映画「パッセンジャー」 平成29年3月24日公開 ★★★★☆
近未来、5,000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、人々の移住地に向かうべく地球を出発。
到着までの120年、冬眠装置で眠る乗客のうちエンジニアのジム(クリス・プラット)と
作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)だけが、予定より90年も早く目覚めてしまう。
絶望的な状況を打破しようとする二人は、次第に思いを寄せ合うものの、予期せぬ困難が立ちはだかり……。(シネマ・トゥデイ)
8年前「パッセンジャーズ」というアン・ハサウエイ主演のミステリーがありまして(感想はこちら)
それとかぶってしまうんですが、あちらは「航空機の乗客」ということですね。
本作は宇宙が舞台のSFで、「なぜにパッセンジャー?」と思ってしまいますが、これは宇宙船ではありますが、
地球を捨てて、ホームステッドⅡという「楽園」をめざす一般人の有料移住希望者たちが乗っていて
驚くのがその距離で、なんと片道120年!
乗客はもちろんクルーたちもすべて冬眠状態で飛行をつづけ、到着の4か月前に一斉に目を覚まして
到着まで宇宙船の旅を楽しむ・・・というのが本来の予定だったんですが、
(これは観客にしかわからないのですが)ある日隕石との衝突で船体が傷ついてしまいます。
リカバリー機能が働いて自動修復されるんですが、その過程で、
なぜか乗客のジェームス・プレストンのポッドだけが冬眠解除となってしまいます。
腕につけたIDで船内の施設はほぼ自由に使えるし、想像以上に快適な生活なんですが、
唯一の話し相手はバーデンダーのアンドロイド、アーサーだけ。
地球を出発してまだ30年、あと90年を一人ぼっちで生きて、寿命が尽きるのを待つだけ、
という悲惨な現状を知ったジムは
自堕落な生活でひげぼうぼうの原始人みたいな風貌に。
ところが眠っている乗客のある女性に恋をしてしまうんですね。
「死ぬ運命の男が理想の女性に出会ってしまった・・・」
散々悩んだ末に、マニュアルを熟読してポッドに細工をして、彼女、オーロラを目覚めさせてしまいます。
想定外に早く目覚めてしまったことにショックを受けるオーロラでしたが、唯一の仲間となってしまったジムと
次第に心通うようになり、二人の仲が親密になってきます。
もちろんジムがオーロラを目覚めさせたことは秘密で、アーサーにも口止めしていたのですが
「ぼくら(ジムとオーロラ)の間に秘密なんかない」という言葉を聞いて、アーサーは口止めは解禁されたと思い
オーロラにしゃべってしまうのです。(空気読めるアンドロイドだと思ってたけどやっぱりダメですね)
「どうしてそんな残酷なことを!」
半狂乱になったオーロラに、ジムは、自分のやらかしたことをどう埋め合わせして許してもらえるか?
ひたすらこの路線で後半のストーリーは進みます。
険悪になったところで、冬眠から覚めた人間は二人だけ。
オーロラは作家だし、ジムはエンジニアとはいえロケットのシステムなんてわかるはずもないのに
ドア、エレベーター、朝食の機械、掃除ロボットなどにはじまって、、次々に宇宙船のトラブルが起こります。
乗組員のガスが目覚めてくれたおかげで宇宙船の修理が進むも、一番重要な核融合炉が復旧する前に彼は死んでしまいます。
クルーだけがもつアクセスキーを渡し、「二人で力をあわせて船を直せ」という言葉を残して・・・
さて、また二人だけになってしまったジムとオーロラ。
彼らは危機を脱出できるのか?そして(治ったとして)残りの88年はどうすごすことになるのか?
という話です。
超閉所恐怖症の私にとって、「目を覚ましたら狭い冬眠ポッドの中だった」というのは恐怖以外のなにものでもなく
それだけで息がつまりそうになるんですが、ポッドは自動で開き、ホログラムの女性ガイドの案内もあって安心!
一人ではあるけれど、5000人分の食料やアメニティグッズもあるから、予想外に快適で驚きました。
私はひとりで好き勝手できるのが大好きなので、こんな楽しいことはないんですが、それじゃドラマになりませんね。
これSFではありますが、このへんてこな設定のおかげで、あんまりサイエンスな感覚は無くて、
「わかりやすい人間ドラマ」になっています。
登場人物がほぼ二人しかいないのに、物足りなさはまったくないです。美男美女だからかもしれないけれど・・・
「演技派」のジェニファーが本作ではナイスバディを披露してくれるのにも驚きました。
X-menのミスティークでも「ウィンタースボーン」でも、どちらかというと「もっさりしたちょっと冴えない子」だったのに
今回は身体もはるし、いちいちエロいし、オスカー女優がここまでするか?!
逆にクリス・プラットは「ちょっと前までデブだったスター」というイメージがあるんですけど
オーロラと出会う前にのダラダラしてた1年間はホントにブヨブヨの身体になってたから、
「体重増減自由自在」に成功したんでしょうか?
ハリウッド俳優の肉体管理は凄いとあらためて思いました。
大昔のSF映画の中に出てくる宇宙船の内部は、例えば「惑星ソラリス」とか、どう考えても豪華客船のキャビンなんですけど
本作もそんな感じでした。
訓練された宇宙飛行士をのせるのではなく、一般人をのせるのだからアメニティ空間も必要でしょうが
あの巨大プールはやりすぎでは??
電力は核融合炉を積んでいて充分だとしても、宇宙では水は貴重品だと思うんですけどね。
90年も早く目覚めてしまったジムが、地球のホームステッド社にクレームのメールを送るも、
「お届けは19年後です」の返答に笑いましたが、
それならそもそもこの120年の旅に何の保証もないわけで、宇宙船に穴が開かないまでも
生命維持装置が120年もつことのほうがキセキって感じです。
すぐ停電してしまうような環境で120年前に積んだ食品を食べるのも不安なんですけど・・・
・・・なんて考えるのはNGで、ジムとオーロラの深い深い関係に身をゆだねるのがよろしいかと思います。
オーロラというのは「眠れる森の美女」のディズニー版ヒロインの名前で、
意識不明の恋人を「キスで目覚めさせる」というのも白雪姫だし、誰でも気づくオマージュをいれてるのも
「あんまり頭を使わないで楽しむ」映画だと思われます。
一見「ゼログラビティー」や「インターステラー」みたいなちゃんとしたSFに思えますが、
ちょっとビジュアルが豪華なシチュエーションドラマだと思えば、とっても面白くてオススメです。