ゴー宣で有名な小林よしのり氏の「天皇論」について、思うことがあるので書き留めておきたいと思います。

小林よしのり氏の書いた「天皇論」、氏自身が良く研究して書いたわけではなく、女系容認派の高森明勅氏のアドバイスを元に書いたように思います。


※高森明勅氏が女系容認派であるとする理由は以下にあります。
高森氏は八木氏とともに「皇室典範に関する有識者会議」に呼ばれて意見陳述をしています。
こちらにその時の議事次第も載っています。

皇室典範に関する有識者会議(第6回)議事次第

過去の例を引いて女系もありうるという理論を展開してます。


「天皇論」はSAPIOのゴー宣でしか読んでいませんが、内容から私にとっては特に目新しい話も無く、女系に誘導するような部分が目につきましたので、あまり評価していません。ですから、今回、本は買いませんでした。

他にも皇太子殿下、今上陛下から後ろに各天皇が親子で続いているような絵を描いて、ミスリードしている部分も大変気になりました。
実際に皇統系譜をながめていれば、親子だけでなく兄弟や傍系で継いでいるということに気がつきます。

皇統系譜

これに騙された人は今上陛下→皇太子殿下→秋篠宮殿下→秋篠宮悠仁親王殿下という正統な継承をおかしく思い、今上陛下→皇太子殿下→敬宮愛子内親王殿下という継承こそ正統であると思ってしまうことでしょう。

天照大神が女性だから女系?

小林氏は『元々、天照大神は女性神である。ならば日本の天皇は女系であったと考えることもできる!』とも書いています。

本当に小林氏は古事記を読んでいるのでしょうか?

天照大神はイザナギが黄泉の国から帰った時の禊で左目を洗った時に生まれた神であり(そう、イザナミとの間の子ではなく、単体生殖です^^;)、天照大神の息子の天忍穂耳命はスサノオとのウケヒで、スサノオが天照大神の勾玉を口の中で噛んで吐き出すことで生まれた神です。

ここから、どうやったら男系とか女系を導き出すことができるのでしょう?


小林氏の忌避するY染色体論ですが、男系を考える一助にはなります。

メンデルの法則をご存知の方であれば、図を描いてみればよくわかります。Y染色体は何代続いても大元の一人のY染色体を子孫が受け継いでいることがわかります。(実際はY染色体も変化するとかの理論はこの際横においてください。単純に考えるためです。)
同じことを一つのX染色体でやってみると、三代目くらいで他の系統のX染色体と区別がつかなくなってしまいます。そして、代を経ると元の先祖のX染色体を受け継いでいるかどうか、判然としなくなってしまいます。
男系とは別にY染色体を受け継ぐことではありませんが、血は薄くなっても受け継がれるものはあるのだと気づかせてくれるものだと思っています。


SAPIO10/14・21号の「天皇論・『WiLLの雅子妃バッシングの病理』から

【以下引用】
シナの「王道」と日本の「皇道」とは違う!

日本の天皇は「徳」があるか否かが皇位継承の条件にはならない。

このことは『わしズム』(2009年冬号)の「天籟」で書き、今は『世論という悪夢』(小学館101新書)に収録している。

「人徳」によって禅譲や放伐があるのは、シナの「易姓革命」の論理であって、それは「王道」である。

日本の「皇道」はあくまでも万世一系、しかも神話からの連続性によってのみ成り立つ!
【以上】

全く持って賛成です。その通りだと思います。でもなんだか妙な違和感があると思っていると、

【以下引用】
橋本明なる者は「高い徳を養ってこそ天皇」と言う。
皇太子に「徳」がないから、「廃太子」せよと言う。

これは「徳のない君主は、天命によって交代させるべきである。
皇帝の姓を易えるべきである」というシナの「易姓革命」の思想である。
橋本の思想はシナ人なのだ!
【以上】

「易姓革命」は確かに支那の思想なのですが、「徳の無い君主は交代させるべき」というのが先にあったわけではないと思います。少なくとも秦の始皇帝の頃には。
それぞれの王朝を滅ぼし、簒奪した次の王朝の皇帝が「前の王朝の最後の皇帝は悪い奴だった、徳がなかった。だから天命により俺が帝位についた。」という後付けのいいわけにより作られた物だろうと思います。

それで、よしりんの必死の抗弁を読んでいると、「もしかして、よしりんは皇太子殿下をとばして秋篠宮殿下が皇位についたら、それは『易姓革命』皇位の簒奪になると思っているということ?」という疑問が起こってきました。

SAPIOの69pに『本当を言うと橋本・西尾の易姓革命のすすめなど、論ずるに値しないのだが、』とあるので、やっぱり皇太子殿下を廃太子して、秋篠宮殿下が皇太子になるとよしりん的には「易姓革命」になるらしい。

廃太子については、いろいろ意見があると思うので、今そこについては踏み込みません。
ただ、よしりんが主張する『日本の「皇道」はあくまでも万世一系、しかも神話からの連続性によってのみ成り立つ』というのは皇太子殿下だけでなく、秋篠宮殿下も立派に当てはまります。しかも、秋篠宮殿下は現皇族で、今上陛下のご子息であり、傍系ですらありません。「廃太子論」を攻撃したいあまり、暗に秋篠宮殿下を簒奪者呼ばわりするのは捨て置けません。

私たち男系支持者は敬宮愛子内親王殿下が一般人と婚姻してできたお子様が皇位についたら易姓革命になり、皇位の簒奪になると思っているのですが、女系容認論者は全く別の認識だったのだというのがよくわかりました。

女系容認・長子を強く主張することは、今上陛下に失礼

最後に女系容認・長子優先論者の方に、「女系容認・長子を優先すべきと強く主張することは、今上陛下に失礼で不敬ですよ。」とお伝えしたいと思います。

私の10/17日付けのブログに登場した照宮成子内親王を思い浮かべてください。、昭和天皇の第一子としてお生まれになった方です。
当時は皇族であった東久邇宮盛厚王と結婚、35歳の時に16歳の長男を筆頭に5人の子供を残して病死されました。

何が言いたいかというと、昭和天皇から考えると女系容認で長子優先であれば、この照宮様こそが第一継承者になり、お亡くなりになった今はご長男の東久邇宮家の現当主こそが次の天皇に相応しいという、とんでもない主張も成り立ってしまうのです。

何しろ今上陛下は昭和天皇の第五子であり、長子優先であれば、皇位継承はずっと後ろになられてしまいます。しかも、東久邇宮家の現当主は皇太子殿下と同じ昭和天皇の直系のお孫さんですよ(女系だけど)。

この事実を知れば、心ある方は女系(雑系)がいかにとんでもないものであるかお分かりいただけると思います。