映画「ブルーに生まれついて」 平成28年11月26日公開 ★★★☆☆

 

 

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1950年代、黒人のアーティストたちが中心だったモダンジャズ界へと飛び込んだ、

白人のトランペッターでボーカリストのチェット・ベイカー(イーサン・ホーク)。

優しい歌声と甘いマスクで人気を博した彼は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲を放つ。

しかし、ドラッグに溺れて破滅的な生活を送るようになる。

そんな中、自身の人生を追い掛けた映画への出演を機にある女性と遭遇。

彼女を支えにして、再起を図ろうとする彼だったが……。    (シネマ・トゥデイ)

 

音楽にはなんの知識もないくせに、ミュージシャンを描いた映画は大好きで、本作も初日の初回に鑑賞。

 

 

初日プレゼントで、コースターをいただきました。

これ、見覚えあると思ったら、南青山のジャズクラブ、ブルーノート東京で使ってるコースターと、同じデザインでした。

 

 

右のがお店で使っている方で、左が今回のプレゼントの裏面。

ポストカードとかステッカーとか頂くことは多いですが、これはしゃれてるし、チラシと保存できるし

実際に使えるし、お店の宣伝にもなるし、すごくいいですね。ライブに行った気分にもなれました。

 

チェット・ベイカーは1929年生まれ。

50年代半ば、20代の頃には一世を風靡しましたが、ヘロイン依存でたびたび警察沙汰を起こし

第一線からは遠ざかっていましたが、自伝的映画に自ら主演をします。

本作は、その撮影をするところから始まります。

落ち目になってから自分の自伝を自分が主演で撮るのって、かなりビミョーですよね。

まだ知名度はあるから「あの人は今」的な需要があったってことでしょうが、本人にとってはけっこう痛いと思います。

 

1954年、NYバードランドで、「カリフォルニアから来たジャズ界のジェームズ・ディーン」と紹介され喝采を受け

そのあと娼婦とドラックを吸ってセックスしてるところを妻に見つかり、万事休す!

と思ったら、それは「映画のなかの映像」で、監督のカットの声が入ります。

 

(すでにその時は離婚していた)妻エレインの役を演じた女優ジェーンとのアドリブも好調で、

「この映画で復活できるぞ」と意気揚々だったのですが、

撮影をしている時期に、ドラッグの売人から激しい暴行を受け、首を損傷、前歯を失い、頬骨をおる重症。

トランペット演奏者としては致命的なケガを負ってしまいます。

映画は打ち切りとなり、永年支えてくれたディックも、「もう面倒は見られない」と去ってしまいます。

 

あとに残ったのはジェーンだけ。

彼女の献身的な愛を受け、ヘロインをメタドンに置き換える治療で、演奏活動を復活させようとしますが

なかなかうまくいかず、ピザ屋でのライブが精いっぱい。

ジェーンのトレーラーに住み込み、結婚を考えるも、ジェーンの父親にも冷たくあしらわれる始末です。

それも彼の本気度が伝わったか、ディックがまた戻ってきてくれ、大御所デイジー・ガレスピーの口利きもあって

「バードランド」で一夜限りのライブが行われることになり、若い頃ここで酷評されたマイルス・デイビスも来ると聞き

チェットの緊張は最大限に達します。

さて、彼は観客を唸らせる演奏ができるか? ヘロインを完全に断つことはできるか?

っていう話です。

 

 

チェット・ベイカーについては、先日買った雑誌とかYouTubeとか聞きましたが、正直、上手いのかどうかわからない。

マイルス・デイビスとかルイ・アームストロング並みの存在感があるわけでもないし、

演奏だけで言うと、(クラシックですけど)モーリス・アンドレくらい超人的だったら、私なんかでも凄さが実感できますが

絶頂期の演奏を聴いても、なんかピンときません。

まして前歯をすべてなくした後に「テクニックの使えない分、味わいがでてきた」とか言われてもねぇ・・・・

 

もうひとつ、チェットの人気の秘密が「歌」なんですけど、彼の歌声はハスキーな女性歌手がうたっているようで

耳元に息をかけられてるような、甘えられてるような・・・・

イーサン・ホークはその辺、完璧に再現していたように思います。

演奏のほうも、トランペットは、ピアノやギターと違って吹替もできないから、ホントに猛練習したんだろうなぁ・・・・

 

「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」とか、好きな人にはたまらないと思うんですが、個人的にはあんまり好みでなく

先日DVDで見た、クリントイーストウッド監督の初期の名作「バード」のほうがずっと面白かったです。

これはサックス奏者チャーリー・パーカー(愛称バード)のドラマで、彼は若い日のチェットを見出してくれた人でもあります。

彼は早世してしまいましたが、彼の相棒デイジー・ガレスピーは、チェットの再起への後押しをしてくれたけれど

あの後はどうなったのでしょう?

 

この時代のジャズマンたちは(ほとんど黒人ばかりでしたが)ドラッグ依存や過度の飲酒や喫煙などの

不健康な生活してないほうが珍しいくらい・・・なんですけど、

チェットは(自身の健康障害以外に)トラブルメーカーだったのがマズかったんでしょうね。

失敗してもなかなか懲りないダメダメさが彼の魅力なのかもしれませんが、常人にはとてもついていけません。

 

その中でずっと彼を支え続けたジェーンには頭が下がります。

彼女はチェットを気にかけつつも、女優になりたいという自分の夢も実現したくてオーディションも受け続けていました。

実在の人物かどうかはわかりませんが、彼女のような人にこそ、ハッピーエンドを用意して欲しいな。

 

カルメン・イジョゴは「グローリー」でもキング牧師を支える優しくてクレバーな妻を演じていました。

美人の黒人女性を見ると、私の目には全員ゾーイ・サルダナに見えてしまって困ったものです。

でも、似てますよね? (右がカルメン)