絢香は額に汗を浮かべたまま、産まれたての赤ん坊を抱いた。
赤ん坊は両手をしっかりと握って力いっぱい泣いた。

ユルタの幕をあげ、雷三が入ってきた。赤ん坊を見て嬉しそうに目を細める。

「絢香、ありがとう。俺たちの最初の子供を」

絢香は笑って首を振る。

「この子は私たちの八番目の子供よ」

絢香が指差すユルタの幕の外には、心配そうにのぞきこむ子供たちの姿があった。
雷三は子供たちを手招く。子供たちは、あるいはおずおずと、あるいは絢香に駆け寄り、あるいはただ笑顔でたたずんだ。

「Tug`ilgan kuningiz bilan!」

「Felicitations ! 」

「Paljon onnea」

「Congratulations」

「おめでとう、母さん」

雷三は子供たちの頭を次々撫でる。
子供たちは歌う。


新しい命が翼を広げ羽ばたくことを
平和の地、真実を愛する故郷を
いつまでも ここに、と。