画「聖の青春」 平成28年11月19日公開 ★★★☆☆
原作本「聖の青春」 大崎善生 角川文庫ほか 

 


 

 

幼少期から難病を患う村山聖は、入退院を繰り返す中で将棋と出会い、15歳で森信雄に師事する。
10年後、名人になる夢をかなえるべく上京した聖(松山ケンイチ)は周囲に支えられながら将棋に全力を注ぎ、
七段に昇段したころ、同世代で名人のタイトルを獲得した羽生善治に激しいライバル心を抱く。
さらに将棋に没頭する聖だったが、がんが彼の体をむしばんでおり……。  (シネマ・トゥデイ)

 

松山ケンイチが20kg体重を増やすという壮絶な役作りで主役とつとめた・・・・と、そればかりが強調されていますけど

村山聖は太ってるというよりは、ネフローゼのためにむくんで、顔も薬の副作用などでムーンフェイスになってるだけで

「肥満」とはちがうのになぁ~と違和感を覚えながら鑑賞。

 

1994年、桜が満開の大阪の街のごみ置き場で倒れている青年。

気づいた人が助け起こすと、「将棋会館へ送って下さい」と。

そこでは竜王戦が行われていて、対局室では対戦相手がすでに彼、村山聖の到着をまちわびていたのです。

重いネフローゼを患っている彼は、体調不良で不戦敗になることもよくあったようですが、

ぽっちゃりした体に伸び放題の髪や爪。散らかった部屋で漫画本を読みあさる彼は、まさに「変わり者」でした。

 

広島生まれの彼は師匠の森信雄門下に入り、大阪に住んでいました。

東の森内、羽生、佐藤、郷田に対して

「西の怪童、村山」といわれる実力者で、若手のホープでした。

 

更科食堂とかスーパー玉出とか、大阪のゆかりの場所みたいなところがいろいろ映りますが

私は大阪に全く土地勘なくて、ついでに、将棋のルールも全くわからないので、ちっとも楽しくありません。

「シュークリームはミニオン」

「お好み焼きはみっちゃん」

「牛丼は吉野家」

とかいわれても、最後のしか私にはわかりません。

 

このあと、彼はライバルの羽生に憧れて、東京で一人暮らしを始めるのですが、千駄ヶ谷の東京将棋会館周辺は全く映らず

「東京はうどんがまずい」とか「東京の人はみんな冷たい」とか、若干不愉快なんですけど・・・

 

彼はネフローゼに加えてステージ3Bの進行性の膀胱がんも発症。

この時A級を陥落していたのですが、手術直後の体調のすぐれないなか、1期でA級に復帰し

そしてそのまま29歳の若さで亡くなってしまいました。

 

将棋のルールがわからないから、このドラマの面白さもほぼ理解できてないと思うのですが

そんな私でも唯一感動したのが、雪の夜の、羽生との二人きりの会話。

 

羽生との対局に勝利した聖は、その夜、羽生を近所の食堂に誘います。

そこで「イタキス(「イタズラなKISS」という少女コミック)知ってます?」とか

「麻雀やります?」「競馬は?」とか、とんちんかんな質問をして、

「え?チェスならすきです」と答える羽生に

「(ぼくたち)趣味あいませんね」

 

そしてふたりは、かみ合わないながらも将来の夢を語り合います

「私は今日あなたに負けて死にたいほど悔しい。負けたくないというのが私のすべてです」

「羽生さんの見ている海はみんなとちがう」

「深くもぐりすぎてもどってこられなくなるかもしれない」

「でも村山さんとならいける気がする」

「いつか、いっしょに行きましょう」

「はい、行きましょう」

 

こんなような会話だったと思うのですが、この時のふたりは、ライバルの関係を越えた

すごい絆で結ばれている気がしました。

 

 

羽生善治を演じた東出昌大のたたずまいが、まさに羽生名人のそれで、神々しいまでのオーラに圧倒されました。

「東出昌大はどんな役でも、しゃべらなければ最高」!と失礼なことを以前に書きましたが、この作品に関しては

「しゃべっても最高!」でした。

演技巧者の松ケンが完全に食われてました。

実在の人物をここまで演じたのは、モっくんの昭和天皇に匹敵するかも?

 

ところで聖の大好きだった「イタズラなKISS」は実写版が映画となり、11月25日から公開されています。

まさか「聖の青春」と同じタイミングで劇場公開されるなんて、すごい偶然ですね~

 

 

ところで、「聖の青春」はすでにテレビでも藤原竜也主演でドラマ化されており、演劇にもなってます。

私は10年以上前の地元の子ども劇場の中学生例会で、たしか劇団コーロの舞台劇で観た記憶があります。

 

その中で一番記憶にのこっていることは、彼が「照葉樹林になりたい」と何度も言っていたこと。

「針葉樹林」でも「広葉樹林」でもない、この言葉の意味がわからず、家へ帰って調べた記憶があります。

原作本のなかにもこの記述はなく、(映画の中にもなかったです)私の勘違いかと自信をなくしたのですが、

彼のお墓には、将棋の駒の形の墓石に「座右銘 照葉樹林」という文字がしっかりと刻まれています。

 

 

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