映画「ガール・オン・ザ・トレイン」 平成28年11月18日公開 ★★★★★

原作本「ガール・オン・ザ・トレイン」 ポーラ・ホーキンズ  講談社文庫

 

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夫トム(ジャスティン・セロー)と離婚し、深い悲しみに沈むレイチェル(エミリー・ブラント)。

そんな彼女を慰めるのが、かつてトムと暮らしていた家の近所に住む夫婦の仲むつまじい姿だった。

通勤電車の窓から二人を眺めてはトムと過ごした日々を思い出す彼女だったが、その夫婦の妻が不倫にふけっている現場を目撃する。

次の日、電車を降りて彼らの様子を確かめようとするが、不意に記憶を失ってしまう。

やがて自分の部屋で大けがを負った状態で目を覚ましたレイチェルは、その人妻が死体で発見されたのを知るが……。

                                                (シネマ・トゥデイ)

 

この映画の予告編を観たことなかったので、リストにはいれていなかったのですが、COCOでの高評価につられて鑑賞。

「ゴーンガール」に匹敵するようなゾクゾクするミステリーでした。

 

レイチェルは通勤電車の車窓から見えるベケット通り15番地の一軒の家が気になっていて、

そこに住む夫婦に妄想を膨らませて、勝手に「自分の理想」を重ねていました。

 

というのも、レイチェル自身が結婚に失敗していたから。

どうしても子供が欲しいレイチェルは何度も人工授精に失敗し、

不妊治療が長引くいらいらからアルコール依存症になり、

夫のトムは不動産屋のアナと不倫を重ね、結局トムとレイチェルは離婚。

二人が住んでいた家に後妻としてアナが住んで、二人の間には赤ちゃんも生まれたのです。

 

レイチェル、メーガン(レイチェルが理想だと思ってる女性)、そしてトムの後妻のアナ。

この三人の女性の目線で交互にストーリーは進みます。

 

実はメーガンは、トムとアナの赤ちゃんのベビーシッターをしていたことから、三人はつながっていることが

おいおいわかってくるのですが、時間軸もたびたび動くので、なかなか理解しにくいうえに、

レイチェルはアル中でたびたび意識を亡くしたり、映像として映ってはいてもそれは酔っ払い目線で、

それが現実か妄想かの区別のつきづらいので、ともかく全編とおして一筋縄ではいきません。

 

離婚して2年。住むところのないレイチェルはキャシーのところに居候しているのですが、

飲酒で仕事をクビになったことも内緒で、酒を飲んでは、トムの家に嫌がらせの電話をかけるような女性なので

他人から見たら「アル中のイカレ女」でしかないんですけど、レイチェルだって本当はこんな自分から変わりたい、

「血だらけあざだらけで記憶をなくして目覚める惨めさ」から早く抜け出したいと、断酒セミナーに通うものの改善の兆しなし。

 

ある日、例の家の女性(メーガン)が、夫ではない男性とポーチでキスしているのを目撃し、ショックを受けます。

どうしても許せないレイチェルは、最寄りのアーズリー・オン・ハドソン駅で列車を降り、泥酔して歩いているうちにブラックアウト。

血まみれの状態で家で目覚めるのですが、やがて、ニュースで、メーガンがこの日(金曜日)から失踪していることを知り、

「この日の昼間に違う男性とキスしてた」情報をメーガンの夫、スコットに伝えると、

実はスコットは妻のメーガンとカウンセラーのカマルとの仲を疑っていて、レイチェルの目撃した男と似ているので、即警察へ。

 

ところが、警察は、アル中で度々事件を起こしているレイチェルを全く信じておらず、

メーガンがカマルにスコットの家庭内DVを相談していたことがわかって、逆にスコットに不利になってしまって

「お前はメーガンと友達と言うのはウソで、イカれた、アル中女なんだろ」

「お前とできてると疑われて迷惑だ」

「暇をもてあました嘘つき女!」を散々ののしられるのですが、めげない彼女は

今度は「依存症によるブラックアウトの治療」のために、カマルと接触しようとします。

 

やがて、メーガンの腐乱死体が見つかり、殺人事件に切り替わると、スポーツバーの監視カメラに写っていたスコットは釈放され

今度は、事件現場そばで泥酔しているのを目撃されているレイチェルにも疑惑の目が・・・

 

彼女は偶然列車の中であった夫の元上司の妻に、以前迷惑をかけたことを謝罪すると、

彼女から意外な事実を告げられ、今まで思い込んでいたことが間違っていたことを知ります。

殺されたメーガンが妊娠していたことから、真犯人が浮かび上がり、怒涛のような結末へ・・・

 

↑時間軸がたびたび移動するので、勘違いもあるかもしれませんが、だいだいこんな展開。

もちろん、これ以上は絶対に書けません。

 

この映画の画像は、タイトル通り、ほとんどが↑のような、列車の窓から外を眺めるエミリー・ブラントの姿。

「車窓から見えるものから、ついつい妄想を膨らませてしまう」というのは私も同じなんですけど、

その光景から現実の事件が浮かび上がったりゆがめてしまったり・・・そんなストーリーかと思ったら、

意外と「トレイン」はあまり出てこなかったです。

 

ただ、窓から見えるある光景から深みにはまり、車内で見かけた人に声をかけたことから

もやのかかった部分に光が当たったのですから、やっぱり「列車にはじまり列車に終わった」といえるかもしれません。

 

でも主役は電車ではもちろんなくて、三人の女性の女性ならではの悩みや弱みやトラウマなど。

レイチェルが依存症になったのは不妊が原因で、トムとアナの赤ちゃんを思わず抱いて逃げル「犯罪行為」に走ったり

隣の席の赤ちゃんを構い過ぎてドン引きされたりするのも、誤解されやすい特有の症状なのかな?

逆に、17歳で産んだ赤ちゃん(リビー)を不注意で亡くしたメーガンは、妊娠はしやすいのに、

子どもを生むことに躊躇してしまうというのも、女性の心理なんでしょう。

 

それにひきかえ、快楽のためにお気楽にSEXしてしまうのが男たちなんでしょう。

カマルは精神科医のくせに、ちゃんと女性の心理を理解しているようにも思えなかったし

警察だって、うわべだけを見て、レイチェルの人間性まで否定するようなことをいう無能な集団!

とはいうものの、私もその場に居合わせたら、同じことを考えたかもしれません。

 

ストーリーも二転三転して目が離せないけれど、エミリー・ブラントのどんよりしたアル中演技がスゴイ。

いつも性格きつめの役が多いのに、本作では自分を見失っていて、自信のもてない女性です。

元夫のトムはアナに「レイチェルは哀れな女で無害なんだよ」というんですが、この言葉がカギになるひとことだったかも?

 

アナ役のレベッカ・ファーガソンの名前に聞き覚えあると思ったら、なんと「MIローグネーション」で

 

 

すんごいアクション全開の女優さんだったのに

本作では煙るようなブロンドのか弱い妻で、全くの別人でした。

精神科医のカマル役のエドガー・ラミレスだって、「Xミッション」ですごいパルクールをこなしてた人だったのに

ほとんど動かない静かな医者でした。

 

ところで、「アーズリー・オン・ハドソン駅」を帰って調べたら、メトロノース鉄道に実在する駅でした。

NYのグランド・セントラル駅まで34.9km、47分かかり、1日の乗車人数420人の郊外の地味な駅。

線路の横に広がるのは海ではなくて、ハドソン川なんですね。

 

 

原作は未読ですが、これはすぐにも読みたいです。