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私はネガティブ

「紗英ちゃんってネガティブだよね」

学校の帰り道、綺羅羅ちゃんが言った。

「ネガティブってなあに?」

「暗いっていうこと」

紗英ちゃんはまた聞いた。

「暗いってなにが?」

綺羅羅ちゃんはため息をついた。

「帰ってお母さんに聞けば?」

冷たい言い方に、紗英ちゃんの気持ちは暗くなった。
綺羅羅ちゃんは私が嫌いなのかな?
考えれば考えるほど気持ちは暗くなった。
その後、綺羅羅ちゃんと話すことなく家に帰った。

紗英ちゃんはお母さんに聞いた。

「ネガティブってなあに?」

お母さんはスーツを脱ぎながら答えた。

「暗いっていうこと」

「暗いってなにが?」

お母さんは、チッと舌打ちした。

「そんなことより、宿題はしたの?」

紗英ちゃんは下を向いて小さい声で答えた。

「した」

お母さんはまた、チッと言って着替えてしまうとキッチンに入っていった。
お母さんは私が嫌いなのかな?
考えれば考えるほど気持ちは暗くなって泣きそうになった。

それでも紗英ちゃんはネガティブの意味が知りたくて、自分の部屋に隠れて電話をかけた。

「紗英ちゃん、どうしたんだい?」

パパがすぐに電話に出て、驚いた声で聞いた。

「パパ、ネガティブってなあに?」

パパはため息をついた。

「そんなことで電話をかけたらダメだ。パパは紗英ちゃんと近づいたら罰金をとられるんだからね。いいね、もうかけたらダメだ」

ぷつりと電話は切れた。紗英ちゃんは電話を握りしめて泣くのをぐっとこらえた。泣いたらまたお母さんに叩かれる。

紗英ちゃんはネガティブの意味を知らないまま大人になった。ポジティブの意味も知らなかった。

ある日、同僚の加藤くんが言った。

「鈴木さんってネガティブだよね」

紗英ちゃんはきっとまたその意味を教えてはもらえないだろうと諦めのため息をついた。

「ネガティブってなあに?」

「そんなにきれいなのにさ、化粧もしないで服も地味だし。もっときれいにしたらいいのに」

紗英ちゃんは答えがかえってきたことにびっくりしました。

「私なんか、きれいじゃないわ」

「そんなことないよ。世界中のみんなが違うって言っても、俺は鈴木さんをきれいだと言うよ」

紗英ちゃんは泣きそうになった。
それは生まれてはじめてかけられた魔法。
ポジティブという名の魔法。

紗英ちゃんはそれからも魔法使いの加藤くんに、いっぱい魔法をかけてもらって、いつまでも幸せな日々を送った。