- 変身 (講談社文庫)/講談社
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生きているということは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。
2013年の12月30日から読み始めた東野圭吾さんの『変身』を2014年、元旦の朝に読み終えました。冒頭では、池井戸潤さんの『民王』や高野和明さんの『幽霊人命救助隊』のように、コミカルなタッチで何かを風刺するような楽しい中にもピリッとした辛さを効かせた物語を期待させるような感じもあったが、結果的に極めて重い読後感でした。
私が読んだ作品の中では『眠りの森(1989)』の後の1991年に刊行された作品なので、東野氏が『名探偵の掟(1996)』で注目を集め、『秘密(1998)』で大ブレークする前の作品です。 当時は、脳移植という荒唐無稽な設定が受け入れられなかったのかもしれませんが、純一に現れた症状は、統合失調症でも起こりうる可能性が考えられることが示唆されており、そうだとすると、心理学や脳科学の分野から見てもインパクトの強い作品だったのではないでしょうか?
私は、このようなテーマの料理の仕方に著者の才能が感じられる秀作だと思う。
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