ザ・コーヴ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ザ・コーヴ(ネタバレ)

ザ・コーヴ

ザ・コーヴ

原題:THE COVE
2009/アメリカ 上映時間91分
監督:ルイ・シホヨス
脚本:マーク・モンロー
出演:ルイ・シホヨス、リック・オバリー、ヘイデン・パネッティーア、イザベル・ルーカス
(あらすじ)
美しい海岸線が広がる和歌山県太地町にある小さな入り江では、毎年9月になるとひそかにイルカ漁が行われていた。街を挙げて立入禁止にするほどの厳戒態勢の中、撮影隊はカメラを持ち込み、その実態を隠し撮りで撮影。そこには血で真っ赤に染まる海と叫び声を上げる大量のイルカたちの姿があった。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




15点


先月上旬、こんな底の浅い日記を書いたりもしましたが、微妙に世間のほとぼりが冷めてきまして。いつの間にやら都内でも渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映されていたので、観てきました。感想は…「気持ち悪いなぁ」と。ちなみに僕は“日本文化やら動物保護やらの知識があまりない上に今後も別に勉強する気はあまりない人”ということで、正直、そんなに大したことは書けないし書くつもりもないので、ガチで興味がある人は、映画評論家の町山智浩さんの「キラ★キラ」とか、「映画秘宝2010年08月号」の特集をチェックしてみると良いですぞ。

内容的には「正義の活動家たちが和歌山県太地町で秘密裏に行われているイルカ漁の実態を暴く!」って感じ。クライマックスでは隠し撮りした“イルカ虐殺”の様子が流れて(海面が真っ赤に!)、その様子を流す液晶テレビを首からぶら下げたリック・オバリーが、国際捕鯨委員会(IWC)の会場に乗り込んでウロウロしたり、渋谷の交差点で立ったりして、「1人でも多くの人に興味を持ってもらいたい」みたいなことを言って終わってました。

面白かったところを挙げると、「映画秘宝2010年08月号」などでもちょっと褒めていましたが、隠し撮りをするために多額の資金を投入して機材を揃えたり設置したりするところはスパイ映画風で良いですな(「オーシャンズ11」についての発言もあったような)。男子的には“その道のプロフェッショナル”を集める描写もやっぱりグッときちゃいますよ。あと、イルカ、メチャメチャ可愛かったです。愛らしく美しい姿を見たり、「キュウキュウ」という鳴き声を聞いたりすると、単純な僕的には「イルカを殺しちゃダメ絶対!」「おのれ日本人め!」って気がしなくもなかったりして(監督の狙い通り)。

ただ、それよりもリック・オバリーとかの“正義の味方側”が気持ち悪くて…。なんか自分の正義を押しつける感が強すぎて、全然乗れないんですよ。例えば、「イルカって可愛いよね」「イルカって自己認識力があって頭良いんだよ」「イルカとは目を見て通じ合える」「イルカは人間を助けてくれる」とかイルカの良さを散々電波気味に主張してたくせに、「じゃあ、なんで牛は食べてもいいの?」と聞かれた途端、「イルカ肉には水銀が含まれてて、食べると危険なんだ!」とか言い出すから、「ウソだぁ~( ・∀・)」って感じがプンプンするというか。この時点で、スゲー冷めちゃいましたよ。

劇中でのそれまでの行動から、やっぱり「もしイルカ肉に水銀が含まれていなかったとしても、コイツらは間違いなくイルカ漁には反対なんだろうな」って思っちゃうんですよね。「水銀が入ってて心配」って100パーセントの戯言にしか聞こえなくて、むしろ“日本人のことなんか1ミリも頭にないくせに心配ヅラをしてるだけ”に見えて、ムカついてくるというか。よくよく考えると、水銀問題自体は結構ガチで重要な話のハズなんですが、それが本音を隠すための問題提起に見えちゃってるのは失敗じゃないですかね。どんなに主張が狂っていても、“筋が通る感”があればまだグッとくると思うんですが…。僕は牛肉が何よりも大好きな男ですが(一番好きな食べ物はステーキ)、いっそ「生き物を殺して食うな!」的な主張の方が断然支持できたんじゃないかと。リック・オバリーみたいな奴、僕は大嫌いです。

そもそも太地町の漁が秘密裏に行われていることだって、どう見てもヒステリックに妨害してくる外国人のせいなワケでしょ。映画を観る限り、確かに太地町の人たちはちょっとヤクザ風or嫌な感じに見えちゃってるけど、地域に根ざして真面目に生きているワケでもない奴らがズカズカと入り込んできて偉そうなことを押しつけてきたら、そりゃ嫌な態度も取りますわな。劇中では、ナレーションで多少「彼らはこう言ってる」みたいに触れるだけで、漁師側の主張を全然取り上げないので、それが逆にこの映画の胡散臭さに拍車をかけている気がしました。

「日本人のほとんどが知らないから日本文化じゃない」という指摘もどうかと。確かに僕も知らなかったけど、聞いたら聞いたで「あら、日本にそんな文化があったんですか」「イルカって美味しいの?」程度のリアクションというか。多数決で文化かどうかを決めるのは非常に乱暴じゃないですか。最後、「イルカが虐殺されている様子」を首から吊した液晶テレビで流しまくって「残酷でしょ?」って訴えてたけど、あんなの「いのちの食べかた」を流したって同じような反応が返ってくると思うんですが…(「安楽死させてる」とか言うけど、命をモノ扱いすることだって十分酷い話)。

ただ、「隠し撮りがダメ!」とかは全然思わないです。取り上げられた側からすると「そりゃ嫌だろうな」とは思いますけど、そうじゃないと「ビルマVJ」といった作品は絶対成立しないワケで。モザイクをかけるのは当然だし、訴えても良いだろうし、そこに違法行為があったならそれ相応の処罰を受けるべきとは思いますけど。まぁ、評価が高かった「童貞をプロデュース。」実際は出演者と揉めていたワケで、ドキュメンタリーを作るってのは難しいんでしょうね…。

何はともあれ、反日云々というよりは“自分を正義だと思っている人たちの押しつけがましい映画”というか、ちょっと面白いところはあったけど、基本的にはイヤ~な感じがする作品でしたね。正直、僕的にはイルカを食べようと食べまいとどっちでも良いんですが(興味がない)、この映画は胡散臭さが充満しまくってて、なんでアカデミー賞を獲ったのか本当に分からないし、「なんで『ビルマVJ』にあげないのよ!」と思ったり。確かにいろいろな点で人をムカつかせる作品だと思いますが、ヒステリックな上映中止活動とかは逆効果でしかないので、イルカ漁を支持する派の人たちはもっと良質のドキュメンタリーを作って対抗してほしいですな。




シアター・イメージフォーラムの受付でも売ってました。タメになりそうな本ですな。



僕的には「安楽死だからOK!」って理屈の方がどうにも好きになれなかったり。