小心者の私はもともと接客業には向いていないのかもしれません。

まだ新人のころ、とても困っていたことがあるんです。


フリーのお客さんをお出迎えして顔を合わせるとき、お客さんの態度によって自分のサービスが変わってしまっていたんです。




あからさまに『タイプじゃないなぁ』とガッカリした顔をする人もいれば、ニッコリ笑って「綺麗な子で良かった!」と言ってくれる人もいます。



ここら辺は好みの問題なので仕方ないんですよね。




私は前者のお客さんの場合、遠慮してしまうんです。


『このお客さん、好みじゃない私がこれをやったらイヤかもしれない』
『タイプじゃないとキスもしたくないだろうなぁ』

『なんとかして嫌われないようにサービス頑張らなくちゃ』




色々なことが頭の中でグルグル回ってしまい、積極的なサービスができなくなってしまっていたんです。


マットやベッドでただ抜くことばかり考えてしまって、ムードもへったくれもありませんでした。




結果、『色々頑張ってくれたけど、それだけ』なんて評価をいただいてしまうわけです。



そんな悩みを44話に登場した加賀さんに相談したことがありました。




ユキ「どうしてもお客さんの顔色ばかり見てしまって、つまらなそうな顔をされると一歩引いちゃう…。」



加賀「そういう話は聞いたことあるなぁ、気にしなきゃいいんだよ。」



ユキ「でも気になっちゃうんだもん…、タイプじゃなかったりとか。」



加賀「人の好みは色々だからね、誰もが好みの女の子なんていないに決まってるんだよ。」



ユキ「そうかもしれないけど、ハッキリ言われたり顔に出されると気持ちが萎えるじゃない。」



加賀「それでもニコニコしていればいいんだよ。男なんて単純だから、相手が笑っていれば好みじゃなくても可愛く見えてくるものだから。」




この言葉を聞く前は、好みじゃないと思われたらどんなに頑張っても無駄だと思っていたんです。


でもそうではなかったんですね、容姿の問題も大きいですが、一緒に楽しい時間を過ごせるかどうかもお客さんにとっては大事だったんです。



好みじゃない女の子が出てきてガッカリしているときに、その子があまり笑わなかったり甘えてこなかったりしたら余計にイヤになるんですね。




私はそういう場合、事務的だったと思います。



加賀さんのアドバイスを実行するようになってからしばらくして、こんなお客さんに付きました。




ユキ「はじめまして~、ユキです!」



遠藤「お前ブスだなぁ~(笑)好みじゃないけど、まあいっか(笑)」




正直言って、くじけそうでした…


女性としては泣いてお家に帰りたくなっても無理はない言葉です(涙)



でもとりあえず頑張ってみることにして、ニコニコ笑い続け普段どおりのサービスをします。


結局この遠藤さんは2時間の間に数え切れないくらい「ブス」という言葉を吐いてお帰りになりました。




帰り際もフロントに向かって




遠藤「あ~、ブスでつまらなかった!」




と笑いながら言って帰ったんです。




ところが2~3週間後、今度は本指名で遠藤さんがお店にやってきました。




ユキ「ご指名ありがとうございます!」



遠藤「おう、元気だったか?お前相変わらずブスのくせに楽しそうにニヤニヤしてるな!」



ユキ「だって遠藤さんが指名で来てくれたから、嬉しいじゃないですか!」



遠藤「ブスって何回も言われて笑ってるのはお前くらいだぞ、他のは怒って余計ブスになるんだ(笑)」




この言葉を聞いて思ったのは、加賀さんの言うとおり笑っていれば可愛く見えてくる、逆に仏頂面をしていれば余計に好みじゃなくなるってことですね。




当たり前のことなんですけど、お客さんの反応を見て消極的になっていたときには考えもしないことでした。



加賀さんのおかげで、自分の苦手なお客さんにも笑顔を向けられるようになりました。





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