人との付き合い方が下手な人ってけっこういますよね。
気を使って遠まわしに言うってことができない人、相手を思いやることができない人、自分のことしか考えられない人、不器用で相手に自分の本心を見せられない人。
私の長いソープ嬢生活の中で、いちばん記憶に残っている人付き合いの下手な人を思い出しました。
この人は長尾さんといって、還暦間近の独身のお客さんでした。
去年まで通っていただいたお客さんで、私の指名のお客さんの中でも長いお付き合いになった人です。
最初は前回書いた遠藤さんと同じで、クチの悪い人だと思っていました。
私の体重が増え始めた頃、よく「お前このままいくと関取になるぞ」なんて言われていました。
ある日、私が長尾さんの前で怪我をしたことがあったんです。
ユキ「それでね、昨日は~痛いっ!!」
長尾「なんだ、何を一人で喜んでるんだ?(笑)」
ユキ「喜んでないよ、爪が剥がれちゃった…。」
話しながらお湯の温度を確認しているときに、浴槽の栓を繋いでいる金属の線に爪を引っ掛けてしまいました。
運悪く線の一部が切れ掛かっていて、その飛び出した金属が指と爪の間に入って爪が半分剥がれたんです。
長尾「ハハハッ、普段の行いが悪いからそうなるんだな(笑)」
指先からポタポタと血を流す私を見ながら長尾さんが笑って言った言葉がこれでした。
人が怪我をして痛がっているのを見て笑っていられる人って、それまで私の周りにはいなかったのでビックリしましたし、ショックでもありました。
それまでも長尾さんの言動はひどいものでしたが、クチが悪いだけなんだと思って気にしないようにしてきたんです。
それがこの言葉で『悪いのはクチだけではないかも…』と思うようになってしまい、月に2~3回の長尾さんの来店がとても嫌な時間になってしまいました。
これ以外にも、私がどうしても気になっていて止めて欲しかったことがいくつかありました。
個室に入って靴下を脱ぐと、冬場の冷たくなった足を私の背中や胸に押し当ててくる。
私はこれがすごく嫌だったんです。
平気な人もいるかもしれませんが、外から来て洗ってもいない足を私の肌で温めるわけですし、洗っていたとしても人に足を押し付ける行為って普通はしないですよね?
私の頭を叩く。
これは前にも雑記で書きましたけど、心を許している人以外には絶対にされたくない行為です。
長尾さんはとても育ちが良かったようで、自分以外の人は「育ちが悪い」と言う。
もちろん私も毎回のように言われていました。
具体的な理由があるわけでもなく(理由があるならまだマシ)です。
お金を投げるように渡す。
これも毎回のことでした。
こうやって書いていると長尾さんはものすごく嫌な人ですよね。
でも決して悪い人ではなかったんです、多分(汗)
スナックの女性に『子供が怪我をして困っているからお金を貸して欲しい』と頼まれて、同情してポンと100万円あげてしまうような人でした。
私自身が長尾さんを嫌いになってしまってから、我慢せずにチクチクと嫌味を言っていたんです。
もちろんもうお店に来なくなっても構わないと思っていましたし、できればもう長尾さんの言動で傷つきたくないと思っていました。
ユキ「普通は人に足の裏なんかくっつけないでしょ、他でやったら嫌われちゃうよ~。」
長尾「ふんっ、そんなの気にするほうがおかしいんだ。」
ユキ「頭は叩かないでね、肩は我慢するけど、さすがに頭は嫌だよ~。」
長尾「余計にバカになるからか?(笑)」
ユキ「長尾さんはいっつもあのボーイさんのこと育ちが悪いって言うけど、育った環境を見たの?見てなきゃ言えないでしょ?」
長尾「ああいうヤツは育ちが悪いに決まってるんだ。」
ユキ「長尾さんはいっつもお金を投げるの?コンビニでも?嫌な顔されるでしょ?」
長尾「客だからいいんだよ。」
こんな感じで嫌なことをされるたびに言い続けていたんです、私も黙っていられない性格なんでしょうね(汗)
徐々に長尾さんの言動が変わっていきました。
私が指摘した部分だけですけど、明らかに気をつけているのが伝わるんです。
それで感じたのは、長尾さんは今まで人に指摘されたことがなかったのかもしれないということです。
ずっと独身でいた長尾さんですし、本人が言っているようにボンボン育ちです。
可愛がられて甘やかされて育てられたのかもしれませんね。
人に叱られたり注意されることって絶対に必要なんですよね、じゃないと長尾さんになってしまいます。
きっと長尾さんはこの性格のせいで人付き合いも上手くできずに、ずっと独身でいたんでしょうね。
もう還暦間近の長尾さんですから、完全に治すことは無理だったでしょうけど、少しでも人に気を使うことを覚えたら、老後の生活も変わるかもしれませんね。
クリックしてくれたら嬉しいです