花

「史郎さん
演目は、どのくらい用意したらいいんだろう」






「そうだな~多ければ越したこと無いが
京汰に負担が掛かるぞ」






「ああ・・・俺が8割出っぱなしになるな・・・・」







「着替えの時間も入れて、
余裕を見るなら
私が出てもいいぞ」








「ダメだよ・・・・香櫻流の家元を出させるわけいかない」









「まだ、そんな事言ってる
もっと甘えたらどうだ?」









「もう十分甘えさせてもらってるよ・・・
まあ~早着替えすれば
連続でもなんとかなるか・・・」







「無理するなよ」






「分ってる・・・・」






舞台では、伝助と太助が
金太郎の自主稽古をしていた。






「や~~~~~~!!」
「や~~~~~!!」





「た~ちゃん、おそい」
「でんちゃんが早い~」






「おっしょさん!どっち?」
「おっしょさん!どっち?」






「あ・・・?」





伝助太助は、京汰に抱き付き
可愛い顔で覗き見た。







「伝助、太助~お師匠さんは、今頭使ってるんだ~
おっちゃんが見てやる~ほら、
もう一度踊ってみなさい~」






その時
玄関から




「あ、あ、あんた達!いつの間に家庭持ったのよ!!」






「あ?」
「えっ?」
「・・?」
「・・?」






そこに立ってたのは、
紫丿藤流家元、玉之助だった。







「玉之助さん!」
「あ・・・・・・」
「だれ?」
「だれ?」








「久しぶりに史郎を訪ねたら
元家元にここを教えてもらったのよ~
何?史郎、京汰~どう言うこと?」






「・・・・・・」


史郎と京汰は、見合った・・・・










史郎は、玉之助の存在を
すっかり忘れていたことに気が付いた。









京汰は、どこか身構え
あの茶屋で会った時を思い出した。









~もう、我慢することはないんだよ~
史郎はちゃんと受け止めるはずだから~







あの時の玉之助の助言を
今なら素直に聞けるのに・・・・・








「あの、あの節は、お世話になりました。
今は華草流家元を襲名し、
史郎さんの教えを頂き、ここで暮らしています」






「何硬いこと言ってるのよ!!」





っと、バシっと京汰の肩を叩いた。




「痛っ!!」




びっくりした京汰に史郎は、
小声で





「玉之助さんには気をつけろ・・・・
もう、めちゃくちゃな人だから・・・」





「あ?はい・・・・・」






「何ごちゃごちゃ言ってるのよ~
いろいろ突っ込みたいことが一杯だわ~
まず、その子達・・・まさか京汰の子かい?」






「ま、まさか!!違いますよ
弟子です、弟子!!」







「ふ~ん、弟子ね~
わたしゃ~てっきり史郎の子でも産んだのかと思ったわ~」






「うっ!!」


「玉之助さん!何言ってるんです!」






「そうね~双子を生むのは無理よね~」




「だれ?」
「だれ?」



双子たちは、京汰を見上げて
尋ねた。





「ふふ・・・可愛いわね~食べちゃいたい・・・」



「!!」
「!!」


伝助と太助は
京汰の脚にしがみついて
後ろに隠れた。







「玉之助さん!伝助と太助が怯えるようなこと
言わないでください!」





「あら~何も言ってないわよ~
伝助に太助って言うの?
玉にいさん~だよ。言ってごらん」





「たまに~さん」
「たまに~さん」






「そうそう~よく出来ました~
次、京汰、あんたも言ってごらん」







「え?俺も?・・・」





すっかり玉之助の言葉に
素になってしまった京汰だった。









「京介もそう呼ぶのよ~
はやく~!」






「京汰、玉之助さんに逆らわないほうがいい・・・」



「史郎!ごちゃごちゃ言わない!」






「あ・・・・玉兄さん・・・・」






「京一郎~♪」


っと、京汰をいきなり抱き締めた。




「うわ~~!!玉之助さん!」
「おっしょさん!」
「おっしょさん!」







「ダメダメ~玉之助さん~
そこまで!!
京汰の唇を奪おうとしてるでしょ!!」




「うっ!!」

思わず京汰は、自分の唇を手で覆った。




「ちぇ!京介は上手くいったのに・・・・
京汰は、動きが機敏だわね~
まあ~ここでは何だから、早く上がらせて~」











「あ、はい・・・どうぞ、玉之・・玉兄さん・・・・」







「玉之助さんには敵わない・・・」



っと、大きくため息をつき
史郎は、肩を落とした。






「何?史郎!文句ある!!?」






「あ、いえ、どうぞどうぞ~」


っと、諦めてその先を促した。








花

「なるほど~そうだったのね~
わたしがどうにかするより
京介がちゃんとあんたらを結びつけたのか~
大した子だよ~京介は・・・・」







「はあ~私がちゃんとしてなかったので」






「そうよ~史郎は、いつもどこか鈍いのよ~」



「ぷぷ・・・・・」





「おい、京汰、笑うな・・・・」



「あら・・・弟子達が踊ってるのって
『櫻狂乱』じゃないのか?」






「あ?」
「えっ?」







舞台では、
伝助と太助が扇子を片手に
舞っていた。






それは、
紛れも無い「櫻狂乱」だった。








「あ・・・いつのまに・・・・」

「・・・・・・」






まだ3歳の弟子が
見よう見真似で
舞っている姿





京汰は、
初めて「櫻狂乱」を見た頃を思い出した。
まだ幼かった自分が
日舞をやりたいと母にねだったあの頃を・・・・








ふっと涙が頬を伝うのを
史郎が、そっと拭ってくれた。




「あ、・・・ごめん」




「京汰、私達の『櫻狂乱』も
公演会で披露しよう」





「えっ?・・・史郎さん・・・」




「京一郎と共に創り出したあの舞いは
今、京汰がしっかりと受け継いでいる・・・
きっと、それは、またあの子達が極めてくれるだろう」






「いいの?」



「ああ・・・」







京汰の日舞の原点は、
間違いなく
「櫻狂乱」
だった。







父を追い掛け
史郎を追い掛け
そして、今、弟子達に伝える時が来た。






「なんだか、あんた達~
すっかりいい雰囲気醸し出してるわね~
知らない間に・・・・」









「あ~いや、そんなことは・・・」
「・・・・・・」









「何照れてるのよ~」







「玉之助さん・・・・」
「玉にいさん・・」








「さて~華草流の初舞台の演目を見せなさい
私が決めてあげる」






「あ・・・」
「あ、はい」







そこから玉之助の独壇場となり
ほどんとの演目や
その順番まで全てを決められた。







それは、見事なもので
史郎も京汰もぐうの音も出ないほどだった。










花赤ちゃん赤ちゃん



伝助と太助の母は、
今日、里帰りをしてしまった。







残された双子の伝助と太助は、
小さなお風呂で
史郎に入れてもらい
京汰は、一人づつ手拭いで拭い
寝間着を着せた・・・・









京汰が最後にお風呂に入り
出てくると史郎が双子を寝かしつけていた。





「おっしょさん」
「おっしょさん」






目をパッチリと開けた双子は、
京汰の姿で眠気などないようだった。







「こら、もう寝なさい」






「京汰と一緒に寝たいらしい・・」






「分かった。」







二人の真ん中に潜り込んで
双子の顔を見ると
嬉しそうに笑っていた。









「いいなぁ~おっちゃんもそっちに行きたい・・・」





「史郎さんは、だめ・・・
一人で寝て~おやすみ」




「おやしゅみなさい」
「おやしゅみなさい」





「ああ~おやすみ・・・」


















「ぐふっ!!」

それは突然京汰を襲った。




何事かと目を覚まし
顔に飛んできたものを手で掴むと
伝助の足だった。







「おい・・・寝相悪いぞ・・」






ちゃんと寝かした途端
次は、太助の足が飛んできた。






「うっぷ!」







この双子の寝相の悪いのに、
京汰は、ほとんど眠れず、
その布団から這い出て
隣の史郎の布団に潜り込んだ。







「ん?どうした?」





史郎は、京汰に驚き
薄目を開けると





「史郎さん・・・ここで寝かせて・・・
双子達に蹴り飛ばされた・・・」









冷たい身体を擦りつけてくる京汰を
史郎の温かい身体で
すっぽりと包み込んだ。







山ひよこひよこ



「ずる~~~い!」
「ずる~~~い!」



朝起きると
大好きなお師匠さんは、
隣のおっちゃんに抱き締められ眠っていた。






「し~~~っ」





史郎は、二人に




「お師匠さんは、お前たちに
布団から追い出されたんだぞ~」







「ウソだ・・・」
「ウソだ・・・」







「寝不足なんだから、静かに寝かせてあげろ」







「ねぶそく?」
「ねぶそく?」








「そうだ・・・・
まずは、自分で着替えろ・・
それから、布団を畳め
出来るだろう~もう3歳なんだからな~」







「できる!」
「できる!」






二人は、その場で寝間着を脱ぎ、
枕元にきちんと畳まれた着物を一生懸命着て
帯も結んだ。






「よく出来た
布団畳めるだろう」






「できる!」
「できる!」







二人で力を合わせ重い布団を
よいしょっと畳んだ。







「よし・・・次は稽古場に行って
朝稽古だ~
金太郎の舞いを3度繰り返しやってこい。
そうしたら、師匠を起こしに来ていいぞ」







「うん!わかった」
「うん!わかった」







パタパタ~っと駈け出した双子を見つめ
史郎は、
胸の中の京汰に思い切り口付けした。






「う、う・・・・ん」






「お姫様~もう起きないと、
子鬼の襲来に遭うぞ」






「子鬼?・・・誰ですか?・・・・」








京汰は、その手を史郎の背に回し
その首筋に口付けてきた・・・






「おや、お京さん・・・・・」







史郎は、朝の楽しみを
そのままに寝ぼけ京汰に任せた。







覚醒するまでの数分・・
お京は、妖艶な動きで
こちらを翻弄する。










その背に回された指が
ゆっくりと滑り落ちる。
どこまでも淫靡な動きに
史郎は、ぐっと堪えた。










「あ・・・・う~ん」








漏れる声も
お京のままで
史郎は、






「おい・・・・子鬼がやって来る・・・
そんな姿弟子達に見せるのか?」











うっとりとしたその瞳は、
まだ正気じゃない・・・・









ふふっと笑むその姿に
欲望の火が灯っていた。








「お京・・・・」









「おっしょさん!!終わったよ」
「おっしょさん!!踊ったよ」






思いっきり
史郎と京汰の布団の上に乗っかった双子に




「ぐえっ!!!」

何事かと、京汰が目覚めた。








「あ・・・・あ・・・・あ・・・?」





「ほら、もう起きろ・・・京汰・・・」







「な、なんで、史郎さんが居るんだ?」





アワアワっとした京汰に
史郎は、溜め息を付いた・・・







「はいはい~今日も1日お稽古頑張りましょう」


っと、投げやりに言うと




「がんばりましょう!」
「がんばりましょう!」





っと双子の満面の笑みに
京汰は、不思議な面持ちになり


「あ・・・頑張ろう・・・???」




っと、その日が始まった。



ニコッニコッ



皆様~こんにちは~


ぺこ <(_ _)>



解説文は、今日は、無し~
まずは、読んでみて~(≧∇≦)/


手直しも後でしま~す(^O^)v
慌ただしくてごめんちゃい~♪




あ・・40話になりました~きゃは~嬉しい♪
まだ続くので、よろしくv(*'-^*)bぶいっ♪


では、今日もバタバタ~
いえ、今日も素敵な一日にしましょう~




マタネッ(^ー^)ノ~~Bye-Bye!