板尾創路の脱獄王(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

板尾創路の脱獄王(ネタバレ)

板尾創路の脱獄王

三角絞めでつかまえて-脱獄王

2009/日本 上映時間94分
監督・脚本:板尾創路
脚本:山口雄大
出演:板尾創路、國村隼、石坂浩二、ぼんちおさむ、オール巨人、木村祐一、宮迫博之、千原せいじ、笑福亭松之助
(あらすじ)
昭和初期の信州第二刑務所。そこに、拘置所を2度も脱走したいわくつきの囚人、鈴木雅之(板尾創路)が移送されてくる。簡単には脱獄できないはずの信州第二刑務所を、鈴木は1時間もたたないうちに脱獄。その後、刑務所近くの線路沿いで身柄を取り押さえられた鈴木だったが、看守長の金村(國村隼)はそんな彼に興味を持ち始める。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




54点


昨年観た吉本の芸人さんが撮った映画は軒並み好きじゃなかったんですが(「しんぼる」とか「ドロップ」とか「ニセ札」とか)、この映画に関しては、僕が好きな山口雄大監督が協力していたので(板尾さんとは仲良し)、ちょっと期待していたんですが…。感想は、「惜しい!」って感じですかね。予告編を見る限りでは、パルクールを生かした脱獄アクションが中心の映画かと思ってたんですよ。でも、実際に観たらそうでもなくて。


ちなみにパルクールってのはこれ↓ 人間業とは思えませんな。




主人公は、劇中の設定上では二桁に達するほど脱獄を繰り返すことになるんですけど、その脱獄描写自体はそんなにないし、しかも、予告編以上のことが起きなかったりするんですね。例えば、予告で両肩を外して脱出するシーンがありますけど、あれをやるのってクライマックスなんですよ。歯を削ってネジ回しを作った場面はちょっと感心したけど、今どき「自ら関節を外す」なんて発想はそんなに珍しくないというかデフォルトというか…。僕はもっと斬新な手口を期待していたので、“脱獄”をウリにする割には全体的にアイディア不足な感じがしちゃいました。

時代背景を昭和初期にしたのは良かったと思うんですよ。昔の方が脱獄しやすいワケだから。でも、二桁を記録するまで脱獄を繰り返すには技術が足らなそうに見えるんですよね…。だって、「血で鉄を腐食させて~」とか、もうベタすぎるというか、一番メインに持ってきてほしくない手口じゃないですか…。この映画はタイトルが「脱獄王」なんだから、もっと脱獄シーンを見せてほしいというか。

他にも不満点はあります。例えば、看守が暴力を振るうシーンが結構あって。あれは「こんな辛い目に遭っても頑張る理由がある」ってことを表したかったのかもしれませんが、僕はワンパターンな感じがしてちょっとダレました。もっと違うモノを見せてくれると思っていたら、よくある刑務所描写を延々と見せられて「もう分かったよ」とウンザリしたというか…。

看守長の金村(國村隼)が出世を棒に振ってまで主人公に興味を持つ理由も今ひとつ分からなかったですね。ちょっと興味を持った描写はあったけど、あの程度で「公務員が辞令を断る」ってのは基本ありえないですよ。あと、“教会で祈っていたら石坂浩二に怒られたシーン”も唐突すぎて「なんだかなぁ」と思いました。これは“僕に読解力がないだけ”かもしれませんが。

って、不満ばっかり書いてますけど、基本的には好きな感じの作品ではあります。オチはかなり笑いましたよ。この映画の主人公がなんで脱獄を繰り返していたのかというと、「自分の罪を重くして監獄島(WWEが作った映画とは無関係)に収監されて、そこにいる自分の父親を脱獄させるため」だったんですね。でも、間違えてしまって、別人と一緒にハンググライダーで脱出してしまい、國村さんが真面目な顔と渋い声で「鈴木、間違えてるぞ」とつぶやくという…。結局、それまでのシリアスな描写の数々はこのオチのための前振りだったワケです。もちろん「刑務所に入ること自体が目的」なんてそんな大した謎ではないし、最後に間違えるのも部屋に2人いる時点で予想はできるんですが、國村さんがずっと真面目な芝居をしていたから面白かったというか。

僕的に良かったところも結構あるんですよ。体術を生かしてライトの光をかわしたりとか、予告のアクションシーンはかなり好きですし、國村さんの演技はもちろんですが、ぼんちおさむさんとかも変な怖さがあって良かったです。途中、中村雅俊さんの「ふれあい」を突然歌い出したシーンもビックリしたけど、何か好きでした(あれは「大日本人」のオマージュ的なものなんでしょうか?)。タイトルが2回出てきたのもちょっと笑っちゃったなぁ。だからこそ、僕的には“あと一歩だったのに”感が強いんですよね…。「もう少し何とかならなかったのか」と。まぁ、山口雄大監督作品を観るといつも思うことなんですが。つくづく惜しいと思いました。


中村雅俊さんの「ふれあい」を貼っておきますね↓




あと、これは余談ですが、公式サイトでタランティーノや北野武、デビッド・リンチ、ポン・ジュノとかの名前を挙げるのは心から勘弁してほしいというか。こういうの、板尾さん自身も不本意なんじゃないかなぁ。著名人のコメントもなんか納得いかないのが多いし…。特にこれ↓


ラストの衝撃は
映画『ミスト』の
ラストの衝撃を超えました。

色んな仕事をやりながらこんな映画を
作ってしまった板尾さんを心から尊敬します。
確実に板尾さんの時代がきてますね。
ユースケ・サンタマリア【タレント】



う~ん…。もちろん感想は人それぞれですし、僕が「ミスト」を好きというのもあるとは思いますが、なんか非常にガッカリしましたよ…。まぁ、僕的には、あまり期待しないで観たらそれなりには面白い映画だと思います。あの板尾さんの初監督作ということで、話のネタにもなると思うので、とりあえず観て損はしないんじゃないですかね。


ちなみにこのシーン↓はありましたっけ? CMでは印象的だったんですけど、観なかったような…。
三角絞めでつかまえて-脱獄王2


おしまい。




盟友・山口雄大監督作。この映画も面白かったけど“あと一歩”って感じでした…。