映画「相棒 劇場版Ⅳ 首都クライシス人質は50万人!特命係 最後の決断」 平成29年2月11日公開 ★★★★☆

ノベライズ「相棒 劇場版Ⅳ」 大石直紀(映画脚本 太田愛) 小学館文庫 ★★★★★

 

 
7年前、駐英日本領事館関係者の集団毒殺事件で生き残った少女が国際犯罪組織に誘拐されていた。
そして現在。特命係の杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)は、国際犯罪組織バーズを追って来日した
国連犯罪情報事務局の元理事マーク・リュウ(鹿賀丈史)に同行することになる。
そんな中、7年前に誘拐された少女の現在の姿の動画が公開され、犯行グループは身代金を要求し……。(シネマ・トゥデイ)
 
テレビドラマを全く見ない私でさえ、ほぼほぼ毎回見ているのがテレビ版の「相棒」
再放送も見てるから、見逃した回はないかもしれません。
1時間ドラマでも(多少の当たりはずれはありますが)充分楽しめる相棒を「お金を払わせて大画面でみせる」のですから
肩に力がはいるのが当然で、過去の三作とも「ちょっと頑張りすぎ」な感じが否めないんですが、今回は??
 
先にノベライズを読み始めたら、これがとても面白くて、でも元ネタではなくノベライズですから
さすがに最後まで読むのはまずいので、あわてて映画館に急ぎました。
 
ストーリーをどこまで書いて大丈夫か心配ですが、メインのストーリーは、国際テロ組織からの身代金誘拐。
7年前に誘拐された少女の700万ユーロの身代金要求をはねつけた日本に対して
「大勢の人々の見守る中で日本人の誇りが砕け散るだろう」と不気味な声明を送ってきます。
 
これが何を指すか?というのはすぐには明かされないのですが、サブタイトルでほぼネタバレしているという大失態。
「特命係最後の決断」というのも、何が最後なんだか、全編見ても分かりませんでした。
ホントにこんな長いサブタイトル要らないです!
 
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今回オリジナルのストーリーに、「みんな大好き相棒メンバー」のキャラも全開で、相関図はなかなか複雑になってます。
 
冒頭は、7年前に誘拐された在英大使館参事官の10歳の娘の誘拐の日の記憶から。
マザーグースの歌から始まるノスタルジックな情景から一転しての惨劇。
ノベライズはドキドキしながら読んだんですが、映像のほうはちょっと安っぽかったかな?
かくれんぼをしていてただ一人生き残った少女、エリカが事件現場から連れ去れ、身代金要求されるも
日本政府がそれに応じなかったため、エリカは生死もふくめ行方知れずとなります。
 
そして現在。
国際犯罪組織バーズのレイブンを追っている国連犯罪情報事務局理事のマーク・リュウに同行していた特命係の二人ですが
リュウの部下は「アマガイカツノリ」という言葉を残して、レイブンの一味と思われる人物に射殺されてしまいます。
東京では謎の集団中毒事件が起き、リュウもそれに巻き込まれ、つづいて、7年前の事件が蒸し返されます。
 
直後にレイブンからの犯行声明と、成長したエリカと思われる女性が中毒事件の新聞を持って現れ、
身代金700万ユーロを要求する映像が公にされます。
水面下で交渉しようという警察庁の甲斐に反して、副総理や山崎警察局長は「テロとは断固戦う」の姿勢を貫きます。
つまり、エリカは二度までも日本に見捨てられたわけです。
 
「大勢の人が見守るなかで日本の誇りが砕け散るだろう」の不気味なメッセージに、
当初、7年前エリカの身代金誘拐事件を握りつぶした当時駐英大使の岩井孝信が国際会議で東京にきているので
彼が衆人環視のなか襲撃されるのでは?と予想するのですが、
50万人・・・のサブタイトルから、そうではないことは明白。
 
50万規模の大群衆というと「東京マラソン」が連想されますが、これはもう「劇場版Ⅰ」でやってしまっているので
そうなると、残っているのは、銀座に大群衆が押し寄せる「オリンピック選手のパレード」ですよね。
ただ、オリンピックのロゴとかは勝手に使えないから、世界スポーツ競技会とかいってましたが
帰国した選手たちのパレードに、日の丸の小旗をもった人々が集まります。
 
アマカイカツノリの該当者は見つからなかったものの、1959年の特別措置法により戦争中に亡くなったとされるリストに
もし生きていれば80代となっている、この人物の名前がありました。
彼もまた「日本に見捨てられた少年」だったわけです。
 
急に戦時中の「特別な事情」が出てくるあたり、松本清張のミステリーではよくあるパターンですが
最近では珍しいですよね(年齢、限られてしまうし)
ただ、特別措置法で死亡したとされるのは別に見捨てられたわけでもないし、(そうしなくちゃ遺族に恩給も出ないし)
請求すれば、戸籍も復活できるんですけどね。
 
さて、クライマックスは銀座を埋めた大パレードなわけですが、
残念ながら全然銀座じゃないから、テンション落ちまくりでした。
どうも北九州で撮影したらしいんですが、CGでいいから、ちゃんと銀座感を出して欲しかったです。
「グラスホッパー」では、千葉のつぶれたショッピングモールに渋谷のスクランブル交差点をそっくり再現して
ものすごい完成度でしたけど、製作費はそういうのに使って欲しかったです。
ただ、第一話とちがって、ラストにクライマックスをもってきたのは良いと思いますけど・・・
 
映画を観てから、ノベライズも最後まで読みましたが、皮肉なことにこっちのほうが断然面白い!
驚いたことに、真犯人(というかレイブンの正体)が映画とはちがっているのです。
ネタバレになりますが、映画では↑の相関図の誰かがレイブンなんですけど、ノベライズでは第三者となります。
映画脚本のボツネタなのか、大石さんのオリジナルなのか不明ですが、私はノベライズの方が好きだな~
登場人物たしかに多すぎますけど、一人くらい増えたってこの際いいような気もします。
 
おなじみのレギュラー陣はそれぞれちゃんと見せ場があって、テレビファンにはたまらないです。
米沢さんも神戸くんもちゃんと登場します。
伊丹さんは相変わらずドジで熱血だし・・・・
「山崎警察局長」という新たなヒール役がテレビ版で最近登場し、今回も存在感大きいんですが
申し訳ないけど菅原大吉では岸部一徳には代われないな、と思いました。
ちなみに、ノベライズでは、山崎はかなりのキーパーソンとなっていますよ。
 
ゲスト出演者で驚いたのは、岩井元駐英大使が江守徹だったこと。(いい声!)
けっこうなメイクをしていたので、エンドロールをみて初めて気づきました。
 
若き日のアマガイを語る彼の従妹を演じる佐々木すみ江の上手いこと!
彼女のお話で、もう回想シーンとか必要ありません。それくらいの名演でした。
↑の相関図にものってないんですけどね。
 
一番残念だったのは、ヒロインのエリカ役の子の演技がポンコツだったこと。(ビジュアルはイメージそのものですが)
これ、新人にはめちゃくちゃオイシイ役だと思うんですが、ホントに何とかならなかったのか・・・?
 
ついでにいうなら鹿賀丈史も、芝居が大げさで浮いてました。
単に好き嫌いの問題なんでしょうが、彼はやっぱり「舞台で映える人」なんだと思います。
 
ただ面白い作品であることは確かです。さらにノベライズを読むと二度楽しめますよ!