花桜咲くモミジ

 

京介が初舞台後

初めて京汰を訪ねた。

 

 

「これ見てくれ」

 

 

京汰が手に持った束は

手紙だった。

 

 

「京汰さん~それ、何ですか?」

 

 

 

「京介宛の恋文」

 

 

「え?僕に?」

 

 

「そうだ、お前の踊りを見て

すっかり虜になった人たちからだ」

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

京介は、

とても喜べなかった。

 

 

 

 

 

「京介、おまえ、気をつけろよ~

変な奴に言い寄られたりしてないか?」

 

 

「そ、そんな事言われても・・・

どうしたらいいか

分からないです」

 

 

 

「心当たりあるのか?

じゃ、自分の身は自分で守れ~」

 

 

「ぼ、僕が?

ど、どうやって・・・」

 

確かに京介は

カフェを覗き見る人影を何度も見ていた。

 

 

 

 

「そうだな・・・おい、史郎さん

ちょっと来て~」

 

 

「なんだ京汰・・・」

 

 

 

 

嬉しそうに微笑みながら

京汰の側にやって来た。

 

 

 

「俺が史郎さんに触れようとするけど

それを触れられないように逃げてみて」

 

 

 

 

「お?別に触りたかったら触ればいいだろう」

 

「ち、違う!!

京介に変な奴が来た時の

対処法を教えるの!」

 

 

「あ、そう言うことか・・

私に出来るかな?」

 

 

「以前、俺の家の前で

大勢の用心棒を負かしたあれだよ」

 

 

「あ?そんな事あったな~」

 

「だから、ほら、いくよ」

 

舞台に上がり

京汰は、史郎に触れようと

身体を近づけた。

 

史郎は、いとも簡単に

するりと交わした。

 

 

「あ・・・」

 

京介は、

その身のこなしに

目を見開き

食い入るように見つめた。

 

どんなに京汰が触れようとしても

史郎は

軽やかに右、左と身体を移動させ

京汰は苛立ちを覚えた。

 

 

「もういい!!京介、見ただろう~

日舞の間合いを覚えていれば

相手が近づこうとしても

それを交わすことが出来る。」

 

 

 

「す、すごいです。史郎さん!」

 

 

「ほら、京介も舞台に上がって・・・

俺たちの舞いを覚えてるだろう?

どんなに近くで舞っても

触れることがない・・・

それは、互いに距離を持つように

身体がそれを察知し動いているからだ」

 

 

「あ、そうなんですか・・・」

 

 

「史郎さん・・・今度は

京介を触ってみて」

 

 

 

「あ・・・僕出来るでしょうか?」

 

 

 

「大丈夫だ・・手加減するから」

 

 

 

二人は舞台で向き合い

互いに一礼した。

 

 

すっと近寄る史郎に

京介は、

いきなり羽交い絞めされてしまった。

 

 

「あ・・・捕まっちゃいました・・・」

 

 

「こら!!史郎さん!何やってる」

 

 

「京介さん・・・抱き心地いいな」

 

 

バチン!!

(メ゚皿゚)フンガー

 

「京介!舞いを思い出せ!

簡単に捕まるな!」

 

 

「あ、はい・・・」

 

京介は、一瞬目を瞑り

京汰との舞いを浮かべた。

 

 

 

 

「どうぞ・・史郎さん」

 

 

 

近づく史郎を

スルリと交わし

その間隔を変わらず取り続けた。

 

 

「そうだ!それそれ!」

相手の動きを読み

動く一瞬を捉え

すかさず舞うように交わす。

 

 

「あ、分かりました!」

 

何度も史郎は

京介に触れようと試みるが

京介は、身軽な動きで

指一本触れさせなかった。

 

 

「京汰さん~出来ました」

 

 

「自分の身を守っても

必ず相手は興奮し

次の行動に移そうとする」

 

京汰の言葉に

京介は、

喜びも引っ込んでいった。

 

 

「え?これだけじゃダメなんですか?」

 

 

「そうだ、触れられない不満に

何をするか分からない・・・」

 

「どうすれば・・・・」

 

 

「見ていて~史郎さん、また相手して~

今度は、史郎さんが俺に触れようとして・・」

 

 

「分かった」

 

 

京汰は、まるでその動き全てが

舞いのように綺麗だった。

 

しなやかにその身を翻し

史郎を翻弄する。

そして、京汰は、

ある一瞬に史郎の肩に手を置いた。

 

史郎は、ビクリとして

動きが止まった。

 

「京介~相手を怒らせては、

後が厄介だ。

ここは、こちらから触れることによって

相手に意表を突く」

 

 

「あ、はい」

 

 

「ごめんなさい・・・と、謝り

あなたの申し出をお受けできませんっと優しく断りの言葉を告げる」

 

 

「あ・・・はい」

 

 

その時の京汰は

今まで見た事のない妖艶な笑みを浮かべ

史郎に向けて

好意的な表情をした。

 

 

「おい、京汰・・・

そんなことして大丈夫なのか」

 

 

「ああ~これは、お京時代に良く使ったやり方で

マツさん直伝だから、

効果歴然~

おためしあれ~」

 

 

「なるほど~白桃茶屋のお京が言うから間違いないな・・・

じゃ、もう一勝負!」

 

 

史郎が、動くと

京汰は、身構え

またその身を翻した。

 

 

しかし、史郎は、

今度は、簡単に京汰を抱きしめた。

 

「あ、なに!?し、史郎さん!!」

 

 

「京介さん~これを使って上手くいくのは

初心者だけだからな~

相手によっては全く効かない・・

気をつけろよ」

 

 

「あ、はい・・・」

 

 

「離せ!

史郎さん!!」

 

ジタバタ動く京汰を

史郎は、両腕で更に抱きしめ

首筋に口づけた。

 

 

途端に京汰は

力が抜け

史郎の腕の中で蕩けた表情になった。

 

 

「あ・・史郎さん・・・・(n*´ω`*n)・・・

やりすぎですよ・・・」

 

 

「京介さん~あまり無理せず

でも、出来るだけ自分の身を守ることも知ってるといい~

な?京汰~♪」

 

「ふにゃ~(*´ω`*)・・・」

 

 

 

 

モミジ桜咲く花

 

 

今日は、一日に二回目の更新~

滅多にないのでご堪能あれ~

 

史郎は、お京を追い掛けた時に

お京の用心棒数人に阻まれます。

覚えてますか?

 

 

それが、まるで舞いの如く、相手を翻弄する姿は

さすが家元でございます。

京汰も側でその姿を見て、きっと見惚れた事でしょう。

 

史郎は、幼い頃、京一郎の為に級友からの虐めを

代わりに受けた時代がありました。

そして、何度目かの時、史郎は、数人の級友に勝つのでした。

これまた覚えてますか?

 

日舞を甘く見るな・・・

しなやかな身体には、綺麗な筋肉が付き、

その目に動くものを捉える瞬発力も付き

暴漢に立ち向かう術を知らずに養っているのです。

 

で、この前の話に続くのでした~

 

では、このお話は、大輔編のおまけ~って事で、楽しんでくださいね。

 

 

では、今日も平穏な一日を過ごせますように・・・・

 

 

マタネッ(*^-゜)/~Bye♪

 

p.s

コメントは大輔編で・・・・・