ファニーゲーム(ネタバレ)/キツそうだから観たくなかった映画特集 | 三角絞めでつかまえて2

ファニーゲーム(ネタバレ)/キツそうだから観たくなかった映画特集

ファニーゲーム



原題:FUNNY GAMES
1997/オーストリア 上映時間108分
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
出演:スザンヌ・ロタール、ウルリッヒ・ミューエ、アルノ・フリッシュ、フランク・ギーリング
(あらすじ)
穏やかな夏の午後。バカンスのため湖のほとりの別荘へと向かうショーバー一家。車に乗っているのはゲオルグ(ウルリッヒ・ミューエ)と妻アナ(スザンヌ・ロタール)、息子のショルシ、それに愛犬のロルフィー。別荘に着いた一家は明日のボート・セーリングの準備を始める。そこへペーター(フランク・ギーリング)と名乗る見知らぬ若者がやって来る。はじめ礼儀正しい態度を見せていたペーターだったが、もう一人パウル(アルノ・フリッシュ)が姿を現す頃にはその態度は豹変し横柄で不愉快なものとなっていた。やがて、2人はゲオルグの膝をゴルフクラブで打ち砕くと、突然一家の皆殺しを宣言、一家はパウルとペーターによる“ファニーゲーム”の参加者にされてしまう。(以上、allcinemaより)

予告編はこんな感じ↓




84点


「キツそうだから観たくなかった映画特集」も今週でオシマイですよ。取り上げる映画は「ファニーゲーム」です。今回の特集の中でも僕が一番見たくなかった映画でした。

Wikipediaを見ると、「その凄惨さからヴィム・ヴェンダース監督や批評家、観客がショックのあまり席を立った」とか「ロンドンではビデオの発禁運動まで起こった」とか書いてあるじゃないですか? しかも、あらすじを読むと本当にイヤ~な感じで。いかにも「幸せな家族が一方的に陵辱されて終わる映画」な臭いがプンプンして、「これは絶対に耐えられないだろうなぁ…」と思って、ずっと避けていたワケです。

でも、名作という声を聞くと「いつかは観なくては」と思ったりもして、だからといって、やっぱり観るのには抵抗があるし…。そこで、踏ん切りをつけるために、この「キツそうだから観たくなかった映画特集」を考えたんですね。「ブログに書くことで『ファニーゲーム』を観ざるをえない状況を作ろう」と。で、先々週に休んだりもしましたが、やっと今週観たワケです。僕的には心から「観て良かった」と思いましたよ。

最初、ペーターが「卵を貸してくれ」みたいな感じでやってきた時からもう怪しさ満点なんですね(あらすじもちょっとは知ってたし)。ロルフィーという犬が吠えまくるんですけど(PC-FXの「ロルフィー」とは当然ながら無関係)、僕的にはこの時点で「のど笛、食いちぎってやれ!」って思ったり、ペーターの体格や動作を見ながら「倒せるか? いや、無理か…。でも、背後から襲えば…?」などと考えたりしましたよ。でも、1対1ならまだしもさらに1人加わるので、「これは警察に通報するしかないな…」という結論に達したんですが、当然ながら映画の中に入って通報なんかできないワケでして。「ああっ、二次元人になる方法はないのか!?」と序盤だけでもイライラしました。

何がイライラするって、コイツらの口調がまた腹立つんですよ。あの口ゲンカが強い人特有の“自分でも本当は分かっているくせに、あえて気付かないフリをして逆に「なに言いがかりつけてんの?」と相手の揚げ足を取る感じ”ですよ(ウチの奥さんもかなり得意)。「もう口では負けてもいいし、社会的な制裁を受けてもいい。ただ、今、目の前の、コイツの、首の骨だけは折る!」という気持ちにさせる、あの口調ですよ! もう奥さんのアナの追い詰められっぷりが本当に可哀想で…って、そこからさらに非道いことになっちゃうんですけどね…。

ペーターとパウルがゴルフクラブで旦那の脚を折ってからは、物語はドンドン非道い方へ非道い方へと転がっていきます。多少は希望を持たせる展開があったりするんですが、「子どもが脱出→簡単に捕まる(その後、射殺)」「水に濡れた携帯電話が復旧しかける→結局、通話できず」「犯人たちが家から出る→奥さんが外に助けを求めに行く→捕まる」「隙をついて奥さんが銃を奪い、ペーターを射殺→パウルがリモコンで巻き戻してなかったことに」という感じで、その芽はアッサリと摘まれまくって。旦那も射殺され、奥さんもボートからサラッと突き落とされてしまい、2人組は次のターゲットの家に向かい、パウルが「卵を貸してくれ」と言ってカメラ目線で終わってました。もう当然ながら、非常に頭に来ましたよ。でも、「かなりよく出来た映画なのでは」とも思ったりしまして。

というかですね、まず心底キツイ映画ではなかったんですね。ところどころで、パウルがカメラ目線で話しかけてきたりするので(「あんたはどう思う?」みたいな感じで)、「これはフィクションですよ~」と“観客が完全に感情移入しないように作っている”というか(それでもムカつきますが)。

で、反スリラー映画という評判通り、確かに逆なんですよ。“ご都合主義的な要素がことごとく犯人側に味方する”というか。普通に観ていると「なんで平手打ちしちゃうんだよ」とか「オヤジの携帯はないのかよ」とか「命の危険があるんだから、さっさと逃げろよ」とか「ヨットに乗っている人が味方すれば4対1になるんだから、事情を話して戦えよ」とか「なぜ目を狙わない!?」とか「なんで外からカギがかかるんだよ」とか「もっと工夫して逃げろよ」とか「だから、目だよ! 目を狙え!」とか「なんで警察に電話できないんだよ」とか「こんなタイミング良く捕まるなよ」とか「リモコンで巻き戻しってなんだよ」とかいろいろ思うんですが、それらの不満は“映画の敵役がいつも味わっていた不条理”なんですよね(例えば「主人公にはなぜか弾が当たらない」とか)。見終わった後、もう1回観てみたんですが、本当に丁寧によく出来ていると感心しました。僕的には「暴力の本質を描いた作品」というよりは「映画における暴力描写を楽しんでいる人への嫌がらせ」だと思ったんですが…どうなんでしょうかね?(暴力自体を描きたいならやっぱり“リアルな肉体損壊描写”が必要だと思うので) なんにせよ、ミヒャエル・ハネケ監督はスゴいと思いましたよ。

役者さんたちはみんな素晴らしかったですね~。特に奥さん役のスザンヌ・ロタールが本当にスゴかったです。猿ぐつわされた時の表情なんて地獄そのものというか。最初の方の“ちょっといけ好かない感じ”から“凄惨な状況下でも夫を愛している姿”まで、見事に演じていたと思います。夫役のウルリッヒ・ミューエとは本当の夫婦だから、余計リアルに演じられたのかもしれませんが。突然、大泣きする夫を慰めたりするシーンとか(あそこの一連のシーンはスゴイなぁと思ったり)、キスシーンとかはジーンとしちゃいました…。

そんなワケでこの「ファニーゲーム」、そんなにいうほどイヤな映画じゃなかったです。“よく考えて作られた感”が伝わってきて、僕は結構好きな作品でした。ただ、僕はある程度覚悟していたワケで、知らないで観ていたら激怒したかもしれませんが…。で、この後、同じ監督のリメイク作である「ファニーゲームU.S.A.」も観たので、その記事は後ほど更新いたします。




ミヒャエル・ハネケ監督作。かなり評判が良いので、観ようかと思っております。



DVDボックスまで出ているんですね~。どの作品もキツそうな内容でビックリ。