セデック・バレ 第二部 虹の橋(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

セデック・バレ 第二部 虹の橋(ネタバレ)

セデック・バレ 第二部 虹の橋

三角絞めでつかまえて-セデック・バレ 彩虹橋

原題:賽克・巴 彩虹橋/Warriors of the Rainbow II: Rainbow Bridge
2011/台湾 上映時間132分
監督・脚本・編集:ウェイ・ダーション
製作:ジョン・ウー、テレンス・チャン、ホァン・ジーミン
撮影:チン・ディンチャン
プロダクションデザイン:種田陽平
美術プロデューサー:赤塚佳仁
音楽:リッキー・ホー
アクション監督:ヤン・ギルヨン、シム・ジェウォン
出演:リン・チンタイ、ダーチン、安藤政信、マー・ジーシアン、ビビアン・スー、木村祐一、ルオ・メイリン、ランディ・ウェン、河原さぶ、シュー・イーファン、スー・ダー、春田純一、ティエン・ジュン、リン・ユアンジエ、松本実、田中千絵
パンフレット:★★★(800円/第一部&第二部をまとめた内容。なかなか読み応えアリ)
(あらすじ)
台湾の山岳地帯。セデック族の襲撃により、日本人は女子どもの区別なく命を落とした。この事件に対し日本軍が報復を始めるも、険しい山中での戦いに悪戦苦闘する。一方、セデック族の女性たちは食料が不足することを案じ、集団自決するという結論に達する。やがて、武力に勝る日本軍を前にセデック族の戦士たちは後退。それでも、民族の誇りのために戦いに身を投じていく。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




90点


※今回の記事は、「ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~」のネタバレも書かれているので、知りたくない人は気をつけて!

先週、「第一部 太陽旗」を観たワケですが、「日本人が虐殺されまくる(女性や子どもまで!)」という、超ダウナーな終わり方でして。一応、劇中でモーナが父親の幻影と話したり歌ったりして、誇り高きセデック族の葛藤を強調してたけどさ、あのラストの展開が凄惨すぎて彼らに全然乗れないし、だからといって、日本側だってイヤな感じだし…。なんとなく面倒くさくなって、第二部を観るのが億劫になってたんですよ。

というか、最近は「ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~」「ラストスタンド」で心が満たされてまして (´∀`) ウフフ もうね、「ハッシュパピー」はまったく他人事と思えない作品で、最後、お父さんが死んじゃうシーンでは、まるで「がんばれ元気」を読んだかのように号泣。後から思い出すだけで涙が滲んでくるほどであり、いくらフィクションと言えど、主人公の少女にはマジで幸せになってほしいというか。「いっそ孤児となった彼女をシュワルツェネッガーが引き取る→後の『コマンドー』である」的な展開にならないかーー? そんなことばかり妄想してると、2回目の「ハッシュパピー」or5回目の「ラストスタンド」を観に行きたい気分なのに、なぜわざわざ日本軍と台湾原住民の辛気くさい殺し合い映画を観なければならないのかと思ったりもするというね…。


ハッシュパピーと「コマンドー」の娘を比べてみると髪形が似てなくもないが、だからどうしたと言わざるを得ない(なにこの文章)。
三角絞めでつかまえて-ハッシュパピーとコマンドーの娘


とは言いつつも、前売り券はもったいないし、ムービーウォッチメンの監視対象にもなったので、いそいそと吉祥寺バウスシアターに足を運んで来たんですが…。戦闘描写が超素晴らしかったですYO!ヽ(`Д´)ノ


この残った前売り券を使うため…。
三角絞めでつかまえて-チケットはあと1回

やってきたのは吉祥寺バウスシアター! サービスデーが充実してる素敵な映画館なのデス。
三角絞めでつかまえて-吉祥寺バウスシアター

記事の切り抜きとサイン入りポスターが展示されてました。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜きとサイン入りポスター


映画は“前回のダイジェスト”から始まって、これはこれで非常に話がわかりやすいというか、「第二部から観るのも意外とアリなのでは?」な~んて思ったりしたのはどうでも良いでガース!(゚∀゚し 話は霧社事件の史実通りに進行するので、セデック族の人たちが自殺したり、毒ガス攻撃で追い詰められたりと(ここはモロにベトナム戦争っぽい)、悲惨な方向にライク・ア・ローリングストーンなワケですけど…。それにも増して、セデック族を中心とした“反旗を翻した原住民300人”の戦闘振りが最高なんです!ヘ(゚∀゚*)ノ ホエホエ!


戦場を走るモーナ&セデック族のみなさん。超カッコ良かったです。
三角絞めでつかまえて-モーナ、突撃!


「風になれ!ヽ(`Д´)ノ」と、山の中からのゲリラ戦で日本人をことごとく退けていく様は、まさに「アポカリプト」風味で「300〈スリーハンドレッド〉」「アバター」であり、「第一部」では乗れなかったハートが一気にバーニング。アクション監督のヤン・ギルヨン&シム・ジェウォンによる山中の戦場描写はド迫力で、「こんな絶壁で戦闘して大丈夫なの!? (゚д゚;)」と観客が気遣ってしまうほどリスキーな場面もあったりするし、役者&スタッフはスゲー頑張ったんだなぁと感心いたしました。


関係ありませんが、鈴木みのる選手の入場曲を貼っておきますね↓ 二番のサビは「駆けてゆけ!」なので、会場で歌う時は注意!




その“燃え”が頂点に達するのが、日本軍の迫撃砲攻撃を受けて、森が燃えてしまう場面。もう日本軍との火力の差はいかんともしがたいムードがプンプン漂っており、観客的には「これでセデック族も終わりですな… (´・ω・`) シカタナシ」な~んて思っていたら! なんとモーナを先頭に炎を乗り越えてハードな特攻を開始! 当然ながら味方もバタバタと死にながらも、後退のネジを外して前のめりに日本軍を蹴散らしていく姿は感動的ですらあって。特に、ボアルン社の頭目による“死に際の砲弾スローイン”や、少年戦士バワン(リン・ユアンジェ)の“敵を道連れにした谷底へのネックブリーカードロップ”には胸を掴まれましたね…(しみじみ)。


右にいるのがバワン。少年ながら大活躍してました。
三角絞めでつかまえて-戦場を駆け抜けろ!


さらに唖然としたのが吊り橋でのやりとり。ハードな戦闘の果て、モーナは吊り橋に辿り着き、向こう岸にいる日本軍のボス・鎌田弥彦(河原さぶ)と相対するんですけど、迫撃砲などに狙われてて、セデック族は絶体絶命になるんです。ところが、モーナったら冷静に息子のタダオ(ティエン・ジュン)に「砲弾を避けるには?」なんて聞いちゃって、タダオもまた「オレが盾になる!」と無茶にも程がある台詞を吐いて先頭に立ち、全員で突撃開始しちゃうから超ビックリ! 結局、砲弾で橋ごと吹き飛ばされつつも、その直後、なぜかモーナたちが無事だったりと、よくわからない展開になってましたが、「セデック族、どんだけ勇ましいんだ!Σ(゚д゚;)」と度肝を抜かれましたよ。


タダオに松田さん並みのパワーがあれば、砲弾に吹き飛ばされずに済んだのかもしれませんな…(「ブラックエンジェルズ」第7巻より)。
三角絞めでつかまえて-バズーカの砲弾をキャッチする松田さん


その後の展開を適当に書くと、日本人に捕まることを恐れたモーナが姿を消したり(後に死体で発見)、タダオたちが自殺したり、鎌田弥彦がセデック族の死に様に日本の武士道を重ね合わせてしみじみしたり、モーナ&死んだセデック族のみなさんで虹の橋を渡る映像が流れたりしまして。「プスクニから男と女が生まれて~」なんてセデック族のルーツの民話が流れて、終わってました。

いや、この第二部も最初はとにかくイヤ~なムード。日本人とセデック族の狭間で苦悩しまくった花岡一郎(ダッキス・ノービン)が妻&我が子を手に掛けるところとか超キツくてゲンナリしてたんですよ。ところが、ハードな戦闘描写がゴリゴリ繰り広げられることにより、無理矢理テンションを上げられちゃって、どう考えても無惨な話なのに、見終わった後は「セデックの奴ら、頑張ってたなぁ (´∀`) ヤルジャネーカ」と、結構爽やかな印象だったりするという奇跡。第一部が終わった後、すぐに第二部を観れば良かったと、少し反省いたしました(3回目の「ラストスタンド」も楽しかったんですけどね)。

結局、第一部と合わせた感想になっちゃうんですけど、非常に興味深かったのが、セデック族と日本人は“死後の魂が行く(と思ってる)場所”が違うということ。モーナが花岡一郎に対して「死んだら日本の神社に入るのか?」と問うシーンは象徴的で、信仰まで無理矢理押し付けちゃったら、そりゃあ相容れませんわな…。「野蛮」ってのは、決して文明の発達レベルの話ではなく、他者を踏みにじる行為なんだなぁと、あらためて思ったり。


どっちつかずの花岡一郎に、モーナのキツ~イ質問。こういうのって、スゲー面倒くさいですよね…。
三角絞めでつかまえて-死後はどっち?


不満だったのは、ラストの戦闘後の展開がダラダラと長く感じたのと、セデック族が虹を渡る描写があったこと。彼らは「死後、勇者は虹を渡る」という信仰の下、少人数で日本軍に立ち向かったワケですけど、それは決して100パーセントの美談ではないじゃないですか。それまでは、部族の女性が出草(首狩り)を非難したりとか、ある程度のバランスをとっていただけに、なんか満足げな顔で虹を渡る姿を見せられちゃうと、「モーナたちの行動はまったく間違ってなかった」ってことになるというか。僕はせめて“匂わす程度”で止めてほしかったので、正直、スゲー蛇足に見えて腹が立ったんですが…って、どうでも良いですカネー (・ε・)

ってことで、実際にあった凄惨な事件を扱ってて、イヤ~な日本軍描写もありましたけど、最終的には非常に面白い映画でしたヨ (・∀・) なんか映画も観てないくせに危険だとか語るバカな人がいて驚きましたけど、この程度は全然反日じゃないというか、むしろ“本当にあったアバター話”というか、日本人的には「こういうことはもうしないようにしようね (*・ω・)(・ω・*) ネー」って程度に受け止めれば良いんじゃないかしらん。トータルすると4時間半を越える長さだけど、いろいろ考えさせられる上に素敵なアクションが観られる良い作品なので、ぜひ劇場に行ってみてくださいな~。




ジェームズ・キャメロン監督作。“霧社事件が起きなかった「セデック・バレ」”と言える…かな。
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メル・ギブソン監督作。文明側の野蛮さが際立っております。
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大好きな映画ですが、フルチンで戦う原作コミックの方がもっと好きだったり。
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「セデック・バレ」と霧社事件についての記事は読み応えアリ。ただ、好みじゃない記事&文章も多かったです…。
三角絞めでつかまえて-世界映画事件史
別冊映画秘宝惨劇の世界映画事件史 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)


タメになりそうなので、貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-抗日・霧社事件の歴史
抗日霧社事件の歴史―日本人の大量殺害はなぜ、おこったか (史実シリーズ)


ウェイ・ダーション監督が読んで映画製作を決心したという漫画。amazonでは取り扱ってないそうです…(5/10現在)。
三角絞めでつかまえて-霧社事件
霧社事件―台湾先住民(タイヤル族)、日本軍への魂の闘い