「じゃあ次はキミが脱いで。」

その言葉に私は反射的に……


「え?私も脱ぐんですか?」


と聞き返してしまった。




「脱がなきゃ始まんないだろうっ!!脱がずにどうやって覚えるんだよっ!?」


無愛想でぶっきら棒で……そして突き放つように発せられたその言葉に……

私は心の最後の留め金を外されてしまった。


ポロポロと溢れ出す涙。

それは頬を伝って顎先から床へと零れ落ちた。


その様子に目の前の全裸の男は……


「ちょっと頼むよ……。

 アンタだって判って来てんだろっ!?」


呆れ返りながら、ドスを効かせた。




いつだろう……。

いつ道を踏み外したんだろう……。


一年前までは、普通のOLだった。

それが今日からついに風俗店デビューだ。


あの日、「たまにはハメを外そう」と……同僚と行ったホストクラブ。

全てはアレがキッカケだったのかもしれない。


いつの間にか消えた貯金。

代わりに出来たのは借金だった。


OLでは追いつかない返済額。

仕方がないのでキャバクラでバイトを始めた。


そしてそこで溜まるストレス……。

それをまたホストで晴らす。


借金は一向に減る気配は無く……

気がつけばいつの間にか、見知らぬ裸の男を目の前にして……涙を零していた。




「何してるんだよっ!!

 早く脱げよっ!!」


怒鳴るように吐かれたその言葉に私はさらに涙を零し……体を震わせた。




いつだろう……。

いつ道を踏み外したんだろう……。


いつだろう……。

いつ道を踏み外したんだろう……。


唇を噛み締めながら心の中で繰り返す自問自答。


それでも今の私には、彼を受け入れるしか術は無かった。