シャドウ | 本との出会いは、師との出会い。

本との出会いは、師との出会い。

智慧は、先生から指導されて身につけるものではなく、自ら学ぶものです。ですから、先生が本であっても、生徒の意欲が高ければ、学習の成果が期待できます。書店には、素晴らしい先生方が、時代を超えて、いつでも待っています。

 最後の種明かしに唖然とさせられた『カラスの親指』に比べると、普通の作品で、読了後も違和感を感じなかった。

 三人称複数視点で綴られる物語は、語り手の多くが真実を隠していることをにおわせる内容で、不信感を拭いきることはできないが、それでも先を読み真相を知りたいという気持ちは湧いてくる。

 所々にまぶされたヒントによって推理をする楽しみが与えられるが、それは施しと言ったニュアンスが適切で、常に著者優位のデキレースであることを突き付けられているようだ。他の著者の作品のように著者との取っ組み合いを楽しむ感じが欲しかった。

 私が好きなミステリーは、ミステリーであるにも関わらず、著者が自らの葛藤などを物語に織り込むことで、読者に何かを問い、読者の行動を変容させようとする意欲を感じるものだ。登場人物に感情移入させ、読者自身の人生と照らし合わさせることで、自分を見直さざるを得なくなるものだ。

 言い過ぎかもしれないが、私が道尾作品を読んで満たされない感じを抱くのは、その問いや読者の行動を変容させようとする意欲が弱いところなのかもしれないと思った。そこに描かれる物語は、自分のリアルな生活と全く交わらない他人の人生であった。


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