戦う「眼」をつくる1 ~格闘技における視機能とは~ | Dr.Fの格闘クリニック

Dr.Fの格闘クリニック

格闘技ドクター・二重作拓也の「強くなる処方箋」

戦う「眼」をつくる!

格闘技LOVEの皆さん、こんにちは! いかがお過ごしですか? 今回は戦いにとても大切な「眼」について格闘技医学的に考察してみたいと思います。最強の「眼」をつくって、ライバルに見えないところで差をつけちゃいましょう!!

●忘れられがちな「眼」の大切さ
 具体的な方法に入る前に、ちょっとだけ想像してみてください。目隠しをしたままの自動車運転、両目をつぶったままの試合、ド近眼の執刀医が裸眼で緊急手術(こぇ~)などは、TVのびっくり企画など以外では現実的にはあり得ないことからも、眼の機能がいかに人間の生活に深く関わっているかわかります。


 人間は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった五感をフル活用して外の情報を入力いたしますが、この中で、視覚から入る情報は、全体の約8割といわれています。当然、格闘技・武道においても視覚は一番大切な情報入力器官となります。

相手と自分の自分の距離を測る。相手の動きを把握する。周囲の状況を知る。対戦相手の「ガードが下がった」「前のめりになっているから上段ヒザが当たりそう」「自分のこの動きを嫌がった」「肩で息をしている」「ロープを背にするのは不得意だな」などなど、微妙な表情の変化や身体の状況、位置関係、時には心理の微妙な揺れまでも、「視覚」を通じて察知することができます。


 それでは、みなさんは普段の練習や稽古でしっかり眼を鍛えていらっしゃいますでしょうか? 練習の中で、自然にやってる選手も多いのですが、「視覚」を意識的に徹底して鍛えることで、グンとパフォーマンスがアップする。そんな選手をたくさん見てきています。


特にキャリアを積んだ格闘家・武道家の中には、眼窩底骨折や眼球への外傷などで苦しんでいる方も少なくないでしょう。総合格闘技のオープンフィンガーグローブの普及やボクシングやキックなどの打撃用グローブの軽量化・小型化に伴い、眼や眼の周囲の部位への損傷の例は増えてきているのが今の現状です。では、眼の健康・安全はもちろん、機能向上という面ではまだまだ研究やノウハウの蓄積の余地があるのではないでしょうか? 余地がある、ということは、まだまだ伸びる可能性がある、ということです。格闘技の進化やレベルアップの鍵を探しちゃいましょう!
 
普段、ものが見えて当たり前の状態から、さらに一歩進んで、積極的に眼を働かせることで「あなたの最強」がまた一歩近づいてくる! 眼を鍛えれば、新しい何かがきっと見える! どうですか?楽しくなってきたでしょう???


それでは、まず眼のウォーミングアップからいきましょう。

●ウォーミングアップ1 閉眼&開眼
 いちばんシンプルにできる方法は「閉眼&開眼」です。思いっ切り眼をつぶり、暗さに慣れてきたら思いっ切り眼を開く。明るさに慣れてきたらまた思いっ切り眼をつぶる。これで、閉眼に関わる筋群と開眼に関わる筋群が鍛えられます。また、まぶたを動かす筋群は、顔面の表情筋と連動することが多いので、眉毛をあげて開眼したり、口を尖らせてみたり、眼をつぶるときに頬を持ち上げ、開くときに下ろす、といったアレンジを加えると、いつもより眼の周囲の筋群を大きく動かすことができます。また、明るさを急激に変化させることで、瞳孔の調節に関わる筋群が刺激されます。明るい場所では瞳孔収縮筋が働き、瞳孔がが小さくなり(縮瞳といいます)、暗い場所では瞳孔散大筋が働き瞳孔が大きくなります(散瞳といいます)。また、視点をどこに置くかによって瞳孔の大きさが変化します。近くを見ると縮瞳が、遠くを見ると散瞳が起きます。(これを調節反射と呼びます。)格闘技の試合は、対人で常に距離が変わり、視覚情報が目まぐるしく変わります。それらに対応できるように、瞳孔の動きをウォーミングアップで高めておきましょう。

●ウォーミングアップ2 眼球運動
 今度は、眼を実際に動かしてみます。
 顔はまっすぐの方向を見てしっかり固定します。そして上を1、右を2、下を3、左を4とナンバーをつけて、1→2→3→4と動かし、次に1→4→3→2と動かします。ぐるぐると眼が回る感じになりますね!!!遠くを見るを5、近くを見るを6として、パートナーとアトランダムに行うのも効果的です。

 これを最初両眼で行い、次に右眼だけ、左眼だけ、と片眼ずつ行います。最後にもう一度両眼で行うと、最初に行ったときよりも眼が動きやすく感じるはずです。左右の動き、例えば右を見る場合は右眼がより広い範囲で動き、左を見る場合は左眼がより広い範囲で可動します。、ウォーミングアップとしては、片目と両目、どちらもやっておくと視野が広がる、というわけです。



眼1