梅雨入り、うめぼし

テーマ:
 ばあちゃんが梅を送ってくると、ああ、梅雨入りだなあ、と思う。私は18才まで田舎のばあちゃんちで育ったから、ばあちゃんのうめぼしがないとごはんが寂しい。

 ばあちゃんのうめぼしは昔ながらの、塩分がきつくて飛び上がるほど酸っぱいやつだ。
うめぼしのカメを開けると塩まみれのやけに赤いうめぼしがごろごろ入っている。赤紫蘇も目一杯入れるから、カメからは紫蘇の香りもする。

 毎年、にわの梅に実がなると「来年までもつようにいっぱい漬けにゃあ」と言って一粒も残さず漬けてしまう。でもうめぼしを食べきることなんかなくて、毎年、カメに五分の一ほとも残ってしまう。
 残ったうめぼしは、そのまま倉に置きっぱなしになっていて、何十年も漬かっているうめぼしがある。五十年ほど前のものをひとつ食べてみたことがあるけれど、塩味の角がとれてまろやかでとても美味しかったので、ばあちゃんがたくさん漬けるのを黙って見ていた。

 高校を卒業して都会に出る私にばあちゃんはうめぼしのカメを一つ持たせた。
「一人で食べるなら五年はもつにゃあ」
 そう言っていたけれど、私は三年で食べ尽くしてしまった。
「あんた、そんなに食べたら高血圧になるだら」
 そう言いながらも次のカメを送ってくれるのかと思っていたら、生の梅がやってきた。赤紫蘇も添えられていて、漬け方のメモも段ボールに一緒に入っていた。
 うめぼしは漬けてから半年は置かないと美味しくない。ばあちゃんに電話して泣きついて、ビニル袋に入ったうめぼしをやっと送ってもらった。大事に食べた。

 私が借りている一軒家は狭いけれど日当たりだけはばつぐんだ。塩漬けした梅を土用干しするのに狭い庭にテーブルを持ち出してザルに梅をきちんと並べて干す。
 塩漬けで出た梅酢も透明な瓶にいれてザルと並べて日光消毒。これで美味しいうめぼしができるぞいとウヒウヒ言っていたら、なんと土用だというのに雨が降った。
 仕事中だったからどうすることもできず、梅はダメになった。ちくしょう!
 今度こそ本当にばあちゃんに泣きついてカメにいっぱいのうめぼしを送ってもらった。

 そんな経験から縁と軒のある家に引っ越した。やもりが大量に出て、庭は猫の集会所だった。独り暮らしなのににぎやかな家だった。おかげで結婚などという煩雑さを厭うようになり女盛りを独身のまま過ごした。

 ばあちゃんが死んだ年、梅はいつもより倍咲いて、いつもより倍実をつけた。その実を全部漬けてしまって、ふと思った。
 何十年後、このうめぼしを食べてくれる人はいるのだろうか。
 このまま私が独身なら誰も倉を継いでくれないのじゃなかろうか。私は見合いを重ねた。

 婿に来てくれたのは武骨で無口な男だ。見合いの席に着てきた服は白のポロシャツに白黒チェックのスラックスで、ファッションという言葉を知らなさそうなところが気に入った。
 相手が私を気に入ったかはわからなかったが、ピクニックにうめぼしおにぎりを持っていったところ、目を白黒させて酸っぱいのと戦って「おいしいです」と言ってくれたので、まあ嫌われてはいないなと思ってプロポーズしたらOKしてもらえたというのが馴れ初めで、披露宴でその話を暴露されて真っ赤になった婿どのをわたしはかなり気に入っている。

 無事に子供も生まれ、その子も異様にうめぼしが好きで、赤んぼうのころから指吸いのかわりにうめぼしをしゃぶってたくらいで、これなら倉も安泰だと胸を撫で下ろした。
 そうして毎年、カメにいっぱいうめぼしを漬けている。もうすぐ生まれる孫もきっとうめぼしを好きになるだろう。
 縁側で梅を干しながら土用の空の青さを楽しんでいる。これなら今年もうめぼしはよくできそうだ。
 そうして倉に食べ残しのカメが一つ増え、何十年か後の誰かがうまいと言って食べるのだろう。
AD

夜は元気

テーマ:
朝はけちょんけちょんだけど夕方くらいから覚醒してフツーになります。

今日の終業頃に、仕事大丈夫ですか、続けられそうですか、という聞き取り(?)があり

「大丈夫です! 明日も元気に出勤します!」

って答えたんだけど、
朝はわからん。正味なはなし。
障害について理解ある会社でよかったです。
休みも責められない。
だが、心苦しいことにかわりはないんやわー。

朝が一番悪くて、夜に向けてよくなっていくのね。
明日も行けるかな……

……明日のことは明日考えようか。
とりあえず、お休みなさい。
AD

信じられない

テーマ:
まわりの人が話してるとみんな私の悪口言ってるような気がする。

そんなわけない。
みんな私のことにかかずらわるほどひまじゃない。
そんなわけない。

おうちにかえりたい。
一生ふとんかぶっていたい。

仕事やめたいけどお金稼がなきゃ。
寒気がする。
かえりたい。

あと四時間。