映画「奇跡がくれた数式」 平成28年10月22日公開 ★★★☆☆
1914年のイギリス。
数学者としてケンブリッジ大学で生徒を教えているG・H・ハーディ(ジェレミー・アイアンズ)は、
インドから届いた手紙に記されていた驚異的な発見に夢中になる。
差出人であるラマヌジャン(デヴ・パテル)を大学に招き絆を育んでいくハーディだったが、
ほかのそれにm教授たちは学歴もなく社会的階級も低いとして彼を拒絶する。
偏見や差別にさらされた末に重い病を患ってしまうラマヌジャン。
そんな彼に代わって、ハーディは数式の証明しようと立ち上がる。(シネマ・トゥデイ)
映画館で見そびれたのは→名画座で見る→ツタヤ宅配で予約する・・・
で、たいていカバーしているんですが、最近DVDでみた作品はなぜか、軒並み外れています。
半年くらい遡って調べてみたんですが、(懐かしの名作映画を覗いたら)良かったのは「アイヒマンショー」「エクスマキナ」くらい。
劇場と家のテレビじゃ環境もちがうけれど、それにしても「観なくて正解」な作品ばかりなのは残念です。
実は本作もちょっと残念な感じ。
主演がデヴ・パテルとジェレミー・アイアンズで、私のすきな実話もので、絶対見ようと思ってたのに・・・・
デブ・パテルは欧米映画のインド系青年の役はほぼ独占状態ですね。
「スラムドッグ・ミリオネア」「マリーゴールドホテル」「チャッピー」それに今公開中の「ライオン25年目のただいま」・・・
と、主役級キャストで彼以外のインド系俳優をみつけるのは難しいくらい。
そもそもインドは世界一の映画国ですから、ボリウッド俳優と言われる人はたくさんいるけれど、
彼らはハリウッド映画にはほとんどでないから(英語はできないわけないとおもうんですけど)
アーミル・カーンとかイルファン・カーンなんかをのぞいては、あんまりポピュラーじゃない感じ。
ボリウッド女優さんもありえないくらい美しい人多いのに、残念ですね。
ジェレミー・アイアンズも、昔は中世のコスチュームものとかが多かったのに、「バットマン」のアルフレッド役にはびっくり。
それにもまして、「学者役」がものすごく多くて
リスボンにさそわれて→ 古典文献学の教師
ハイライズ → 高名な建築家
ある天文学者の恋文→ 天文学者
そして本作では数学者ですから、文系理系ともになんでもござれ、ですね。
この映画の原作というわけではないんですが、「無限の天才」というラマヌジャンの伝記を図書館で借りて読んでいたんですが
あまりに難しすぎて途中でギブアップ。
映画になれば何とかなると思ったんですが、どうも数学って映像化するのが難しそうで、
たとえば「証明するのに成功した」というのだったら、黒板にすごい勢いで数式を書き並べたりすればいいんですが
彼がすごいのは、「天才的直観で定理がひらめく」ということで、かならずしも完璧に証明できるわけじゃないので
数字すらそれほど書かないし、そもそも彼は頭のなかですべて処理するようで、授業でもノートすらとりません。
どんな難しいことを考えているかが全く可視化できないから、本当に映画になりづらい人物です。
映画「イミテーションゲーム」のアラン・チューリングも数学者でしたが、
彼は今のコンピューターの開発をした人だから、あの巨大な原始的コンピューターがカタカタと動くさまは
なかなかのインパクトだったんですけどね。
本作でもラマヌジャンの業績を「観客にわかるように説明する」ことは早々に諦めたようで、
インドのマドロスからロンドンのケンブリッジ大学にやってきたインド青年が文化の違いや偏見に苦しみながら研究をつづける、
ありきたりの内容になっていました。
彼は普通の留学生ではなくて、インドにいる妻や母の生活も支えなくてはいけないんですけど、これでやっていけたのかしら?
文字の書けない妻が「私もイギリスに行きたい」と兄に代筆してもらった手紙をラマルジャンの母に託すんだけど、
母は嫁がイギリスにいったら息子は帰ってこないのではないかと心配して、一通も投函しなかった・・・・みたいな嫁姑問題とか
第一次大戦がはじまって、学生たちが次々に徴兵されているなか、外国人のラマヌジャンの立場が悪くなったり
心無い人たちに暴力を振るわれたり、当時は不治の病だった結核が悪化したり・・・・・
平凡な話で、別にラマヌジャンじゃなくてもいいような気がしました。
彼がなかなか受け入れられなかったのは「学位がない」ということなんですけど、学校行かなくて数学出来るか?
って思いますよね。
彼はたしか、(貧しくて学校に行けなかったのではなく)
数学にのめりこみすぎてほかの教科がおろそかになって大学を卒業できなかったんですよね。
生まれた家もけっして貧乏ではなかったと思うんですが、映画では「学もなく生活にも事欠いている」を強調するあまり
逆に不自然になっているような気がしました。
彼の理論がうラックホールの研究に役立っている」というエンドロールの一文でなんとか納得できた・・・その程度の作品でした。