたよ。「軍事研究」の紹介記事もあったり。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜き


開始早々、「コスモボーイ」なんて某ロバート・ロドリゲス監督作を連想させる“ジャリ向けCGアクション”が繰り広げられまして。その後も5歳のチョーマが現実逃避すべく妄想を始めると、日常生活にロボットが出てくるんです…。ううむ、こういうのも別に嫌いじゃないけどさ、軍隊とロボットの戦闘映画を勝手に期待してた僕的には「失敗したかも… (´・ω・`)」と若干ゲンナリいたしました。


冒頭、シーン自体は悪くないんですけど、「こういう映画か…」と少し萎えたのです。
三角絞めでつかまえて-少年の脳内妄想


さらに、若きシングルマザーのクセーニアが交際相手とバカンスを過ごすため、南オセチアにいる別れた父親ザウール(エゴール・ベロエフ)にチョーマを預ける預けないでグダグダしたりとか、恋人とケンカ別れする際に「恋人たちの予感」フェイク・オーガズムを再現したりするのも(DVDがテーブルに置いてありましたな)、結構どうでも良くて。クセーニアがチョーマを引き取りに向かうころには、「スゲーつまらないかも… ('A`)」と心底ガッカリしてたんです…がしかし! チョーマがいる村に向かうバスに突然ミサイルが直撃するあたりから、加速度的に面白くなるんだからビックリですよ。

戦闘&爆発描写がとにかくド迫力なんです。ロシア軍が全面協力して本物の兵器&兵士が参加したそうですけど、戦場のシーンの臨場感が凄まじくて(しかも長い!)、普段はあまりミリタリー系に興味がない僕でもマジで痺れまくりでした。もうね、お話とか関係なく、この“超リアルな戦場”を体感するだけでも1800円の価値はあるんじゃないでしょうか。

しかも、そこにチョーマの妄想要素が絡んでくるのが素晴らしい。「自分に厳しい現実をロボットに置きかえて逃避する」という、要は「パンズ・ラビリンス」的な演出なんですが、妄想とリアルが交錯してスゲー面白いのです。特に中盤、チョーマの目の前で父親&祖父母が戦車の砲撃に吹き飛ばされる時のカッコ良くも無惨なビジュアルといったら!ヽ(TДT)ノ 冒頭で「『コスモボーイ』ってなんだよ ┐(´ー`)┌ バカバカシイ」と、少し“ヤレヤレ顔”をした自分が恥ずかしくなりましたよ…。

怯えるチョーマの目には、戦車などが凶悪なロボットに見えるのです。
三角絞めでつかまえて-5歳のチョーマ

だから、このシーンも妄想なんですけど、これはこれでスゲー盛り上がるというね。
三角絞めでつかまえて-ロボットが襲撃!


で、何よりも何よりも僕が胸を打たれたのが主人公のクセーニア! まぁ、登場時から“子ども想い”ではあるものの、「アタシだって、まだ恋をしたいの… (´Д`;し」的な“若さ”もありましてね。そのせいで、愛する息子を危険な目に遭わせてしまうワケですが、彼女がそのことを海より深く後悔しつつ、子どものためにあらゆる手段を駆使して“地獄のような戦場”を必死に駆け巡る姿は、戦場描写が笑っちゃうほど壮絶で容赦ないだけに、涙なしでは観られなかったです… (ノω・、) グスン


シングルマザー、クセーニア。恋人とバカンスに行くハズが…。
三角絞めでつかまえて-シングルマザー・クセーニア

気が付けば戦場の真っ只中! でも、“母の愛”は負けないのです。
三角絞めでつかまえて-戦場の真っ只中へ!


映画終盤、グルジア軍の占領地域に単独で潜入して車を奪い、カーチェイスまでやっちゃうのはどうかと思う人もいるかもしれませんが、僕的には「母は強し、ですな (ノ∀T) サスガ」とスムースに納得。もともと“健気なシングルマザー描写”に弱いのもあって、彼女のすべてが「ストライク!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン」って感じでしたね…(しみじみ)。


盗んだ車両で巨大ロボット(実は戦車)から逃げるシーンは、超ハラハラいたしました。
三角絞めでつかまえて-ロボットから逃げろ!


唯一気になったのが、政治的な部分。基本的に国際情勢なんてサッパリな僕ですけれども、話が進むにつれて、「あ、これって、『5デイズ』で扱った南オセチア紛争だ!Σ(゚д゚;)」ってことには気付きまして。アメリカがグルジア目線で作った「5デイズ」がロシア軍を残虐に描いていたように、この映画もグルジア側を“悪”として扱ってて(ラスト、主人公の母子を助ける兵士も出て来ますがー)、戦争を片方の側から描くことの“微妙な居心地の悪さ”は感じたり(仕方ないけど)。

ちなみに、一応、ラストの展開を書いておくと、母子は見事に助かって、チョーマもなんとなく妄想から卒業。その後、戦場でクセーニアを何度もサポートしてくれた兵士リョーハ(マクシム・マトヴェーエフ)が家に電話を掛けてきて、「あらあら、恋の予感? (´∀`) ンモウ」って感じで終わってました。


リョーハ役のマクシム・マトヴェーエフは結構カッコ良くて、“ロシアのマイケル・ビーン”って印象でしたよ(古い例え)。
三角絞めでつかまえて-兵士リョーハ(マクシム・マトヴェーエフ)


ということで、“ロシア産ロボット映画”って感じではないんですけど、“シングルマザーの地獄巡り映画”としては最高でしたよ… ( ;∀;) イイエイガダナー 興味がある人はぜひ観てほしいんですが(特にミリオタの人は必見!)、都内の公開は今週の金曜日までで、さらに上映時間も限られているので気をつけて!




アメリカが南オセチア紛争をグルジア側の視点で描いた作品。僕の感想はこんな感じ



南オセチア紛争の背景を知るのに良い新書だそうな。