映画「インフェルノ」 平成28年10月28日公開 ★★★★★
原作本「インフェルノ (上・下) ダン・ブラウン
記憶喪失状態でフィレンツェの病院で目覚めたロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は何者かに命を狙われるも、
医師のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)の手引きで事なきを得る。
やがて二人は、人口増加を危惧する生化学者バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)が
人類の半数を滅ぼすウイルス拡散をたくらんでいることを知る。
彼らは邪悪な陰謀を阻止すべく、ゾブリストがダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」に隠した謎の解明に挑むが……。
(シネマ・トゥデイ)
「ダvンチコード」「悪魔と天使」に続いてダン・ブラウンのロバート・ラングドン教授シリーズの新作です。
実は私はこの本をまだ読んでいなくて、図書館で借りたものの結局読めないまま返却と言う恥ずかしい状況。
DVDスルーも考えましたが、やっぱり大作は大画面でしょ!ということで、映画館へ・・・
前二作は、ヨーロッパの美術、音楽、宗教などの専門知識を駆使しての壮大な謎解きゲームで
それは本作でも踏襲されていますが、今回はラングドン自身が短期の記憶喪失になっていて
自分が何かをやらかして命を狙われていることはわかっても、誰が信用できるのかもわからないまま
傷の手当てをしてくれた女医のシエナと、暗号を解きながら、国家レベルの追手をかわしながら、
フィレンツェ、ヴェネツィア、イスタンブールの宮殿や遺跡をたずねあるくという、なかなかてんこ盛りの映画でした。
原作読んでないので比べようがないんですが、あいまいな記憶のなかに登場する人物が
ボッチチェリの地獄の絵画の一部に同化していったり、思い出そうとして思い出せないもどかしさ、
こういうのは言葉をつくして説明するより、映像でぐっと伝わるものですね。
ヴェッキオ宮殿の五百人広場の巨大なフレスコ画や天井画の圧倒的な説得力も映画ならでは。
映画で観て、大正解でした。
トム・ハンクスは「ハドソン川の奇跡」の機長役が記憶に新しいですが、今回も宗教学者とは思えないくらい体張ってます。
このシリーズはこれからもつづくなら、ラングドン役は彼しかいません。
ヒロイン役はフェリシティ・ジョーンズ。
顔はズーイー・デシャネルとかジェマ・アータートンに似ているけど、雰囲気はアリシア・ヴィキャンデルにそっくり。
この手のタイプがヒロイン像として、多分今いちばん人気のあるんでしょうね。
ホーキンズ博士の妻役でブレイクしてから来月公開のスターウォーズの主役にも大抜擢です。
本作でも、ただの相棒役にとどまらず、かなり込み入った設定のヒロインを完璧に演じてたと思います。
ストーリーに全く触れていませんでしたが、今回の「敵」は、人類の半分が滅亡するウィルスをまき散らそうとしてる
大富豪の生体学者、ゾブリストです。
彼はテロリストでも殺人鬼でもなく、地球の「人口爆発」を危惧して「人口抑制」を真面目に考えている学者なのです。
食物や資源の不足だけでなく、それらをめぐっての争いが激化し、人間の精神の荒廃が広がると。。。
100年後に人類が全滅するよりは、今半分の人間を殺して、適正な人口を保持して生き延びようと。
過去の大飢饉や台風やコレラの流行も、悲劇ではあるけれど、反面然るべき人を救ってきたと言います。
ゾブリストは自殺するも、人類の半分を滅亡させるウィルスをどこかに隠していて、その封が解かれる時間が迫っており
そのありかを解くカギをラングドンが持っているらしいけど、彼本人が記憶障害で思い出せずにいて、
さらに彼を追いかけるのも
①WHO本部 (トップはラングドンの元カノ、エリザベス)
②WHOパリ支局のブシャール(オマール・シー)
③大機構と呼ばれる民間団体 トップはシムズというインド人(イルファーン・カーン)
と国際色豊かです。
③の雇った女殺し屋ヴァエンサは発砲しながらものすごい勢いで追いかけてくるし
①は組織が大きいから現地警察も巻き込んで、大規模な規制線をはったり、ドローンで探索したり
シエナのクレジットカード履歴とかメールにアクセスした場所とか瞬時に判明するから
これから逃げ回るのは無理だと思いますけど、宮殿の内部を知り尽くしたラングドンのアナログな情報で
けっこういい勝負するから面白いです。
どう考えても悪人にしか見えない人がそうでもなかったり、逆に、信頼してた人物にまんまと裏切られたり
ミスリードの嵐で、最後までドキドキしながら楽しめました。
これはボッティチェリがダンテの「神曲」地獄篇を図式化したもの。
ラングドンの持っていたポインターのなかに一部加筆されたものが収められていて
この細かい絵の中に秘められている暗号を解読する、しかも命を狙われながら・・・
という難儀な展開となります。
このほかにもダンテのデスマスクとか、五百人広場の「マルチャーの戦い」の巨大な壁画の中とかから
コードを解読してアナグラムを解いたり、こういう作業は人間がやるより、コンピューターの方が得意な気もしますが・・・
鍵を握る人物と思ったイニャツィオがフェイドアウトしてしまったり、よく分かってないこともあるので
原作はちゃんと読んでおこうと思います。
それから前二作との関係ですが、「閉所恐怖症」のエピソードと
ラングドンが大切にしていた「あの時計のこと」くらいしかなかったような・・・・
したがって、「ダヴィンチコード」「天使と悪魔」とは別物の映画として思って大丈夫と思います。