隣の家の少女(ネタバレ)/キツそうだから観たくなかった映画特集 | 三角絞めでつかまえて2

隣の家の少女(ネタバレ)/キツそうだから観たくなかった映画特集

隣の家の少女

$三角絞めでつかまえて-隣の家の少女

原題:THE GIRL NEXT DOOR
2007/アメリカ 上映時間91分
監督:グレゴリー・M・ウィルソン
原作:ジャック・ケッチャム
出演:ブライス・オーファース、ダニエル・マンチ、ブランチ・ベイカー、グレアム・パトリック・マーティン、ウィリアム・アザートン、ベンジャミン・ロス・カプラン、マデリン・テイラー、オースティン・ウィリアムズ、グラント・ショウ、キャサリン・メアリー・スチュワート
(あらすじ)
1958年、小さな街で暮らすデイヴィッド(ダニエル・マンチ)の隣家に、ニューヨークから姉妹が越して来る。二人は家庭の事情で叔母(ブランチ・ベイカー)の所に預けられており、デイヴィッドはすぐに姉のメグ(ブライス・オーファース)と打ち解ける。だが、次第に彼はメグが叔母とその息子たちに虐待されていると気付き始め……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




50点


※今回の更新は不快になる表現が多いかもしれないので要注意です。

「キツそうだから観たくなかった映画特集」では基本的にDVDになった作品を対象としていましたが、この「隣の家の少女」も非常にキツそうで観たくなかったので、“この特集の1本”として感想を書かせていただきます。

僕は基本的に“一方的に拷問or陵辱されているシーン”や“女性が酷い目に遭っているシーン”が苦手なので、少女が陵辱されるこの映画は絶対に観たくなかったんですよ。ただ、僕が大好きな「深町秋生のベテラン日記」「真魚八重子 アヌトパンナ・アニルッダ」などのブログで紹介されていたので、かなり気になってしまって。「せっかく『キツそうだから観たくなかった映画特集』を始めたのだから、興味のある作品から逃げたくない」という気持ちもあり、覚悟を決めてシアターN渋谷に行ってきました。

まぁ、「覚悟を決めて」なんて言っても、正直、かなりビビッてまして。英語の原題「THE GIRL NEXT DOOR」が出たら、「そういえばガルネクって『デビューから3カ月連続でシングルをリリースして3作連続でオリコンチャート第3位を記録したのは男女混合ユニット初!』みたいなムリヤリな報道をされてたっけ」とか、「確か『24 -TWENTY FOUR』のキム・バウアー役の人が主演の『ガール・ネクスト・ドア』って映画があったような…」とか、ムリヤリ気を紛らわせてみたり…。って、わざわざ映画を観に来た意味がゼロですな。

映画は、デイヴィッドというオッサンの「本当の痛みを知っているか?」「あの時から私の人生は変わった」的な独白から始まって。で、あらすじに書いてある感じの回想シーンに入って、メグに対する叔母ルース&クソガキどもの陵辱が始まるワケですが、こんな感じでした↓

地下室に監禁する
目隠し&猿ぐつわ状態で両手をローブで縛って吊す(手首と肩が痛い!)
その状態のまま全裸にする
ナイフで体を切る
タバコの火を押しつける
サンドバックのように殴る蹴る
ガキにレイプさせる
熱く焼けた針で腹に「I FUCK FUCK ME」と文字を書く
バーナーでアソコを焼く


もうね、怒りで気が狂いそうでしたよ。そういう意味では良く出来ている映画なのかもしれません。ルース役のブランチ・ベイカー(母親はキャロル・ベイカー)なんて本当にイヤな女にしか見えなくて、逆にスゴいと思ったり。

ただ、原作はどうなっているのか知りませんが、最悪な話だと思いました。いや、「残虐だから」とかじゃなくて、「偉そうなこと言ってんじゃねーよ」と思ってしまうというか。

この話は「シルヴィア・ライケンス事件」が元になっているそうなんですが(詳しくはWikipediaを参照してね)、実際の事件にはこのデイヴィッドの元になった人物はいなかったりして。この映画のデイヴィッドは、積極的に虐待には参加せず、親にも言おうとしたりするもののタイミングが悪くて伝えられず(夜中、寝ている母親を起こそうとするけど起きなかったので断念)、メグを何とか助けようとして逆に監禁されて、最後、火事を起こすことで警察がやってきて助かるんですが(その直前、地下室に降りてきたルースを松葉杖で撲殺)、都合が良いキャラクターにしか見えませんでした。

もちろん“傍観していたことも罪”だし、そのことに罪悪感を抱くのは分かるんですけど、なんかデイヴィッドに対する免罪符が多くて全然乗れないんですよ。結局、最後の独白なんて「無力だった僕ったら、今でも闇を抱えているんですよ、フフフ」といった感じで自己憐憫状態で自分に酔っているだけにしか見えないというか、内心は「でも、僕は奴らとは違って彼女を逃がそうとしたんだけどね(苦笑)」とか思ってそうというか。

劇中のデイヴィッドはずっと良心が残っている上に、あんな虐待を見逃すほどの精神的な縛りがないように見えるから、「じゃあ、さっさと通報しろよ」「それが怖いなら親に話せよ」としか思えないんですよ。でも、それができないから「単にバカで薄情なガキ」にしか見えないし、そんな奴が後からしたり顔で「痛みが~」なんて言っても「ふざけたこと言ってんじゃねーよ」としか思えない。だから、僕的にはせめて加害者家族をもっと荒ませるとか、デイヴィッド自身も虐待にもっと加担させるとか、デイヴィッドの家族も荒れてるといった、「通報するのは無理」的な心理状況を作って欲しかったですね。そうすればもう少し納得できたかもしれません。そういえば「デイヴィッドが最後までメグに好かれたままだった」ってのもちょっと気持ち悪かったなぁ…。

まぁ、この手のジャンル映画として楽しむなら良い映画だと思います。「“世界は驚くほど残酷”ということを知る」という意味で、こういう映画を観るのも良いのかもしれません(その前に分かれよって話ではありますが)。ただ、僕的にはなんか「知った風な感じ」がして、いけ好かない映画でした…。原作はどうなっているのか気になりますが、あまり読む気はしないなぁ。

ちなみにパンフレットは500円で、たぶん関係者用のプレスをそのまま売っている感じ。深町秋生さんのジャック・ケッチャム解説も実にタメになりましたが(たぶん僕はジャック・ケッチャムという作家を好きになれないと心から自覚)、「心惹かれる残酷な不条理」という真魚八重子さんの原稿が実に素晴らしかったです。「この手の残酷な映画や話をなぜ人は観たがるのか?」ということについて、「“人間”というものに関心があるからこそ、恐怖や暴力を直視せずにはいられない」という感じの分析をされていて、かなり納得させられました(確か宇多丸師匠も同じようなことを言っていた記憶)。うぐいす祥子さんのコミックも実に和むので、興味がある人は一読をオススメしますぞ。




原作小説です。このブログで解説されていますが、「この作品を一言で表すなら『読むレイプ』」というのは名文だと思ったり。



「ガキどもの暴力がエスカレート」という点では、この映画を思い出したり。原作の方が好きかなぁ。