- はぶらし/近藤 史恵
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追込まれているとは言え、まるで詐欺師のような周到さで鈴音の良心を追込み、自分の要求を通して行く水絵。鈴音は、自分自身の良心と損得勘定の間に挟まれ、苦悩するのであった。
深夜12時過ぎ、鈴音の携帯に表示された見知らぬ番号の主は、高校の合唱部で3年一緒に過ごした水絵だった。ファミレスで再開した水絵は子連れで、離婚してリストラに遭ったことを打ち明け、1週間だけ泊めて欲しいと泣きつく。鈴音は戸惑いながらも受け入れたのだが…
物語は、鈴音の生活圏という狭い範囲で進み、主な登場人物は、鈴音と水絵、7歳の耕太に過ぎないのだが、その展開は『サクリファイス・シリーズ』のようなスピード感があり、ついつい文字を読み飛ばしてしまう程、先を急いでしまう。
追込まれているとは言え、自分の論理でずうずうしい要求を突きつける水絵の態度が不快であると共に、結局、真摯に対応してしまう鈴音が、まるで自分のことのようにもどかしく心が揺さぶられる。
あり得ないと思う反面、近藤史恵さんご自身が似たような経験をしたのではないかと思う程のリアリティもあるので、読者も鈴音と共に、水絵の要求に対する対応を考えてしまうのではないだろうか。
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