映画「高慢と偏見とゾンビ」 平成28年9月公開  ★★★☆☆
原作本「高慢と偏見とゾンビ」 セス・グレアム・スミス 二見文庫






18世紀のイギリスで、謎のウイルスが原因で大量のゾンビが出現し、人々を襲撃するという事件が発生。
田舎で生活しているベネット家の、エリザベス(リリー・ジェームズ)ら5人姉妹はカンフーを駆使して
ゾンビと戦う毎日を過ごしていた。
ある日、エリザベスは大富豪の騎士であるダーシー(サム・ライリー)に出会うも、高慢な振る舞いに嫌気が差す。
やがて、二人は共に戦うことになるが……。                    (シネマ・トゥデイ)

タイトルに「ゾンビ」がついた時点で、ふざけたB級映画と思ってしまいますが、
原作は7年前に書かれて世界中に翻訳されてる、そこそこ有名なマッシュアップ小説です。

時代設定も登場人物のキャラクターもほとんどそのままなんですけど、
なぜか大量発生したゾンビにおびえる日々。
ダーシーさまはゾンビハンターで、エリザベスは少林寺の遣い手という設定です。
原作者のセス・グレアム・スミスは映画「リンカーン/秘密の書」の元ネタ
「ヴァンパイア・ハンター・リンカーン」を書いた人でもあり
リンカーンはホントはヴァンパイアハンターだと言いきっちゃう人ですから、
ダーシーをゾンビハンターにしたって、全然びっくりしません。

女性が財産を相続できないこの時代、年頃の5人の娘たちの嫁ぎ先が最大の課題だったベネット家に
突然現れた資産家の独身男2人とこの家の財産の相続人になる従兄の神父が現れて
玉の腰を狙う娘たちや周囲の人たちがざわめき始めます。

ベネット家の長女ジェインは絶世の美女なので、ピングリー氏に見初められ、
従兄のコリンズ神父もジェインを狙ってたけど取られちゃったので、それじゃあと
次女のエリザベスに求婚するも、あっさり振られて
エリザベスの友達のシャーロットと結婚することに。

エリザベスはホントはピングリーの友人のダーシーが気になってるんですが
高慢な態度が気に入らず、エリザベスも(当時の女性としては)かなり気が強くて似たもの同士の二人。
このどこまでいっても平行線の二人が、ゆくゆくは素直な心にかえって「真実の愛に気付く」
という、恋愛ドラマのルーツみたいな流れは、オースチンの原作に忠実です。

「高慢と偏見」、(ないしは「プライドと偏見」)をみてなくてもある程度は楽しめるでしょうが
見どころシーンはほぼそのままなので、「観てないと(読んでいないと)もったいない!」と思います。

内容はラノベの原点ですが、まごう事なきイギリス文学の金字塔の作品に、
この先B級ゾンビ映画のエキスが容赦なくかけられます。

ゾンビハンターのダーシーはゾンビにたかる「死肉バエ」を使って「隠れゾンビ」を見つけ、
子どもだろうが知り合いだろうが、容赦なく切り捨てます。
ベネット家の女性たちもみんな東洋武術の遣い手で、戦闘能力高し。
エリザベスが強いのはいいとしても、おしとやかなはずのジェインまで戦うのはいかがなものか?
「プライドと偏見」では5人姉妹+シャーロットの個性がそれぞれ描き分けられていたのに
若い娘がわらわらといるだけで、誰が誰やら見分けも尽きません。
せめて認知度ある女優を使うか、妹は1人か2人で良かったんじゃないの?

マレフィセントのカラスのイメージの強いサム・ライリーがゾンビハンターはいいとしても、
女たらしの美形でなくてはいけないウィッカムがジャック・ヒューストンというのはダメですよ。
むしろ(名前知らないけど)ピングリー役のイケメン君がこっちをやるべきと思いました。

「カウボーイ&エイリアン」的にそぐわないミスマッチ感が売りだとはおもうけれど
それだけのために映画館に行くのはもったいないような・・・・

10年前の「プライドと偏見」は映画館で3回見て、DVDも買うほどの好きな作品でした。

雨にうたれての告白シーン。
高飛車だったダーシーがエリザベスへの愛と自分のプライドを懺悔するわけですが、
少々情けないことになってしまったマシュー・マクファイデン(ダーシー)の薄毛が
個人的に最大の胸キュンポイントだったんですが、
本作では原作と同じく室内になっていて、ときめき度は大幅ダウン。
10年経ってこちらの恋愛感度が劣化したからかもしれませんが、なんか学芸会モードなんですよね~

実は私はBBCのコリン・ファース版を観てなくて、ずっともやもやしています。
相変わらずレンタルもないですが、最近3000円台で買えるようになったから、ネットで探して見ようと思います。